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歌と仕事の二刀流 ロック好きの女性社長、ゴルフ練習場の可能性を広げる! 努力の営業でつちかった「ノウハウ」とは

埼玉県所沢市のゴルフ練習場「新富ゴルフプラザ」は、今では珍しいコースボールが利用できる練習場として、幅広い層から人気を集めている。率いるのは、かつてママゴルフコミュニティなども運営し、ゴルフ業界の新しい風として、女性目線の新しいゴルフの楽しみ方を提案してきた坂東枝美子専務取締役(48)だ。ゴルフには全く興味がなく、住宅業界の営業としてキャリアを積んでいたが、父から家業を継いでゴルフ練習場を経営するようになった。なぜ、ゴルフに携わっていくようになったのか、坂東氏に聞いた。

元バリバリ営業ウーマンから家業を継ぐまで

坂東氏が運営する「ママゴルフコミュニティ」(写真提供:有限会社新富ゴルフプラザ)

――新富ゴルフプラザの歴史を教えてください。

1989年、私が中学2年生の時に父が作りました。

もともと埼玉県入間市で不動産業を営んでいた父が、埼玉県所沢市に土地を購入し、数年かけて練習場を建てました。

それに伴い、入間から所沢に家族で引っ越しました。

私は、幼い頃から育った場所を離れて転校したので、新しい土地に慣れることでいっぱいいっぱいでした。

――幼い頃からゴルフに親しまれたのでしょうか。

ゴルフ場に行って、受付の女性と話をすることはありましたが、私自身はゴルフに全く興味はありませんでした。

どちらかと言うと、スポーツより音楽などに興味がありましたし、当時は女性ゴルファーもほとんどいなかったので、当時はゴルフに興味は持てませんでした。

家を継ぐことは考えていませんでしたね。

ビルの全フロアに飛び込み営業

新富ゴルフプラザの練習場(写真提供:有限会社新富ゴルフプラザ)

――社会人になってからのキャリアを教えてください。

大学を卒業後、住宅業界の営業職に就職しました。

面接時、家業について聞かれ、「ゴルフの練習場を営んでいます」と答えたら、面接官の印象に残ったようで、ゴルフ場の会員権を販売する部署に配属になったんです。

でも、入社した当時の営業成績は非常に厳しかったのです。

何としても結果を残したい。

そう思い、新人賞の獲得を目指しました。

新人賞の対象は、社内全部署に所属する新卒入社3年目までの社員です。

ハードルは高かったですが、絶対に目標を達成しようと意気込みました。

――どのように営業成績をあげていったのですか?

やみくもに飛び込みをしても成績には繋がりにくい。

そこで作戦を立てました。

受注に近づくためには、興味を持った人にアプローチするのが近道ですよね。

働いていた会社では、週に1回、新規顧客の問い合わせの電話を取ったら担当できるという仕組みがありました。

無条件で電話を取れるわけではありません。

テレアポの件数やDMの送付件数など、取ったアクションの数を元に担当者が決まりました。

とにかく数をこなさなければいけないので、ビルの1階から最上階まで飛び込み営業をしたり、終業時間までテレアポに励んだりしました。

――精神的な負荷はかかりませんでしたか?

実は、まったくキツくなかったんです(笑)。

しかも、不思議なことに一つ受注が決まると次々と決まるんですよね。

段々と先輩たちが手をつけていない業界も分かり、重点的に開拓していくとどんどん受注を獲得できるようになりました。

2年目には目標としていた新人賞を獲得できたんです。

その後、1年ほど働いて、広告代理店のメディア関連の部署に転職、配属されます。

住宅や不動産の世界から一気にクリエイティブ系の世界に移ったので、刺激が多かったですね。

「ママのゴルフ」で注目集める

――広告系の会社はどれくらい働かれたのでしょうか。

29歳で結婚して退職し、一旦子育てに集中する生活を送りました。

子どもがいると実家へ帰る機会も増えて、両親との距離が近づきました。

当時は東京で暮らしていましたが、週に1回子どもの顔見せのために所沢の実家へ戻るようになり、アルバイトでゴルフ練習場のフロント業務を始めました。

――子育てがきっかけでゴルフ場の仕事に携わり始めたのですね。

週に1回の出勤にしたのには理由はあったのでしょうか。

父の性格はかなり強いんですよ(笑)。

昔はぶつかったこともあったので、距離が近づきすぎないように気をつけていました。

ただ、ゴルフ場で働き始めたおかげで、ゴルフの魅力に気づいたんです。

ゴルフって60代や70代でも楽しんでいる人が多くて、シニアが20代に勝つこともあります。

体力勝負なだけではなく何歳でも真剣に楽しめるスポーツって素敵だなと感じました。

私自身、出産と子育てを経験し、年齢とともに楽しめなくなる趣味がたくさんありました。

でも、ゴルフは違う。

今から始めれば、体力がなくなった20年後も30年後も楽しめるはず。

そう思って、本格的にゴルフを始め、ママを対象としたコミュニティを作りました。

ママを対象にした理由は、ママになるとゴルフをやめてしまう女性がたくさんいることに気づき、ママになってもゴルフを楽しめるライフスタイルを提案するコミュニティを作りました。

――どんな団体ですか?

個人の趣味で運営していた団体です。

都内で活動していて、子どもと一緒にラウンドを楽しめるイベント、託児ゴルフも開催しました。

託児ゴルフでは、英語が話せる海外籍の方に子どもを預けて、子どもは英語と一緒にゴルフを習います。

その間、両親はラウンドをするというプログラムでした。

当時、託児ゴルフは珍しかったので評判がよかったです。

ママのゴルフコミュニティは少なかったので、業界では目立ったようです。

取材を受けることもあれば、ゴルフ業界の方に声をかけていただいて勉強会に参加させていただくこともありました。

団体を大きくしようとは思っていませんでしたが、口コミで評判が広がって、最終的なメンバーは120人くらいになりました。

2014年頃まで活動していましたね。

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坂東枝美子氏プロフィール

有限会社新富ゴルフプラザ 専務取締役 坂東 枝美子 氏

1976年埼玉県生まれ。大学卒業後、住宅メーカーのゴルフ・リゾート関連の営業部に配属され、新人賞を受賞。その後、広告代理店を経て、「新富ゴルフプラザ」のスタッフとして働く。2018年の父の急逝を受けて専務取締役に就任。ゴルフ練習場運営の責任者として、スタッフの接客技術の向上、デジタル化、快適な空間づくりに取り組む。

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