COLUMNコラム
「外国子会社」の株式を保有する企業必読!事業承継税制の注意点とは?
後継者が承継した自社株式などに係る相続税の一部・贈与税の全部を猶予、もしくは免除できる事業承継税制。手続きがやや煩雑、制度の適用開始後も年次報告書を定期的に提出しなければならないといったデメリットはあるものの、贈与税や相続税の納税猶予は非常に大きなメリットです。ただし、外国子会社の株式を持つ企業の場合、事業承継税制を活用する場合は注意が必要です。本記事では、外国子会社の株式を保有する企業が同制度を活用するうえで押さえておくべきポイントを解説します。
目次
事業承継税制のポイントまとめ
昨今話題になっているのは特例措置!
事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、事業の後継者にかかる相続税・贈与税の猶予する制度のことです。2008年5月に成立したのですが、当初は一般措置だけで、メリットが少ない割に手間がかかるため、あまり活用されませんでした。そこで2018年の税制改正で内容が変わり、10年の期間限定で特例措置が導入されました。
一般措置と特例措置の違いは、次のとおりです。
一般措置 | 特例措置 | |
納税猶予される割合 | 贈与:100% 相続:80% | 贈与・相続ともに100% |
承継パターン | 承継する人:複数可承継される人:1人 | 承継する人:複数可承継される人:最大3人 |
対象株数 | 贈与:100% 相続:80% | 贈与・相続ともに100% |
雇用確保要件 | 承継後5年間は平均8割の雇用維持が必須 | 弾力化(※) |
経営環境の変化に対応した免除 | なし | あり |
相続時精算課税の適用 | 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 | 60歳以上の者から20歳以上 の推定相続人・孫への贈与 |
特例承継計画の策定 | 不要 | 5年以内の特例承継計画の提出が必要(2018年4月1日から 2023年3月31日まで) |
適用期限 | なし | あり10年以内の贈与・相続など(2018年1月1日から2027年12月31日まで) |
(※)事業承継後の5年間平均で雇用の8割を維持できなかった場合でも、特例承継計画に関する報告書(様式27)を作成し、認定経営⾰新等⽀援機関に意見を記入してもらった上で都道府県庁へ提出すれば、納税猶予が継続されます。
下の2項目、特例承継計画の策定と適用期限においては一般措置のほうが有利ですが、それ以外を考慮すると、特例措置のほうがメリットははるかに大きいといえるでしょう。
特に、贈与・相続ともに納税猶予を100%受けられる(=贈与税・相続税の負担がゼロになる)、対象株数が贈与・相続ともに100%に関しては、金銭的なメリットが非常に大きいため、事業承継税制を活用する一番の理由といえるでしょう。
特例措置のデメリット・注意点
メリットがある一方で、事業所計税制の特例措置には次のようなデメリット・注意点もあります。
・納税猶予の取消事由に該当した場合、猶予税額の一括納税になる恐れあり
・納税猶予申請の手続きが煩雑・後継者は3年以上役員を務めなければならない
・先代経営者が亡くなった後、株式は相続税の対象になる
・M&Aで第三者に株式譲渡した場合、相続税の猶予は打ち切りになる
・遺留分や他の相続人の相続税に配慮が必要
外国子会社の株式を保有する企業は要注意!
事業承継税制が導入された背景には、税金面の負担を緩和し、長期的に事業を継続する日本の中小・零細企業を増やそうという政府の意向があります。したがって、外国子会社が発行する株式の承継は、日本経済に直接貢献しないものと見なされ、事業承継税制は適用対象外となります。
つまり、グループ内に外国子会社が存在する場合、たとえ特例措置の要件をすべて満たしたとしても、外国子会社の株式に対しては贈与税・相続税の猶予を受けることができず、後継者には納税負担が発生するのです。
具体的には、次のような要件が適用されます。
【外国子会社の株式を保有する場合における事業承継税制の適用要件の変更】
・要件の厳格化
自社の常時使用従業員が5人以上であることを追加(ただし、外国子会社を保有しない場合は、1人以上)。
なお、ここでいう常時使用従業員とは、社会保険等に加入している者が対象で、先代経営者や後継者の親族であるか否かは問いません。
・納税猶予の縮減
自社の株価から外国子会社株式の価値相当を差し引いて納税猶予額を算定
すべての外国子会社が対象ではない!
事業承継税制の適用対象から外れるのは、外国子会社が対象会社(自社)の“特別関係会社”に該当する場合です。特別関係会社とは、対象会社、対象会社の代表者、対象会社の代表者の親族による合計の議決権割合が50%を超える会社のことを指します。
具体的には、子会社、孫会社、ひ孫会社。これらの外国子会社は、事業承継税制の適用対象に含まれないため、注意しましょう。
まとめ
外国子会社の株式に関しては、事業承継税制は適用されません。しかし、それを考慮しても相続税・贈与税が猶予、免除されることは大きなメリットです。自社がどのような戦略を立てるべきか、早い段階で事業承継のプロフェッショナルと協議し、綿密かつ中長期的な取り組みを行うことが大切といえるでしょう。
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