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会社分割の際に発生する登録免許税とは? 吸収分割、新設分割それぞれの登記方法を解説

会社分割において欠かせない手続きが、法務局で行う登記申請です。会社分割の登記では登録免許税をはじめとした3つの費用が発生します。本記事では、登録免許税とは何かから、会社分割の登記⽅法、会社分割の登記までの主な流れ、費⽤について解説します。

登録免許税とは登記申請の際に支払う税金

登録免許税とは、会社分割の登記申請の際に必要な費用の一つです。
登記とは、法律上の権利や義務を保護もしくは対抗するために登録することを指します。登記のなかで最も知られているのが不動産登記であり、不動産を購入した際は所有権、それを担保にお金を借りた場合は抵当権が与えられます。不動産は所有者とともに移動できないため、個人で所有権や抵当権を対抗(主張)することができませんが、登記制度によりそれが可能になります。

会社分割にも同じような登記制度が設けられており、会社設立や会社分割の登記は別称として商業登記とも呼ばれます。また、会社分割には吸収分割、新設分割の2つの方法がありますが、資本金額に増加変動がなければ、どちらの場合でも登録免許税は一律3万円の金額となっています。資本金額が増加した場合は、「資本金の増加額×0.7%」が登録免許税となり、この計算結果が3万円未満であれば登録免許税は3万円になります。

会社分割の登記においてかかる費用

会社分割の登記においてかかる費用は、登録免許税のほかに2つあります。

官報公告費

官報とは政府が発行している新聞で、決算や合併といった会社にとって重要なことは必ず官報に掲載しなければいけません。
官報公告費とは、その官報掲載に支払う費用であり、金額は掲載する文字数や行数によって変わりますが、会社分割に関する官報公告の大まかな費用は約15~17万円程度です。

相談先に対する報酬や費用

社内だけで会社分割の登記手続きを行うことは可能ですが、難易度が高いため司法書士などの専門家に依頼するほうが安心です。事務所によっても異なりますが、基本的な会社分割の場合の司法書士に対する報酬は20~30万円が相場となっています。

吸収分割の登記方法

吸収分割とは、分割会社の一部または全部の事業の権利義務を包括的に承継会社に引き継ぐことです。
吸収分割の登記方法について見ていきます。

●吸収分割の登記までの流れ

①分割契約の締結
分割契約書を作成し、取締役または取締役会で承認を受けたあと、分割会社、承継会社それぞれの捺印を押します。分割契約書は、少なくとも株主総会開催2週間前から会社分割後6カ月が経過するまで、本店に据え置く必要があります。

②株主総会で承認決議
分割予定日の20日前に株主へ通知・公告を行い、承継される従業員には個別で通知します。その2週間後にある株主総会で、分割会社・承継会社ともに特別決議を得なければいけません。

③債権者保護手続き
債権者保護手続きが必要な場合は、債権者に対して、官報で会社を分割する旨と異議のある者は1カ月以内に申し出る旨を掲載します。

●必要書類

吸収分割の登記において必要な書類は以下の通りです。

・会社分割契約書
・承継会社の株主総会議事録
・分割会社の株主総会議事録
・官報公告のコピー
・株主リスト
・会社分割に異議を述べた債権者がいない旨の上申書


ケースによって必要になる可能性がある書類は以下になっています。

・承継会社の資本金が会社法の規定に従って計上されていることを証する書類
(分割の対価として、承継会社株式を新規発行して分割会社に交付する場合)
・分割会社の登記事項証明書
・分割会社の印鑑証明書
(分割会社と承継会社の管轄法務局が異なる場合)

●登記期限

吸収分割の登記期限は2週間と定められており、この期限を過ぎてしまうと100万円以下の範囲で過料、つまり罰金を支払わなければいけません。この過料は必ずしも請求されるわけではありませんが、登記期限から過ぎれば過ぎるほど支払う金額も多くなっていく仕組みになっているので、できるだけ早く支払うことをおすすめします。

●登記申請者

吸収分割の登記申請者になれる者は、以下のいずれかに該当する者のみです。
・分割会社の会社代表者
・承継会社の会社代表者
・分割会社の会社代表者または承継会社の会社代表者から依頼を受けた司法書士

●登記所

吸収分割の登記申請は、承継する会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。また、分割会社の分割申請も同じ法務局で行う必要があります。

新設分割の登記方法

新設分割とは、分割会社の一部または全部の事業を新しく設立した会社に引き継ぐことです。
新設分割の登記方法について見ていきます。

●新設分割の登記までの流れ

吸収分割とは異なり、まず分割契約を行うのではなく、分割計画書を作成します。分割計画書には会社法で定められた事項を記載しなければいけません。その後の流れは吸収分割の場合とほとんど変わりません。

●必要書類

新設分割の登記において必要な書類は以下の通りです。

・設立する会社の定款
・設立する会社役員の就任承諾書
・設立する会社役員の印鑑証明書
・設立する会社の資本金が会社法の規定に従って計上されていることを証する書類
・会社分割計画書
・分割会社の株主総会議事録
・官報公告のコピー
・会社分割に異議を述べた債権者がいない旨の上申書


ケースによって必要になる可能性がある書類は以下になっています。

・分割会社の登記事項証明書
・分割会社の印鑑証明書
(分割会社と新設会社の管轄法務局が異なる場合)

●登記期限

新設分割の登記期限は分割会社と同じく2週間と定められています。
分割会社とは異なり登記期限を過ぎて申請しても過料は請求されませんが、申請しなければ分割の効力は発生しないため、新設会社の取引において不利益が生じる可能性があります。

●登記申請者

新設分割の登記申請者になれる者は、以下のいずれかに該当する者のみです。
・分割会社の会社代表者
・新設会社の会社代表者
・分割会社の会社代表者または新設会社の会社代表者から依頼を受けた司法書士

●登記所

新設分割の登記申請は、新たに設立する会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。吸収分割と同様に、分割会社の分割申請も同じ法務局で行わなければいけません。

まとめ

本記事では、事業承継のうちの一つである会社分割の登記方法について解説しました。会社分割の登記は会社設立に伴う登記よりも専門的な知識が必要で、難易度が高いと言われています。したがって、事前に吸収分割、新設分割それぞれの登記方法を把握しておき、困った場合は司法書士などに依頼することをおすすめします。
過去記事では、会社分割の仕組みや実際の事例について解説しているので、併せてご活用ください。
「会社分割の仕組みや事業譲渡との違い、会社分割事例を解説!」はこちら

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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