COLUMNコラム

TOP 人事戦略 大企業の同族経営の成功事例を紹介! 同族経営における事業承継と後継者育成とは
H人事戦略

大企業の同族経営の成功事例を紹介! 同族経営における事業承継と後継者育成とは

日本全体の会社数に占める同族経営の割合は90%を超えており、これは諸外国と比べても極めて高い割合となっています。そこで本記事では、同族経営における事業承継と後継者育成とは何かから、同族経営が⾒直されている理由と今後のあり⽅、同族経営をしている⼤企業の成功事例について解説します。

同族経営とは特定の親族が中心となり会社を経営すること

同族経営とは、創業者の家族や家系が中心となって会社を経営することを指し、「ファミリービジネス」「ファミリー企業」「オーナー系企業」「家族経営」「同族企業」などとも呼ばれます。

つまり、経営者=株主という所有と経営を行う人が一致していることが特徴です。日本では、創業から100年を超える長寿企業のうち90%以上が同族経営となっており、国外と比べて極めて高い割合です。

同族経営は親族の中から後継者を選ぶため、事業承継が円滑に進む一方で、後継者問題が発生しやすいというデメリットもあります。

同族経営における事業承継と後継者育成

同族経営は短期的な利益を追求するのではなく、ビジネスの継続に焦点を当てる経営です。このように長期的な視点を持つことで、後継者を育成しスムーズに事業承継をすることができます。同族経営における後継者に求める資質として、自社の事業に関する専門知識が豊富で、実務経験を積んでいることが挙げられます。

また、知識や経験以外にも、経営に対する意欲や覚悟などの経営者としてのマインドが備わっていることが重要です。ファミリーの中で育ち自社で経験を積んだ後継者は、自身の価値観と経営の価値観を一致させやすいことが、同族経営における事業承継および後継者育成のメリットと言えます。

同族経営が見直されている理由と今後のあり方

同族経営が見直されている理由は、強靭な企業経営を行うためのヒントが同族経営のなかに隠されているからです。それは、日本における事業の社会的意義である、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」です。

つまり、自社が提供する事業の価値に釣り合う利益を上げ、顧客の満足度を高めるとともに、自社や顧客以外の他社や社会に貢献することです。これらは企業を永続させる経営において欠かせない要素であり、経営者は時代の変化に合わせて変えるべきものと守るべきものを見極める力を持つことが必要です。

同族経営をしている大企業の成功事例

ここからは同族経営を行っている大企業の成功事例を2つご紹介します。

アパホテル~前例踏襲ではない「TCOG」経営

日本最大規模のホテルチェーンであるアパグループは、石川県小松市のたった2棟のアパート経営から始まり、今や日本にとどまらず世界にまで数多くのホテルを展開しています。

2022年4月、創業から50年もの間、アパグループの成長を牽引してきた元谷外志雄氏は、社長兼CEOの座を息子の元谷一志氏へと託しました。前CEOである元谷外志雄会長は、1971年の創業から51年間連続黒字を達成した、いわゆる「カリスマ創業者」でした。

一志氏は元谷家の承継者としてアパグループのルーツである祖父の志を継ぐべく、幼少期から経営哲学を体得するように、父の外志雄氏から教育を受けました。そして、見事新CEOに就任した一志氏は、就任までにあたためていた独自の社内改革である「TCOG」経営を実施します。

「TCOG」(Triangle Center of Gravity)経営とは、その名の通り、三角形の重心に自分が位置して旋回し、最速最短で従業員に熱を伝えて感化させるというものです。こちらからの一方的な発信ではなく、インタラクティブなコミュニケーションを重視することで、さらなるイノベーションにつなげられると一志氏は考えます。同族経営の後継者に必要なのは、親方の味を盗み、自分のオリジナリティを加味すること。先代の前例踏襲ではなく、常に試行錯誤をして経営することが同族経営の成功のカギだと言えます。

星野リゾート~一度退任して行った企業改革

スキーリゾートや高級旅館、カジュアルなホテルなど、星野リゾートは今や海外を含む60以上の施設を運営しています。

物心がついたときから事業承継を意識していたという4代目の星野佳路氏ですが、1991年に承継をした当時は、今ほどファミリービジネスがアカデミックなプロセスとして研究されていなかったため苦労したと言います。

特に一番大きな問題として、会社と個人の資産が混同しているという同族経営の現実に直面しました。その公私混同について解決するべく企業改革を打ち出したところ、一族の既得権に踏み込んでしまい、半年で会社から排除され、経営の座から退きます。

しかし、むしろ社内の問題が明るみに出たことで佳路氏の存在意義が高まり、退任から2年後、社外で株を持つ同族の支持により復帰します。佳路氏は所有と運営を分離する「運営特化戦略」を掲げ、次々とリゾート施設を再生し、独自の運営力で星野リゾートのさらなる成長に貢献しています。

日本のファミリービジネスの事業承継をもっと成功させるためには、親子で合意をすることが必要であると述べる佳路氏。同族経営だからこそ、早くから事業承継に関わる親族間の認識のすり合わせが必要になると言えます。

まとめ

同族経営企業において、後継者への事業承継は避けては通れない問題です。事業承継をスムーズに行うためには、早い段階から経営者としての教育を行い、税制面について事前に計画しておくことが必要です。過去記事では、事業承継においてまず取り組むべきことや親族内承継の注意点を解説しているので参考にしてみてください。

「事業承継をしたい人が、まず取り組むべきこととは?事業承継において引き継がれるものや親族内承継の注意点まで解説」はこちら

FacebookTwitterLine

賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

記事一覧ページへ戻る