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赤字・債務超過の会社が事業承継を成功させる4つのポイント

「赤字や債務超過だったら事業承継は無理だろう……」とあきらめている中小企業の経営者はたくさんいます。しかし、企業の価値は複合的な要素で決まるため、赤字や債務超過でも事業価値が認められて買い手が見つかり事業譲渡できるケースや、問題点を解消して円滑な親族内承継が実現するケースもあります。本コラムでは、赤字や債務超過の会社が事業承継を成功させるための知識を解説します。

意外と知らない「赤字」と「債務超過」の違い

本題に入る前に、混同しがちな赤字と債務超過の違いを簡単に押さえておきましょう。実は、この2つの意味はまったく異なるのです。赤字とは、事業年度や月次などの一定期間において、支出が収益を超えている状態のこと。「一定期間の支出>一定期間の収益」といえます。

一方で債務超過とは、すべての保有資産を売却したとしても負債が残る状態のこと。つまり、「負債>資産」です。したがって、「赤字=債務超過」ではなく、「債務超過でも単年度で見れば黒字」という会社もあるわけです。

債務超過企業の事業承継では、「債務の解消」が最重要

債務超過の企業であっても、事業承継することは可能です。とはいえ後継者にとって、債務超過の会社を承継することにメリットはありません。仮に引き継いでも倒産リスクがありますから、社員や家族に相談しても、快く承諾を得られる可能性は低いでしょう。後継者を見つけ、円滑に事業承継するためには、なによりも現在抱えている債務の解消が不可欠なのです。

「債務超過の解消」を実現する4つの方法

債務解消の方法は、次の4つが主に挙げられます。

①利益の向上

最初に考えるべき選択肢は、会社の利益を上げて資産を増やすこと。これがもっともシンプルかつ効果的な方法です。売上原価や人件費、取引先の選定基準の見直し、遊休資産(企業が事業のために購入したものの、使用や稼働を休止させている資産)の売却などで無駄を削減することはもちろん、広報・PR、マーケティング、人材育成・採用など会社の価値をより高めていく戦略も求められます。

また、特に中小企業の多くはDX(デジタル・トランス・フォーメーション)が遅れている現状があります。生産性向上・業務効率化に与するITツールやクラウドサービスなどは数多くあるので、それらを有効活用することで利益向上にも役立つでしょう。ただし、この方法で債務超過を解消するには時間を要するため、中長期的な視点で取り組んでおく必要があります。

②債務免除

債務免除とは、簡単にいうと「借金の返済をしなくてよい(=債務そのものが消滅する)」行為のこと。たとえば、経営者自身の役員借入金を免除したり、外部の債権者から買掛金や借入金などの支払いや返済義務を免除してもらったりすることができます。債務免除を行なうと、その分純資産額を増やすことができます。ただし、この方法は会計上のテクニックのようなもので、債務超過の根本原因が解消されるわけではありません。

くわえて、融資先の金融機関は、よほどの関係性がない限り債務免除を実行してくれませんし、債務免除によって業績が黒字になった場合には法人税が課される点も注意が必要です。債務免除は、取引先や経営者、親族などから集めた借入金が多い場合に有効だといえます。

③増資

増資とは、一言でいえば資本金を増やすこと。経営者が自己資金を投入したり、個人投資家やベンチャーキャピタルに株式を発行したりすることで資本金を増額させます。すると純資産額は上がり、その分負債が解消されます。

したがって、利益の向上による債務超過の解消が難しい企業にとって、即効性の強い債務超過対策といえるでしょう。

ただし、債務免除と同様、根本的な経営赤字の解消にはなりません。また、そもそも債務超過の中小企業に出資してくれる人を見つけるのは至難の業ですし、経営者の自己資金で債務超過を解消するのも現実的ではありません。

さらに、もし増資ができても株主構成や経営権にも影響してくるため、慎重な判断が求められます。

●④DESを行なう

DES(デット・エクイティ・スワップの略)とは、金融機関などの債権者が債務超過した企業の債務者の株式を取得することで、負債を株式に交換すること。債権の株式化とも呼ばれます。これによって、企業は支払利息から解放され、元本の返済義務もなくなるとともに、負債が減るので自己資本比率の増加にもつながります。

ただし、増資と似ている理由になりますが、債務超過の企業に対してDESを行なうわけですから判断は当然慎重になるでしょう。

また、DESにより経営者以外に持株比率の高い株主が出ると、会社運営に影響が生じる可能性がありますし、債務免除益による税負担増加といったデメリットもあります。

「M&Aによる事業譲渡」という選択肢!

債務超過を解消できるのが理想的ですが、すべての会社で実現できるわけではありません。その場合に有効となるのがM&Aによる事業譲渡です。M&Aの手法には、株式譲渡と事業譲渡という2つの手法があります。ただし、債務超過企業においては、株式譲渡は買い手にとって大きなリスクとなるため、事業譲渡のほうが現実的な選択肢といえるでしょう。

まとめ

赤字や債務超過の会社の事業承継は、簡単なことではありません。だからこそ、万が一の事態に備えて、債務超過の対策法を知っておくことが重要です。また、たとえ赤字や債務超過の状態であっても、解消する方法やM&Aの買い手が見つかる可能性もあります。最初からあきらめず、専門家のサポートを受けたりしながら最適な対応策を見つけましょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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