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「人手不足解消」に賃上げの他に効果的なことは 国の中小企業白書が指摘、「事業承継」も重要課題

中小企業庁は5月10日、「中小企業白書」と「小企業白書」を公表した。両白書ともさまざまな提言を行っているが、中小企業を取り巻く最大の課題に「人手不足」を挙げ、人や研究、設備への投資を促したほか、経営者の高齢化が進む中「事業承継」を巡る課題も指摘している。

人手不足解消に最も有効なのは

新型コロナウイルスによる落ち込みから売り上げは回復したものの、事業者が直面している最大の課題は、企業の人手不足の深刻化だと白書は指摘する。

白書では、帝国データバンクが2023年5月に行った「人手が不足していない企業の要因」(中小企業319社の複数回答を集計)というランキングが引用されている。

1位 賃金・賞与の引き上げ(52.0%)

2位 働きやすい職場環境づくり(35.1%)

3位 定年延長やシニアの再雇用(31.7%)

4位 福利厚生の充実(25.7%)

5位 公平で公正な人事評価(23.2%)

6位 働き方の多様化やワークライフバランスの推進(19.1%)

6位 仕事内容の魅力度の向上(19.1%)

6位 業務プロセスの見直しなどによる効率化(19.1%)

9位 多様な人材の積極的な採用・登用(16.3%)

10位 機械化や自動化の実施(14.4%)

ランキングからは、人手不足解消に賃上げが最も効果的だと分かる。2024年春闘の賃上げ率・最低賃金の改定率は過去最高水準だった。しかし白書は、賃上げの原資となる業績の改善が見られない中で、賃上げを行う中小企業が増加していると分析する。

白書は、「人手不足」問題解決の方法のひとつとして投資行動を薦め、投資行動に意欲的な中小企業は、経常利益、労働生産性ともに高めている傾向を指摘している。

積極的な投資行動によって、賃上げの原資を確保するのはもちろん、労働環境の整備を可能にし、「人手不足」を解決しているということだ。積極的な投資とは、人への投資(人材育成)、設備投資、M&A、研究開発投資、デジタル化投資などだ。投資を可能にするには、資金を提供する金融機関を始めとした関係機関の協力が必要だとも述べている。

事業承継も課題山積み

「人手不足」と並んで、両白書がその重要性を指摘しているのが、「事業承継」だ。中小企業白書は、「半数近くの中小企業で後継者が不在。後継者が決まっている企業でも、後継者の経営能力や相続税・贈与税、後継者による株式・事業用資産の買い取りなどの課題が山積している」と分析している。

中小企業白書は、事業承継についても人手不足解消と同じく、自助努力だけでなく、金融機関を始めとした関係機関の協力を進めることで、経営改善が進行し、円滑な承継が可能になるとしている。

取材・文/ジャーナリスト 三浦 彰

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賢者の選択サクセッション編集部

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