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オープンイノベーションの定義や目的、メリット・デメリットを解説

企業が商品開発をするときの新たな手法として「オープンイノベーション」が注目されています。これは自社以外の外部から技術や知識を取り込み、革新的な製品・サービスを生み出す方法です。この記事では、オープンイノベーションの概要や注目されている背景、実施するときのポイントをまとめて解説します。

オープンイノベーションとは

前提としてある、イノベーションとは「技術革新」を指す言葉です。新しい技術や考え方を取り入れ、新しいものを生み出したり既存のものを一新させたりすることです。イノベーションは経済発展に与える影響力が強く、社会に変革をもたらすことができると考えられています。

今回は、イノベーションを実現する手法の一つとして理論づけられている「オープンイノベーション」の意味やメリット、デメリットを紹介します。

オープンイノベーションの定義と目的

オープンイノベーションとは「自社以外の技術を活用する手法」です。自社のみでは解決できない研究開発上の課題が発生したとき、外部ネットワークを通じて最適な解決策を探し出します。

オープンイノベーションが目指すのは「技術を求める側と活用したい側の課題解決」です。外部のアイデアを取り入れたい企業と、自社で活用しきれていないアイデアを外部に提供したい企業が存在します。オープンイノベーションでは、そのどちらかが利益を得るのではなく、両者がタッグを組んでお互いの欠点を補いあえる関係性を築きます。

オープンイノベーションは以下3つの型に分けられます。

・インバウンド型
外部の知識・技術・ノウハウといったリソースを取り入れ、自社に足りない部分を補完する方法です。例えば、他社の技術や特許を使えるよう契約する「ライセンスイン」をおこない、効率的に技術要素を獲得します。また企業と大学が連携して、研究成果を自社で活用する「産学連携」もあります。

・アウトバウンド型
自社のもつ知識・技術・ノウハウといったリソースを、外部に提供する方法です。外部から新たなアイデアを募集・採用し、イノベーションの実現につなげます。具体例としては、自社のライセンスを外部に売却する「ライセンスアウト」が挙げられます。また自社のプラットフォームを提供しておこなう「共同開発」もあります。

・連携型
インバウンド型とアウトバウンド型を組み合わせる方法です。一対一でリソースを提供する・受け取るのではなく、複数の団体で連携するのが特徴です。具体的には、専門技術者が集まって集中的に開発する「ハッカソン」や、いくつかの企業が資源を出し合って事業成長を図る「業務提携」などが挙げられます。

オープンイノベーションのメリット・デメリット

オープンイノベーションのメリットは以下の3つです。

(1)事業推進スピードが向上する
(2)開発コストを削減できる
(3)自社にない技術や知見が得られる

一から製品開発をおこなう場合、膨大な時間や労力がかかります。その点オープンイノベーションであれば、外部のリソースを活用しながら進められるので、時間・費用・人材雇用といったコストを総じて削減できるのがメリットです。

また互いの知見やアイデアを交換できるので、自社の強み・課題を客観視できるうえ、今後の成長を支える基盤も得られます。

反対に、オープンイノベーションで生じるデメリットは以下の3つです。

(1)技術やアイデアの流出リスクがある
(2)利益率低下につながる
(3)自社開発力が低下する


機密性の高いリソースを提供すると、同じ市場を狙う企業へと流失するリスクがあります。また、オープンイノベーションで得られた利益は分配する必要があるため、自社開発よりも利益率が低くなります。実施時は、リソースの取り扱いや利益配分についてルールを設けましょう。

さらに外部の技術・ノウハウに頼りすぎると、自社における研究開発のモチベーションが低下してしまいます。提供を受けるリソースとのバランスを気にしながら開発を進めましょう。

クローズドイノベーションとの違い

アメリカの研究者であるヘンリー・チェスブロウは、オープンイノベーションの対義語として「クローズドイノベーション」を提唱しています。日本語に訳すと「自前主義」で、自社がもつ技術のみで事業に取り組むことを指します。

メーカーが自社独自の技術で開発・製造するクローズドイノベーションは、これまでの経営戦略のスタンダードでした。自社の技術を外部に提供せず、社内の仕組みを内製化することで、市場でのポジション確保を実現できました。

しかし1990年代以降は、市場のグローバル化や産業構造の変化などの理由から、オープンイノベーションへと移行していきました。

オープンイノベーションの現状

オープンイノベーションが注目されているのは、さまざまな背景が関係しています。またオープンイノベーションのデメリット防止に向けて、注意すべき点もいくつかあります。詳しく見てみましょう。

オープンイノベーションが注目される背景

オープンイノベーションに注目が集まったのは、主に以下3つの理由が考えられます。

(1)顧客ニーズの多様化
(2)製品ライフサイクルの短期化
(3)グローバル化による市場競争の激化


SNSが普及し、顧客の価値観が目まぐるしく変化する時代となっています。また多様化する顧客ニーズに応えるため、各業界はIT技術を活用して、商品やサービスをスピーディに開発・改善する動きにシフトしました。さらに、グローバル化によって優秀な人材やノウハウが国を超えて行き来するようになりました。

以上3点の理由から、クローズドイノベーションで自社独自のシステムを確保しつづけることが難しくなりました。それと同時に、オープンイノベーションによる社外との連携が重要視されたのです。

オープンイノベーションを実施する際の注意点

オープンイノベーションを成功させるには、以下2つのポイントをおさえましょう。

(1)ゴールを明確にする
オープンイノベーションの目的を見失わないよう、達成すべきゴールを明確にしましょう。なぜ外部連携が必要なのか・どんな技術を取り入れたいのかをはっきりさせます。そして、いつまでに何をするのか具体的なスケジュールを組みましょう。ビジョンがはっきりすれば、社内メンバー全体の方向性を統一できます。

(2)社内体制を整える
これまでクローズドイノベーションが主流だった企業では、オープンイノベーションへの理解を得るのが難しい場合もあります。プロジェクトの目的と重要性を現場だけでなく経営層にも説明し、理解を得ることが大切です。

また社内外問わず円滑なコミュニケーションがとれるよう、オープンイノベーションを主体的に進める部署・メンバー確保もおこないましょう。経過や課題をこまめに分析できるので、効率的なプロジェクト推進が可能です。

まとめ

近年注目されている「オープンイノベーション」の概要やメリット、デメリットや活用時の注意点をまとめて解説しました。

オープンイノベーションは、自社に足りない技術を補いたい企業と、自社の技術をもっと広く活用していきたい企業をつなぎ、今までになかった製品・サービスを生み出す方法です。これからの時代に合った仕組みとして、企業や団体が連携しあうオープンイノベーションに注目が集まっています。

なおオープンイノベーションの一環として、事業承継(M&A)で組織形態そのものを変えていくのも有効です。事業承継に関しては、過去記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
「事業承継の流れを7つのステップで解説!」

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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