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事業承継をするうえでの税理士の業務内容は? 役割や必要なスキルについて解説

事業承継をする際は、複雑な法制度や節税方法についての専門知識が必要となります。そこで、税についての専門家である税理士の存在は、欠かせません。この記事では、事業承継における税理士の役割や必要な知識、スキルについて解説します。

事業承継における税理士の役割

親族内承継における税理士の役割

親族内承継は、事業を配偶者や子どもなど親族に引き継ぐ方法です。税理士は、親族内承継の際に必要な贈与や相続に関する税務や、自社株の評価、納税資金の準備などについて、アドバイスを行います。また親族内承継では、相続税や贈与税の支払いが発生することがあるため、節税対策や資金調達の方法についての助言も行います。

親族外承継における税理士の役割

親族外承継とは、親族以外の人物に譲渡することです。税理士が行う業務は、主に自社株式の引き継ぎに関してのアドバイスです。株式の価値の計算方法や資金調達の方法、事業継承の手段、節税に関する助言を行います。

事業承継は自社株式を後継者に引き継ぐもので、自社株評価額をベースとして、自社株式の譲渡価格は決定されます。まず税理士は自社株式の評価をし、譲渡価格を算出します。自社株式の評価額が、想定していた額より高く、譲渡代金や納税額が多くかかれば、その価格を捻出できない場合もあるでしょう。財政的な負担を回避するために、税理士の専門的な助言が必要となります。

企業の合併・吸収における事業承継の税理士の役割

会社が合併や買収をする時、税理士はいろいろな助言をします。
その中の1つが、デューデリジェンス(買収監査)です。デューデリジェンスは、買収する会社が売却する会社の財務や税務のリスクを調べて、問題点を探すことです。デューデリジェンスの結果で、買収する会社は合併や買収をするか、希望売却価格に合うかどうかを判断します。

デューデリジェンスは、買収する会社の税理士が行うことが一般的ですが、売却する会社が自社の強みや弱みをまとめた資料を作成することも可能です。後者の場合は、売却する会社から税理士に資料作成の依頼が届くケースがあります。

事業承継に必要な税理士の知識

税務・法務の知識

自社株の承継には相続税・所得税・贈与税の計算、税制特例の活用、節税方法などについての知識が必要です。納税額が高額になると、後継者にとって大きな負担になるため、補助金の申請や事業承継税制などについて検討する必要があります。
税理士は税務や税制全般について、高度な専門知識を用い、課題に対応します。

相続・贈与の法律の知識

事業承継には、遺産分割協議や遺言書作成についての知識が必要となります。関係者間の利害調整なども必要で、これらの対応が難しければ、スムーズに承継を進めることは難しいでしょう。法制度に関しては、弁護士などの法務専門家と連携して対応・調整しますが、税理士も法律に関しての知識は必要です。

資金調達の知識

事業承継では、納税や株式取得のために、お金が必要になります。自社株の評価額が高くなると、売却で株式を取得する場合、後継者が資金を用意できなくなる可能性があります。税理士には、自社株の評価額を下げるための方法や、節税対策、ファンドからの出資、金融機関からの融資などの知識が必要です。

企業の合併・吸収の知識

企業の合併・吸収を成功させるためには、「デューデリジェンス」や「株式譲渡」などの専門的な知識が必要です。デューデリジェンスでは、買収企業が売却企業の財務や法務などの情報を調査します。また中小企業の合併・吸収では「株式譲渡」がよく利用され、株式譲渡には市場買い付けや相対取引などの方法があります。企業の合併・吸収を成功させるには、プロセス全体や合併・吸収契約などの知識が重要といえるでしょう。

事業承継に必要な税理士の能力

説明力

説明力とは、関係者にわかりやすく説明して、納得してもらう力です。事業承継には税務や法律の専門知識が必要です。複雑な制度をわかりやすく説明する力と、関係者から同意や合意を得るための交渉力も重要といえます。

コミュニケーション力

税務の仕事はチームで行うことが多いため、最善の結果を出すためにはコミュニケーション力が必要です。税理士は弁護士や公認会計士など、他士業と連携してクライアントをサポートします。そのため、さまざまな分野の人とコミュニケーションがとれる、コミュニケーション力を持つ税理士なら、事業承継の話し合いをスムーズに進めることができます。

共感力

共感力とは、クライアントや関係者の立場や気持ちを理解して行動する力です。事業承継には経営者や後継者だけでなく、親族や従業員、取引先など、さまざまな立場の人々が関わります。一部の人に利益が集中し、関係者間の調整がうまくいかなければ、承継に時間がかかったり、承継後にトラブルが起こったりする可能性があります。クライアントの話を最後まで聞き、的確なアドバイスができる、共感力を持った税理士が事業承継には必要です。

スケジュールの調整力

スケジュールの調整力があれば、関係者や他士業と連携しながら、効率的に事業承継を進められます。計画通りに進まない事態が生じても、連携先とスムーズに情報交換できれば、早い段階での問題解決ができます。

まとめ

事業承継を進めるうえで、税理士の役割は非常に重要です。事業承継の際に求められる知見は多岐にわたりますが、この記事を参考に是非スキルアップの役に立ててみてください。

過去記事では、事業承継に役立つ書籍を解説していますので、是非ご参照ください。
(「事業承継のおすすめ書籍13選!」)

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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