COLUMNコラム
資金不足を解決!「事業承継ローン」のメリットと注意点を解説!
「事業承継にはまとまったお金が必要だが、資金を準備できるか心配……」と不安を抱く経営者・後継者候補は多くいます。そんな人たちにとって有益な選択肢となるのが「事業承継ローン」です。本記事では、事業承継ローンが求められている背景、利用することのメリット、利用条件などを解説します。
目次
なぜ、事業承継ローンが求められているのか?
事業承継ローンとは、その名のとおり「事業承継を行うために必要な資金を融資してもらうこと」を指します。事業承継では以下のようなコストが発生します。
1.相続税
2.贈与税
3.不動産取得税登録免許税・不動産取得税
4.法人税・消費税
5.専門家へ支払う費用
これらを合計すると、数百万円〜数千万円の費用が必要となるケースが多いといえます。
さらに先代の経営者が会社の借入金の連帯保証人となっている場合は、それも引き継がなければなりません。
経営者の個人保証の問題点、解除方法はこちらの記事で解説しています。
(「事業承継の際、経営者の「個人保証」は解除できるのか?」)
そのため、資金不足で事業承継を諦める後継者も珍しくありません。実際、日本商工会議所の「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」(2021年)によると、事業承継の障害・課題として最も多かった回答は「後継者への株式譲渡」(約3割)。
後継者へ株式譲渡を行う際の障害としては、「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」が約7割、「後継者に株式買取資金がない」が約6割と、資金面がネックになっていることがわかります。
事業承継にかかる料金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(「事業承継にかかる5つの料金を解説――節税も可能!」)
事業承継ローンのメリットとは?
事業承継ローンを活用するメリットは、「事業承継で発生する費用を分割で払える」ことが挙げられます。前項で紹介したように、事業承継ではさまざまな費用が発生します。後継者が全額まとめて支払うのが困難というケースも当然あるでしょう。そうした場合、事業承継ローンを利用することで、費用を分割で支払うことができます。具体的にいうと、融資されたお金で納税や支払いを済ませたあと、融資条件で定められた期間に合わせて返済していけばいいのです。
事業承継ローンは2種類に分かれる
事業承継ローンは、大きく「民間金融機関」と「政府系金融機関」の2種類に分かれます。
民間金融機関の事業承継ローン
銀行・信用金庫によって利息や返済期間などの条件は異なりますが、いずれも通常の融資よりも審査が比較的通りやすいのが特徴です。たとえば、以下のような特徴があります。
・担保や保証人の必要がない
・最大5,000万円までの融資が可能
・5年・10年の据え置き期間(利息だけを支払えばいい期間)あり
政府系金融機関の事業承継ローン
事業承継ローンで最も有名なのが、日本政策金融公庫が実施する「事業承継における融資・保証制度」です。詳しくは次項で紹介しましょう。なお、日本政策金融公庫は事業承継ローンだけでなく「事業承継マッチング支援」というサービスも展開しています。
事業承継マッチング支援は、後継者がいないことなどを理由に「事業を譲り渡したい」と考える経営者と、創業や新分野進出等を目的に「事業を譲り受けたい」と考える企業や個人をつなぐ、無料のマッチングサービスです。
事業承継マッチング支援については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
(「事業承継で使える「日本政策金融公庫」の支援制度とは?」)
日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用するためには?
それでは、日本政策金融公庫の「事業承継における融資・保証制度」について詳しく紹介しましょう。
どんなときに利用できるの?
以下のような資金を必要とするときに利用できます。
・後継者が、相続等で分散した自社株式や事業用資産を買い取るための資金
・後継者が、相続や贈与によって自社株式や事業用資産を取得した場合の納税資金
・役員や従業員が、株式や事業の一部を買い取って事業の承継を行うための資金
・経営者の交代により信用状態が悪化し、銀行の借入条件や取引先の支払条件が厳しくなった場合
利用条件は?
以下のようなケースの場合、利用条件を満たしたといえます。
・会社または個人事業主が、後継者不在などにより事業継続が困難となっている会社から、事業や株式の譲渡などにより事業を承継する場合
・会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合
・後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合
・経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社の代表者個人が、自社株式や事業用資 産の買い取りや、相続税や贈与税の納税などを行う場合
なお、融資限度額がかなり大きく、中小企業の場合は最大7億2,000万円です。ただし、「設備資金として使ったものならば20年以内に、運転資金として使ったものならば7年以内に返すこと」という決まりが設けられています。
まとめ
事業承継ローンは、事業承継を行うために必要な資金の融資を受けることであり、利用することでまとまった出費を補填できます。しかし、あくまで「ローン」ですので返済が必要なことに変わりありません。事業承継税制で相続税や贈与税の猶予・免除を受けたり、税金対策で自社株の評価を下げたりするなど、他の取り組みをできるだけ行ったうえで事業承継ローンの利用を考えるのがよいでしょう。
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