COLUMNコラム
事業承継で連帯保証は引き継がなくてもいい?
銀行から融資を受けている経営者は、個人保証を求められ、会社の連帯保証人になっている場合が少なくありません。事業承継を考えていても、連帯保証が妨げになって二の足を踏んでいる経営者は多いでしょう。実は、ある要件を満たせば、経営者保証を見直すことができる制度があるのです。本記事では、連帯保証人となっている中小企業の経営者を守る「経営者保証ガイドライン」の活用法について解説しましょう。
目次
「経営者保証」とは?
中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者が会社の連帯保証人になることを「経営者保証」といいます。会社が返済しているうちは連帯保証人の直接債務にはなりませんが、連帯保証債務は返済が滞ったときに発生します。会社が倒産すると、経営者は土地や財産を処分して返済に充てなければいけません。
経営者保証は経営者にとってリスクが大きく、事業拡大の妨げにもなっています。 そこで、経営者保証を提供しない状態で融資を受けることを可能にするために、中小企業庁によって「経営者保証ガイドライン」が定められました。
「経営者保証ガイドライン」とは?
「経営者保証」は長年、「企業による思い切った挑戦を妨げている」「事業承継の際に現経営者の保証債務を後継者が引き継ぐと、円滑な事業承継が行なわれない」などと指摘されてきましたが、早いタイミングで事業をやめる決断を難しくしているという面もあります。それらを受けて、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会は「経営者保証ガイドライン」を策定しました。
これによって、一定の条件を満たせば、保証を外して融資を受けることが可能になりました。具体的な条件を見てみましょう。
①資産の所有やお金のやり取りに関して、法人と経営者の関係を明確に分ける
中小企業の場合に多いのが、会社と経営者が混然一体として運営されてしまっているケースです。このように「法人」と「経営者」の境目が曖昧であるということは、会社の資産が経営者に流れている可能性があるとみなされ、金融機関としては経営者に会社債務に対する連帯保証をさせることで、一体的に把握しようとします。
事業承継で連帯保証を外してもらいたいと考えるならば、会社と経営者との資産をきっちり分離することが必須です。会社経理と家計を一緒くたに考える経営者も少なくありませんが、意識を改める必要があります。
②法人のみの資産や収益力で、返済が可能となるよう財務基盤を強化する
会社所有資産との企業運営からだけでは返済能力が不安だとみなされる場合、金融機関は会社経営者に連帯保証を求めます。裏返せば、会社の資産と収益で金融機関からの借り入れが返済可能と判断できるような財務状況であれば、連帯保証を解除してもらえるかもしれません。財務基盤を整えていく経営努力が必要なのです。
③金融機関に対する、財務情報の適時適切な開示
中小企業では、金融機関に提出するとき、自分の会社の財務状況と経営成績をよく見せるために、「お化粧した決算書」を別に作成するということも少なくありません。同時に、経営者が経営に忙殺され、金融機関が求める必要な情報が提供されないということもしばしば起こりえます。金融機関からすればこうした企業の印象は悪く、提出された決算書やその他の書類内容の真実性に疑いを抱く恐れがあります。
現に、適時適切な情報開示がなされないという理由で、経営者に対する連帯保証を求めることもあります。すなわち、貸借対照表、損益計算書、勘定科目明細書などの決算報告や定期的な試算表、資金繰り表などの報告を後れのないように行なう必要があります。
*すべてを満たせば経営者保証なしで融資を受けられる可能性があり、すでに提供されている融資の経営者保証を見直すことも可能になりました。中小企業、経営者、金融機関の共通ルールという位置付けであり、融資条件の見直しや借り換えにも利用ができます。経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関に委ねられます。
まとめ
今回ご紹介しました「経営者保証ガイドライン」を活用すれば、経営者保証なしで融資が受けられ、すでにある経営者保証を見直すことが可能であり、経営者は企業再生や事業承継がしやすくなります。特に事業承継を検討中で、経営者保証を外せないか悩んでいるのであれば、政府が金融機関との交渉や調整に際して専門家の無料派遣を行なっていることもポイント。ガイドラインを利用したいときは、取引金融機関、商工会議所・商工会、事業承継・引き継ぎ支援センター、中小企業再生支援協議会に問い合わせてみましょう。
SHARE
記事一覧ページへ戻る