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ワンマン経営に公私混同、税の負担増…同族経営の悪弊を乗り越えて 星野リゾートとアパホテルの事業承継

親から子に会社を引き継ぐ事業承継は、今も昔も多くの企業に見られます。しかし、同族経営にはワンマン経営や公私混同などの悪弊もつきまといます。こうした同族企業を引き継ぐとき、どんなポイントや課題があるのでしょうか。同族間の事業承継を「成功」させた、星野リゾートとアパホテルの事例から考えます。

「株主から追及されない」同族経営

同族経営は、特定の親族が株式の大半を所有する経営スタイルで、「同族会社」とも呼ばれます。会社の規模や上場の可能性に関わらず、幅広い企業にみられる一般的なスタイルです。

税法上は、「会社の株主の3人以下、およびこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」と定義されています。

メリットは、株主と経営者が同じ人物であることが多いため、株主に業績の説明をしたり、追及を受けたりすることがなく、株主に左右されず長期的な戦略を立てることができます。

経営陣に親族関係者が多ければ、意見の調整がしやすく、決定事項を速やかに実行できます。事業承継時も、後継者探しに時間を割く必要がありません。

ワンマン経営や会社の私物化の恐れも

一方、従業員や他の役員の意見が通りづらく、一族が支配するワンマン経営に陥る可能性もあります。親族間で方向性のズレが生じればトラブルに発展し、会社の分断に陥る恐れもあります。

また、ワンマン経営や同族経営は、会社の私物化が起こりやすい面があります。経費の不正使用や不当人事など、不祥事の事例も過去に見られました。第三者の目が行き届かないため、意見や苦言を言える社内の風通しが重要です。

事業承継時、後継者を外部で探そうとする傾向が低いことも問題点です。身内の後継者候補が、経営者の資質を備えているとは限りません。ふさわしい人物がいないときは、外部から探すことも必要です。

また、同族経営では、税務面の不正行為も起きやすいため、税法で厳しい特別規定が定められています。「行為又は計算の否認」「役員又は使用人兼務役員の範囲」「留保金課税」の3つがあり、同族経営に該当しない企業より税負担が増える可能性があるため、税務面で不利になりやすいです。

従業員の声をチャットで聞く、アパホテル

同族経営のデメリットを乗りこえ、事業承継を成功させた企業があります。ホテルチェーン「アパホテル」と、リゾート企業「星野リゾート」の事例をみてみます。

日本最大規模のホテルチェーン、アパグループは2022年に先代から息子の元谷一志氏へ事業を承継しました。

一志氏は、CEO就任後の改革として、従業員からのフィードバックを取り入れる「TCOG経営」に力を入れます。ビジネスチャットを導入し、自分の発信に対する従業員の反応をライブで共有できるようにしました。

同族経営では、従業員の声が経営陣に届きづらい面がありますが、アパグループはビジネスチャットなど社内の風通しを改革し、ワンマン経営を回避しています。

「公私混同」を徹底排除、星野リゾート

星野リゾートの現社長を務める星野佳路氏は、1991年に4代目として事業を承継しました。実はその2年前に一度社長職に就任しましたが、会社と個人の資産を混同する経営陣に「公私の区別」を呼びかけたところ、猛反発を受けて辞めさせられてしまいます。

しかし、1991年に再び社長に就任した際、同族の資産を企業のために使うことを明確にし、公私混同を防止する社内の体制改善に乗り出しました。それまで曖昧にされてきたルールを徹底的に改善し、新しい人材の獲得にもつながり、同族経営の悪弊から脱しました。

※こちらの記事は追記・修正をし、2024年3月21日に再度公開しました。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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