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代表者以外も対象に! 事業承継税制の贈与者の範囲をチェック

2018年に改正が行われた事業承継税制。事業承継を検討している中小企業にとっては必見の制度です。本記事ではその中から、代表者以外からの贈与について解説します。

事業承継税制とは

「事業承継税制」とは、先代から自社株式や事業用資産を後継者が引き継ぐときに発生する相続税や贈与税の負担が猶予、あるいは免除される制度のこと。事業承継税制の適用を受けるには、2024年(令和6年)3月31日までに書類(特例承継計画)を準備し、都道府県知事に提出して認定書を受領する必要があります。さらには、認定を受けた後、2027年までに承継を行わなければなりません。

事業承継税制については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」

特例事業承継税制における「贈与者の範囲の拡大」

次に、事業承継税制の特例措置における贈与者と受贈者の範囲について解説します。事業承継税制の特例措置では、贈与者と受贈者の範囲が広がりました。具体的には、「先代経営者以外の、複数の贈与者から」「最大3人の受贈者に対して」の贈与が、事業承継税制の適用対象として認められるようになっています。

先代経営者以外からの承継が対象に

最大のポイントは、代表者(先代経営者)以外からの承継も対象となっていること。先代経営者から一括で贈与されていれば、先代経営者以外からの株主からの贈与や相続、遺贈も納税猶予の対象となります。贈与者の対象としては、先代経営者の配偶者や兄弟、甥、姪、先代経営者とともに創業した役員や元・役員などが挙げられます。

複数の後継者への承継も対象に

複数の後継者への承継も対象となっていることも見逃せません。改正前は、1人の贈与者(先代経営者)から1人の受贈者(後継者)への贈与・相続のみが適用対象でした。一方、改正後は、最大3人までの後継者への承継が対象となります。

代表者以外からの贈与をする際の注意ポイント

代表者以外から株式を贈与する際には、「第二種特例経営承継贈与」を活用します。この制度は、先代経営者の配偶者や兄弟など、複数の贈与者から株式を引き継ぐときに利用できる制度。ただしこの制度には、適用条件があります。

会社の要件

・(経営承継円滑化法の基準において)中小企業である
・上場企業や風俗営業会社ではない
・資産保有型会社や資産運用型会社ではない
・総収入金額が0円を超えている
・常時使用従業員数1人以上
・特定特別子会社が大企業・上場企業・風俗営業会社ではない
・後継者以外が拒否権付株式を持っていない

後継者の要件

・特例承継計画に記載された後継者である
・贈与時に18歳以上であり贈与の直前で3年以上役員である
・対象会社の株式について事業承継税制の一般措置の適用を受けていない
・2018年以前の事業承継税制を適用されていない
・贈与時に親族内で総議決権の過半数を保有している
・後継者1人なら筆頭株主、複数人なら全員が議決権10%以上を保有している
・贈与で得た株式を継続して保有する

その他の要件

・代表者の贈与や相続の後に行われる贈与である
・代表者の贈与から5年後の年末までに行われる贈与である

事業承継税制の適用を受けるためのポイント

事業承継税制の適用を受けるためには、いくつか知っておきたいポイントがあります。

書類の提出期限がある

事業承継税制の適用を受けるには、「特例承継計画」という書類を都道府県庁に提出しなければなりません。提出期限は2024年3月31日です。適用を検討している方は、すぐにでも動き出しましょう。

承継の期限がある

書類の提出期限だけでなく、承継にも期限があります。承継は2027年12月31日までに完了しなければなりません。

株式移転の順番を押さえる

制度の適用を受けるには、以下の順番で手続きを進める必要があります。①後継者が代表者に就任する②先代からの贈与・相続を行う③先代経営者以外からの贈与を行う注意点としては、先代経営者以外からの贈与を、先代からの贈与と同じ年に行うこと。そうすると、贈与を受けた年の1月15日までに認定を受け、3月15日までに贈与税の申告を一度するだけでOKです。一方、先代からの贈与の翌年以降に贈与を受けると、別途手続きが必要となります。手間を軽減したいなら、先代からの贈与と同じ年に完了させることをおすすめします。

継続届出書を提出する

贈与税の納税猶予を受け続けるには、継続届書を提出しなければなりません。提出しないと、贈与税だけでなく、利子税も支払うこととなります。最初の贈与の申告期限から5年間、「特例経営贈与承継期間」は、毎年1回、継続届出書を作成しましょう。届出先は税務署です。なお、特例経営贈与承継期間は、贈与を受けた年の翌年3月16日から5年後の3月15日まで。ただし5年後の3月15日に申告期限がくる贈与は、その前年の12月31日までの贈与となります。

まとめ

事業承継税制では、代表者以外からの贈与も納税猶予の対象となります。ただし適用を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。適用を検討する場合は、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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