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【成功実例付き】事業承継後の新規事業を成功させるための進め方

事業承継をした後、何から始めるべきかわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、事業承継後の新規事業を成功させるための秘訣を解説します。進め方の「7つのプロセス」や、実際の成功事例もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

事業承継と新規事業の関係

そもそも事業承継と新規事業の立ち上げは、どのように結びついているのでしょうか。まずは新規事業を立ち上げる背景や、新規事業の創出が企業にもたらす意義・価値について知る必要があります。

新規事業を立ち上げる理由

新規事業を始めるきっかけは、企業によってさまざまです。例として、よくある理由を3点、以下に挙げます。

経営環境が変化したから
近年は、新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻など、世界的に大きな出来事が多く起こっています。さらにはAI技術の発達などの技術革新、SDGsやESGをはじめとする環境問題への取り組みなど、企業が対応すべき環境変化は山積みです。

こういった社会情勢の変化・市場ニーズの多様化により、経営においてあらゆる企業が、岐路に立たされているともいえます。事業承継を行い、新体制へと移行することも環境変化の一つです。事業承継後に強固な経営基盤を築くためには、新規事業が重要なファクターになりえます。

収益源をつくりたいから
既存事業に加え、もう一つ新たな事業を立ち上げることで、これまでになかった収益源を生み出すことが可能です。多角的な事業展開を行うことで、単一の事業への依存度を分散し、安定した収益確保、持続的な企業成長につながります。

新規事業を新たな収益源として確立するためには、常に市場の状況を注視し続け、消費者ニーズを正確に把握することが求められます。

新規事業の開発手法(フレームワーク)

ビジネス現場では、フレームワークと呼ばれる手法を使用する場面が多くあります。市場調査や計画立案の際に役立つフレームワークは、新規事業を立ち上げる際にも有効です。

例えば「3C分析」というフレームワークでは、自社と競合他社の比較ができるほか、「MVV」は新しいアイデアを練る際に活用できます。これらのフレームワークは、用途に合わせて必要なものを選び、組み合わせて使用することで、事業承継後の新規事業にも大いに役立ちます。

新規事業の事業計画について

新規事業を立ち上げるとき、事業の展望を具体的に示した「事業計画書」を作成する必要があります。特に金融機関からの融資、他社や投資家からの出資を得て資金調達を検討する場合は、入念な事業計画の作成が重要です。事業計画を練る際は、以下のポイントを意識しましょう。

内容に具体性を持たせる
事業計画の内容は細部まで具体的である必要があります。「5W1H」を意識すると、事業計画の説得力が増します。5W1Hとは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」、そして「どのように」を一括りにしたものです。時間軸や成長目標など、具体的な数字やデータを示すことで、より具体性のある事業計画に仕上げられます。

他社との差別化を意識する
競合ひしめく分野に参入する場合、「なぜ自社がやらなければいけないのか」をアピールしましょう。事業モデルが他社と全く同じであれば、「わざわざやらなくてよいだろう」といわれてしまうのも無理はありません。自社には独自のノウハウがあり、違った切り口から事業を展開できること、新たな価値を提供できることを示す必要があります。他社に負けない自社の武器を強調し、積極的に事業計画に盛り込みましょう。

新規事業の進め方

事業承継後の新規事業の進め方は、7つのプロセスに分けられます。ここでは、新規事業をうまく進めるポイントや、事業立ち上げに成功した実例も紹介しています。

新規事業の7つのプロセス

1.ビジョンをはっきりさせる
まずは新規事業を立ち上げる理由・背景を明確にし、明文化します。経営理念や企業目標をいま一度見直し、「なぜこの事業を立ち上げるのか?」「どのような課題にコミットしたいのか?」をはっきりとさせましょう。ここで決めたビジョンは立ち上げに携わるメンバーの行動指針になり、事業を進めていくうえでの柱であり続けます。

2.自社内外の課題を分析する
次に自社や顧客、市場や業界全体などが抱える課題を発見します。「若い世代からの支持を受けられていない」「リピーターが少ない」といった課題を、フレームワークを活用しながら洗い出していきましょう。

