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「銀行は減点方式」どうやって審査で企業評価を高めるか 積極的な投資は◎、節税に熱心は×

学問としての中小企業の事業承継について専門家が本音で語る「サクセッションアカデミー」(主催・一般社団法人サクセッション協会)が6月19日、東京都銀座及びZOOMによるオンラインで行われました。7回目の講義は、「財務健全性の確認と準備」というテーマで行われ、事業承継における「銀行の審査」のポイントを、元メガバンク行員が解説しました。

将来への積極的な投資が銀行から高評価を得るポイント!

アカデミーは、日本経済の課題となっている事業承継を解決するため、今年からスタートしました。元メガバンク勤務で同協会代表理事の原健太郎氏と、約30年以上にわたり外資系企業等でコンサルティング業務を経験した同協会フェロー中山良一氏が、講師を務め、中小企業の事業承継について欠かせない知識を解説します。

原氏は元銀行員の視点から、「『間接金融』である銀行は、審査の際にネガティブな情報を重視する」と述べ、減点法による資産評価という現状を示します。日本ではクラウドファンディングなどの『直接金融』がまだ浸透し始めた段階であり、「ここを買った!」といった加点評価による出資の風土は根付いていないと言います。

審査においては、貸借対照表(※企業の資産や負債を表した書類)に表れない指標も重要で、具体的には、簿価(※買値)と時価の違いや含み資産、隠れ負債などがあります。

また、原氏はキャッシュフロー計算書(※営業、投資、財務に区分した決算書)の中でも「投資活動」に注目することが大切だと強調しています。金融機関は将来の収益活動に対し、積極的に投資する企業を評価したいと考えるからだそうです。

事業承継後は属人的な加点がなくなる! だから客観的な財務指標が重要

事業承継前は「この人なら大丈夫」「この人なら仕方ない」といった先代経営者の属人的要素によって金融機関との関係が保たれていることが多いです。

しかし、事業承継後は新たな経営者に変わるため、財務上のリスクが顕在化し、うまくいかなくなることがあります。

原氏は、「先代経営者に対する属人的なアドバンテージがなくなり、それまでの信頼関係がリセットされる」と述べました。

中山氏が「後継者に何をしてほしいですか?」と質問すると、原氏は自身の体験から「曖昧なことは避けてほしい。不良債権や不良資産については、社長が変わると銀行の対応が厳しくなるため、クリアにしたほうがよい」と答えました。

「経営者が嫌がる分野ですが、しっかり直視し修正することで、事業承継も有利に運びます」と中山氏は話しました。

事業承継税制との関連もあり、「節税をすればするほど会社の価値は落ちる(納税する会社ほど評価が高い)」と、納税の重要性を原氏が強調し、セミナーは締めくくられました。

取材・文/松田謙太郎

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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