COLUMNコラム
事業譲渡における個人情報の取り扱い、事業譲渡に伴う関連法規や注意点を解説
合併や組織再編により事業承継や譲渡が行われる場合、個人情報の取り扱いにはどのような注意が必要でしょうか。この記事では、事業譲渡と個人情報保護法の関係、および違反とみなされる可能性のあるリスクについて解説します。
目次
事業譲渡と個人情報の関係
事業譲渡とは?
「事業譲渡」は、会社が事業の全て、もしくは一部を第三者に譲渡することを指します。法人格を全て譲渡する「株式譲渡」と違い、事業譲渡は契約により譲渡する対象事業を選ぶことができ、資産や負債なども比較的自由に選別することが可能です。
一方で、事業譲渡は手続きが煩雑で、合併買収を行うまでに多くのコストがかかる恐れがあります。会社分割などと違い、取引する事業の包括継承ができないため、資産や負債、雇用関係を移転するには、それぞれで別個に手続きを行わなくてはなりません。債権者や取引先、社員とは個別に同意を得る必要があるほか、不動産を取引する場合は登記手続きも必要です。
「個人情報」にはどのようなものがある?
「個人情報」とは、生存する個人の情報であり、その情報に含まれる氏名や生年月日などによって特定の個人を識別できるものとされています。また、その他の情報と容易に照合でき、それによって特定の個人を識別できるものも含まれます。
個人情報の具体例は以下のとおりです。
A. 氏名、生年月日、住所・電話番号など連絡先、会社での所属について、それらと氏名を組み合わせた情報
B. 特定の個人と分かるメールアドレス
C. 履歴書などに記載される雇用管理情報
D. カメラに録画された映像・音声で本人と特定できるもの
E. 電話帳や官報、職員録など公にされている情報
F. 特定個人と結びつく通称や屋号、芸名など
個人情報を取り扱う際の注意点
個人情報を取り扱うにあたり、事業者は一定のルールを守る必要があります。改めて確認しましょう。
1.利用目的を定め、通知または公表する。目的の範囲内でのみ利用する。
2.漏えい、紛失などが発生しないように保管し、取扱いについて安全管理を徹底する。
3.第三者に提供する場合には、事前に本人の同意を得る。第三者に提供するまたはされる場合には一定事項を記録する。
4.本人から開示や問い合わせなどの請求がされた場合には対応する。
事業譲渡と個人情報保護法、関連法規について
事業譲渡と個人情報保護法の関係
事業譲渡の場合、個人情報保護法との関係はどうなるのでしょうか。事業継承の場合、「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合 」にあたるため、譲渡先は「第三者」に該当しません。
ただし、利用目的は引き続き目的の範囲内で利用されます。つまり、継承前の利用目的を超えて個人情報を扱う場合は、事前に本人の同意を得る必要があります。ただし、同意を得るためのメール送信や電話は目的外利用には該当しません。
事業譲渡を行い、事業内容に変更や追加がある場合には、通知や公表を行っている企業のホームページなどを確認し、公表に過不足がないか確認する必要があります。
個人情報保護法に違反した場合の罰則、リスク
個人情報取扱事業者が、個人情報保護法の義務規定に違反した場合、個人情報保護委員会の報告徴収・立ち入り検査を受ける場合があります。また、指導や助言、勧告や命令を受ける場合もあり、これらに応じない・虚偽の報告をした場合、刑事罰(50万円以下の罰金)が科せられる可能性があります。
さらに命令に違反した場合には、その旨が公表される可能性があり、加えて刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科せられる可能性もあるのです。
事業譲渡は会社法とも密接に関係
会社法は、会社の設立や運営、管理に関する法律です。会社法第467条では、事業譲渡に関しては「株主総会特別決議が必要」とされています。株式会社は、事業譲渡の効力発生の前日までに、株主総会で特別決議の承認を受けなければなりません。
ただし、全てのケースで株主総会の特別決議が必要というわけではありません。会社法第468条では、譲渡元企業と譲渡先企業が特別支配会社の関係にある場合には、承認手続きが免除されると定められています。
まとめ
事業譲渡や事業継承に伴う、個人情報の取扱いのポイントについて解説しました。事業譲渡を行った際に、個人情報の取扱いに関して変更がある場合には、必ず事前に本人の同意を得るとともに、利用目的を公表しているホームページなども見直しを行いましょう。
過去の記事では、事業承継の流れを解説しているので、ぜひご参照ください。
(「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)
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