COLUMNコラム
事業承継で「株価引き下げ」を実現するおすすめ手法5選
事業承継では、自社株の評価額が高いと、自社株の贈与・相続する際、多額の税金が課されます。何の対策もしなければ、後継者にとって相続税・贈与税が大きな負担となり、承継後の経営に支障をきたす可能性もあります。本記事では、事業承継における株価引き下げのメリットとその具体的手法を紹介します。
目次
自社株の評価方法は?
非上場企業の株式は、4つのステップで評価方法が決まります。
・ステップ①「株主の判定」……「同族株主等」なのか、「同族株主等以外」なのかを判定します。
・ステップ②「会社規模の判定」……会社規模に応じた判定を行います。
・ステップ③「特定会社等の判定」……特定会社等に該当する場合は、原則として純資産価額方式で評価することになります。
・ステップ④評価方法の決定……いよいよ評価方法の決定です。
ステップ③で特例会社に該当しなかった場合は「併用方式」または「純資産価額方式」のうち、低いほうを選びます。特例会社に該当した場合は、「純資産価額方式」になります。
詳しい解説は、こちらの記事をご一読ください。
(「事業承継のカギ! 「株価評価」の方法をわかりやすく解説」)
事業承継で「株価引き下げ」を行うメリット
株価引き下げによる自社株対策のメリットは大きく2つあります。
①「相続税・贈与税を節税できる」
事業承継で自社株を後継者に集中して相続・贈与する際、それぞれ多額の税金が課される可能性があります。中小企業でも数千万円、億単位になるケースも少なくありません。そこで後述するような方法で自社株の評価額を下げることによって、相続税・贈与税を引き下げることができます。
②「株式の買取費用を抑えられる」
自社株を相続することになった場合、相続人が複数いる場合は自社株が分散してしまう恐れがあります。その場合、経営に支障をきたさないよう自社株を買い取って後継者に集約させる必要があります。分散している自社株の買取費用を抑えるためには、株価の引き下げが有効です。
自社株の評価を引き下げるおすすめ手法5選
続いて、自社株の評価を引き下げる方法を見ていきましょう。なお、株価算定方法には「類似業種比準価額」と「純資産価額」の2つが基本的に用いられます。詳しい解説は専門的になるので割愛しますが、ここでは「類似業種比準価額」と「純資産価額」を合わせた対策を紹介します。
①先代経営者に対して役員退職金を支払う
役員退職金が大きくすることは「会社の支出が大きくなり、会社の純資産が減少すること」を意味するため、自社株の評価を引き下げます。それだけでなく、役員退職金は「通常の給与所得よりも税負担が軽い」「当期の利益を圧縮して、法人税の負担額を減らせる」などのメリットがあるのが特徴です。
ただし、役員退職金の活用は以下のような注意点もあります。
1.退職金に充てる資金を準備しなければならない
2.現経営者は経営から完全に手を引かなければならない
3.役員退職金の金額は無制限に設定できない
役員退職金の詳しい活用法はこちらの記事で解説しています。
(「事業承継税制で「退職金」を活用する場合のメリット&注意点」)
②株式配当金を低くする
未公開株の場合、自社株の配当率が高くなる傾向があるため、配当金を下げることで自社株の評価額を下げることができます。オーナーが全株を保有しているなら株主総会で配当率を引き下げることも容易でしょう。ただ、最初から自社株の配当金が低い場合はメリットがあまり見込めません。
③生命保険を活用する
生命保険は会社の損金として計上できるため、結果として利益が減らし株式評価を下げることができます。また、先代経営者が生命保険に加入して受取人を後継者にしておけば、その保険金を納税資金や事業資金(従業員の給与や取引先への債務など)に充てられるというメリットがあります。
ただし、「保険料でキャッシュフローが圧迫される」「解約タイミングによっては損失が出る」といったリスクもあるので注意しましょう。加えて、事業承継に活用できる生命保険の種類には「生命保険」「終身保険」「長期平準定期保険」「逓増定期保険」があるなど、押さえておくべき知識はさまざまあります。
事業承継における生命保険の活用術については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(「事業承継で「生命保険」を活用するメリット・注意点を解説!」)
④不動産を購入する
土地の評価額は時価の70%程度、建物の評価額は60%程度と、現金よりも低く評価されるケースが多いため、会社の純資産価額を引き下げる効果があります。現金を多く保有している会社の場合、不動産にすることで節税効果が期待できます。
⑤発行株式数を増やす
純資産価額方式で算出される自社株の評価額は、「株式の発行数」で決定されます。そのため、発行株式数を増やすことで、自社株の株式評価を下げられます。 なお、発行株式数を増やすだけでなく、「種類株式」を新たに発行するという方法もあります。種類株式とは、簡単にいうと、通常の権利を有する「普通株式」とは権利や内容が異なる株式のこと。
種類株式を発行することで、以下のようなメリットがあります。
1.資金調達しやすくなる
2.自社株式の分散を回避できる
3.重要事項の決定権限を後継者に集中できる
4.経営権移転のタイミングを計れる
種類株式の基礎知識についてはこちらの記事で解説しているので、ぜひご一読ください。
(「スムーズな事業承継を実現する「種類株式」の基礎知識」)
まとめ
事業承継の際には、相続税や贈与税の負担を減らすために自社株の評価額引き下げを事前に行うのが重要です。自社株の評価額を引き下げる方法は、本記事で紹介した以外にもさまざまな方法があります。どの方法を選ぶべきなのかは会社の状況によって異なるため、専門家のサポートを受けながら決めるのがよいでしょう。
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