COLUMNコラム
事業承継にかかる税金とは? 税負担軽減のポイントは事業承継税制の活用
99%以上の日本の企業が「中小企業」といわれており、日本経済を支えている存在といえます。万が一、経営者の高齢化などにより事業存続が厳しくなっても、事業承継を行えば廃業せず維持・発展できます。しかし、事業承継による税負担が問題となり、円滑に承継できないケースもあるのが現状です。
この記事では、事業承継にかかる税金と、税金対策に有効な事業承継税制について解説します。
目次
事業承継で発生する税金
相続税
事業承継には以下の3種類があり、どの事業承継の方法でも税金が発生します。
・親族に承継する親族内承継
・従業員などへ承継する親族外承継
・創業を希望する人などへ承継する第三者承継
ここでは発生する税金について解説します。
相続税
相続税は、誰かが亡くなったときに、その方の資産に課される税金です。相続税には累進課税が適用されており、財産額が大きいほど相続税率が上がります。
<相続税の速算表>
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
贈与税
贈与税は、先代経営者が資産や株式を譲渡したとき、後継者に課せられる税金です。贈与税にも累進課税制度が適用され、贈与される額が高くなればなるほど税額が上がります。
また、特例贈与財産とは、直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の人(子や孫など)へ贈与された財産のことです。一方、特例贈与財産に該当しないものを一般贈与財産といいます。
<一般贈与財産の贈与税 速算表>
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
<特例贈与財産の贈与税 速算表>
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
法人税・消費税
事業承継の際、法人税・消費税は一般的に発生しません。例外として、事業譲渡の場合、譲渡価額と譲渡対象となる資産および負債との差額に対して、法人税が課せられます。消費税に関しても、事業譲渡においては、個々の資産に対して課されます。
登録免許税・不動産取得税
事業承継に際して不動産を承継する場合には、不動産の所有権移転登記が必要となり、登録免許税がかかります。
不動産取得税は、土地や建物を購入したり、建物を建築したりした際に発生する税金で、生前贈与を受けると課税されます。不動産取得税は、地方税のため納付期限や納税方法など自治体により異なるので確認すると良いでしょう。不動産取得税 = 建物・土地の固定資産税評価額 × 税率4%で計算されます。
<不動産の登録免許税>
内容 | 登録免許税の税率 |
土地の売買、贈与など | 不動産の評価額×2% |
土地の相続、法人の合併または共有物の分割 | 不動産の評価額×0.4% |
新築建物の所有権保存登記 | 不動産の評価額×0.4% |
中古建物の所有権移転登記 | 不動産の評価額×2% |
合併・買収に必要な費用
合併や買収には、贈与税や相続税など税金以外にも費用が発生することはご存じでしょうか。
ここでは、税金以外に発生する費用を紹介します。
アドバイザーへの報酬
アドバイザーへの報酬は、成功報酬や相談料、中間金、着手金などの手数料が設けられ、レーマン方式により成功報酬を算出するのが一般的です。この方式は、取引金額が大きくなればなるほど、成功報酬額も大きくなります。
事業承継の計画や資金対策などを支援するコンサルティングサービスは、相談は無料のところもあり、おおよそ月額数万円〜30万円が相場です。
弁護士への報酬
雇用契約を結んでいない弁護士に、事業承継の相談をする場合、着手金や手数料、報酬を支払います。相談だけであれば、時間制で算出する弁護士もいるため、1時間数千円~数万円で依頼が可能です。事業承継の顧問弁護士として契約する場合は、月額30万円ほど費用が発生します。
税理士・会計士への報酬
税理士や会計士など専門家への報酬は、依頼する内容によって異なります。事業承継のサポートは「税金のシミュレーション」「個別の対策案作成」「事業承継税制に関わる手続き」の3つに分かれているところが多く、相場は以下のとおりです。
内容 | 費用相場 |
相続税や贈与税の税金シミュレーション | 10〜60万円 |
対策案の作成 | 30万円〜 |
事業承継税制の手続き | 50~250万円 |
「事業承継税制」が活用できる
事業承継で発生する支出を少しでも減らし、円滑に承継するために「事業承継税制」の活用がおすすめです。ここからは事業承継税制の概要や要件、流れを紹介します。
事業承継税制とは
事業承継では、非上場株式などを先代経営者から後継者に引き継ぎます。しかし多額の贈与税や相続税が発生し、資金不足により承継が難しくなるケースがあります。
このような相続税・贈与税を免除・猶予するための「事業承継税制」が、2009年に新設されました。また、2018年の税制改正では、10年間の時限措置として要件が緩和され、優遇された特例制度が施行されています。
事業承継税制適用の流れ
事業承継制度を適用する流れは、以下のとおりです。
1.特例承継計画を作成する
2.特例承継計画を都道府県知事に提出する(特例制度は、2024年3月31日まで)
3.事業承継を行う(特例制度は、2027年まで)
4.5年間、税務署に届出書を、都道府県に報告書を提出する
5.6年目以降は、3年に1回税務署に届出書を提出する
特例制度の適用を受けるには、2024年3月末までに特例承継計画を策定し、都道府県知事の認定書を受領した上で、2027年までに事業承継を行う必要があります。期限を過ぎた場合は、一般措置の適用となるため注意が必要です。
事業承継税制を活用するための要件とは
事業承継税制を活用するには、以下4つの要件を満たす必要があります。
・会社の要件
・先代経営者の要件
・後継者の要件
・そのほかの要件
上記の詳細は、過去の記事で解説していますので、ぜひご参照ください。
「【知らないと損をする】事業承継税制をわかりやすく解説」はこちら
まとめ
この記事では、事業承継の際に発生する税金と税負担対策に有効な事業承継税制について解説しました。事業承継は税負担が多いイメージがありますが、事業承継税制を活用すると税負担が軽減できる場合があります。
事業承継を検討されている経営者は、まずは事業承継センターや税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。
なお過去の記事で事業承継の詳しい流れについて解説していますので、ぜひご参照ください。
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