COLUMNコラム
本当に給与アップにつながる?それとも至れり尽くせり?「賃上げ促進税制」の優遇措置、4月からさらに拡充
賃上げは、岸田内閣の重要課題だ。しかし、大企業を含め、人件費は業績を圧迫する最大の要因でもある。そのため政府は、「賃上げ促進税制」を2021年4月にスタートした。企業が従業員の給与を増やせば、法人税(個人事業主は所得税)から一定額を差し引くことができる制度だ。この優遇措置が、2024年4月からさらに拡充・延長されることになった。主な改正点を4つ挙げる。
目次
措置期間3年に延長、「中堅企業」を新設
①「賃上げ促進税制」の措置期間が、従来の2年間から3年間に延長される。
②賃上げの増加%に応じた税金の控除率は、表①の通りに拡大される。
今回、大企業と中小企業の間に「中堅企業」(青色申告書を提出し従業員2000人以下の企業または個人事業主)というカテゴリーが新設された。
給付など支給総額が前年比3%増加の場合、税額控除率は大企業と同じ10%だが、前年比4%増加を達成すると25%の税額控除率(大企業は15%)になる。
教育訓練費や子育て、女性の支援で控除上乗せ
③大企業、中堅企業、中小企業のいずれに対しても、教育訓練費を増加させると、税額控除率が上乗せされる。
大企業および中堅企業は、教育訓練費が前年比10%増額すると控除率5%上乗せ、中小企業は前年比5%増額すると控除率10%上乗せになる。
さらに、仕事と子育てとの両立支援(くるみん認定)、または女性活躍支援(えるぼし認定)に積極的に取り組んだ企業に対して税額控除率の5%上乗せを行う措置が新設された。
④給与など支給総額を増額しても、赤字決算では税税額控除の恩恵は受けられない。しかし、赤字企業でも税額控除を5年間かけて消化できる「繰り越し控除制度」が新設される。
その他にも、これまで介護職員の処遇改善加算などによる賃上げ分は「賃上げ促進税制」の対象外だったが、税制改正で今回の「賃上げ促進税制」の対象に含まれるなどの措置も検討されている。
「賃上げ促進税制」のほかにも、「中小企業省力化投資補助事業」や「中堅・中小企業大規模成長投資補助金」など、政府による賃上げのための様々な施策が発表されている。
(取材・文/ジャーナリスト 三浦 彰)
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