課題分析に役立つフレームワークとしては、「SWOT分析」「3C分析」などがよく用いられます。SWOT分析では「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4項目から、企業の内外環境を分析し、課題を発見できます。3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3つの“C”を分析します。市場調査を行い、具体的な戦略を立てるのにすぐれたフレームワークです。

3.事業領域を決める
事業領域とは、広義的には「商品やサービスを展開することでカバーできる分野」を指し、事業ドメインともいいます。さらに細分化すると「誰に向けたものなのか」を指す顧客軸、「どのような技術を扱うか」の技術軸、「どのような価値を提供するか」の機能軸に分けられます。

すなわち自社内外の課題に対し、どのようにアプローチしていくか、改善策を具体化させることと捉えてよいでしょう。そのうえで、新規事業の核となるアイデアの構想段階に移行していきます。

4.アイデアを分析し予測する
新しいアイデアが生まれたら、すぐに決定とはせず、慎重に分析と予測を行う必要があります。市場内の需要や競合の動向を正確に把握し、メリットとデメリットを整理しましょう。実際に市場へ飛び込んだとき、どの程度の収益を得られるか、長期的な成長性は見込めるかなどを予測することで、イメージがより鮮明になります。

前述した3C分析のほか、「ファイブフォース分析」「リーンキャンパス」といったフレームワークも役立ちます。

5.事業立ち上げに向けて環境を整える
アイデアが固まったら、次は環境整備の段階に移ります。資金はもちろんのこと、必要なものや人的資源の調達はなるべく早く済ませましょう。一から事業を立ち上げるときはノウハウがなく、手探り状態でのスタートになる場合があります。経験が豊富な人材を採用するのが難しいときは、業務委託で外部から確保するのも一つの手です。

6.具体的な行動計画を立てる
これまでのステップを総合して、社内の誰が何をするのか、より詳細な行動計画を策定します。メンバー同士でコミュニケーションをとって情報共有を徹底し、手詰まりがあればステップ7に反映させて改善します。

7.計画の効果を測定し改善する
期日の目安どおりに作業が進んでいるか、目標の成果を達成できているかなど、計画が順調に果たされているかを確認します。もし不備があった場合、原因を分析して改善を重ねましょう。作業効率がよくなるだけでなく、事業そのもののクオリティ向上にもつながります。

新規事業を成功させるポイント

事業承継後の新規事業を成功させるには、企業理念やビジョン、ミッションを意識することが重要です。特に事業承継後は、組織自体の大きな変化を伴い、目先の事業に集中しがちといえます。その結果、企業全体として掲げている目標や、解決したい課題を見失う恐れがあります

ここで一度、原点に戻りましょう。前項ステップ1の「ビジョンをはっきりさせる」でも解説したように、明確に定められたビジョンがあれば、社員は統一された意識のもと行動できます。

新規事業立ち上げの成功実例を紹介

最後に、事業承継後の新規事業立ち上げに成功した例として、博多における明太子の名店、株式会社ふくやのストーリーをご紹介します。深刻な赤字に苦しんでいた複合施設「福岡サンパレス」の経営を引き継いだふくやは、創業者の孫である川原武浩氏を社長に抜擢しました。武浩氏は同施設の柱であったホテル事業に目を付け、直営のケーキショップを新たに出店します。歓楽街という土地柄を活かした営業手法とユニークな商品展開が功を奏し、福岡サンパレスはわずか2年で黒字化を果たしました。

まとめ

この記事では、事業承継後の新規事業立ち上げを成功させるポイントを解説しました。新規事業をスタートさせるときは、具体的な進め方や成功実例を知っておくと、ヒントを得たいときや、作業に行き詰まった場合に役立ちます。事業承継については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひこちらも読んで、関連知識を身につけ、スムーズで確実な事業承継を行うために役立ててください。
「事業承継マニュアル」とは? どう活用されているのか解説します」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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