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株式譲渡で所得税は課税される? 譲渡所得税や取得費を解説

事業承継を考えた時、株式譲渡を選択する場合もあるでしょう。株式譲渡とは保有する株式を買い手側に譲り、会社の経営権を譲渡することを指します。株式譲渡の際はさまざまな税金が課されますが、所得税は課税されるのでしょうか。

この記事では、株式譲渡において発生する税金と譲渡所得税、取得費を分かりやすく解説します。

株式譲渡の際に発生する税金

まずは、株式譲渡を行う際に発生する税金について確認します。譲渡所得税に関しては、計算式や税率を把握しておくと安心です。

株式譲渡では所得税・住民税・法人税がかかる

株式譲渡の際に発生する税金は、「所得税」「住民税」「法人税」の3種類で、さらに2037年まで課せられる震災復興の財源を確保するための「復興特別所得税」があります。

所得税は個人の所得に対して課される税金で、住民税は地方税の一つです。法人税は、法人が事業を行うことで得た所得に課されます。

株式譲渡は、株式を売却することで売り手側が譲渡所得を得る仕組みです。そのため、売り手側の株主が個人の場合は、所得税と住民税が課税され、法人の場合は法人税が課されます。

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譲渡所得税とは

株式譲渡の際は、譲渡価格から株式の取得費や手数料といった必要経費を差し引いた金額に課税されます。

「譲渡所得税」とは、譲渡価格から必要経費を差し引いた譲渡所得に対する税金です。

所得税は「総合課税」と「分離課税」に分類されており、総合課税は給与や不動産所得などが対象で、これらをまとめて課税します。

一方で、分離課税は株式を含め土地や建物などが譲渡所得に該当し、それらを個別に課税する方法です。このことから、株式の譲渡所得税は基本的に分離課税の対象となります。

譲渡所得税の計算式

譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 株式の売却金額 – (株式の取得費 + 株式譲渡で発生した費用)

計算式にある取得費とは、株式購入時の取得代金などです。取得費に関する詳細は後述します。譲渡で発生した費用は、主に譲渡時の手数料や消費税です。なお、株式には上場株式と非上場株式がありますが、譲渡所得の計算方法に違いはありません。この譲渡所得に税率を乗せて譲渡所得税を計算します。

譲渡所得税の税率

上場株式・一般株式(上場株式などを除く株式)ともに、税率は20%です。その内、所得税が15%で住民税が5%になります。

復興特別所得税に関しては、2037年まで各年の基準所得税額に2.1%を乗じた金額を、所得税とともに納税します。

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株式譲渡の取得費

株式譲渡の計算には取得費が重要な要素です。取得費の概要や不明になった時の対応策・取り扱いについて解説します。

取得費とは

取得費とは株式購入時の取得価額であり、購入にかかった手数料や消費税の他、購入時の名義書換料といった株式取得に要した費用などが含まれます。また、株式譲渡での購入以外に、相続や新株予約権などでも発生します。

取得費の基本的な計算式は以下の通りです。なお、下記は1株当たりのものとなります。

取得費 = 【(取得単価 × 取得株数) + 購入時の委託手数料 + 消費税】 ÷ 取得株数

1株当たりの取得にかかった価格に、株数などを乗じた計算式になります。続いて、譲渡株式の取得費を以下の式に当てはめて計算しましょう。

譲渡株式の取得費 = 1株当たりの譲渡直前の取得費 × 譲渡株式数

取得費が不明な時の対応策

取得費は長期間の保有で不明になることが珍しくありません。株式の取得費が不明な場合は、以下の順番で対応してみましょう。

1.取引報告書

株式購入時に証券会社から交付されている取引報告書を調べることで、記載されている取得費の確認ができます。

2.顧客勘定元帳

株式を購入した証券会社に、顧客勘定元帳があるかを調べてもらいましょう。過去10年以内であれば、ほぼ確実に取得費を把握できます。

3.預金通帳や日記

預金通帳で取引金額が把握できれば、その額を取得費にすることが可能です。日記やメモなどで取得時期が確認できる場合、時期を基にして取得費を算出できます。

4.名義書換日

上記の1〜3で対応できない場合、名義書換日から取得時期を確認し、その時期における相場を基に取得費を算出します。

取得費が不明な場合の扱い

譲渡した株式の購入時期が古いといった理由で、取得費が分からない場合もあるでしょう。このようなケースでは、同一銘柄の株式ごとに、譲渡代金の5%相当の額を取得費とすることが認められています。実際の取得費が譲渡代金の5%を下回っている状況も同様です。これを「概算取得費」と言います。

まとめ

株式譲渡で発生する税金に関して、基本となるのは譲渡所得です。譲渡所得によって譲渡所得税がどのくらいかかるのか、税率や計算式が分かればおおよその額を把握できるでしょう。

また、譲渡所得を考える上では株式購入時の取得費も重要です。取得費が不明な場合に対処できるように、対応策を順番に確認しておきましょう。

なお、株式譲渡の詳細は過去記事にもありますので、こちらも併せてご覧ください。
「株式譲渡にはどのような手続きが必要か?譲渡先別に譲渡の流れを解説!」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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