COLUMNコラム
資金の不安をクリア! 事業承継で使える「融資制度」とは
事業承継を検討・実施する際、資金がネックになる企業は多いものです。事業用資産や自社株を引き継ぐためには資金が必要ですし、事業承継を機に経営革新を進めるなら、投資のための費用もかかってきます。そんな事業承継を支えてくれるのが、日本政策金融公庫をはじめ、諸機関による融資制度です。本記事では事業承継における代表的な融資、日本政策金融公庫による融資について解説します。
目次
事業承継にかかる費用
「多額の費用がかかるから事業承継はできない、廃業しよう」。そうあきらめてしまっている経営者も多いでしょう。実際、日本商工会議所の「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」(2021年)によると、事業承継の障害・課題として最も多かった回答は「後継者への株式譲渡」。全回答のうち、実に3割ほどを占めます。
「後継者への株式譲渡」が課題と回答した人のうち、約7割が「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」、約6割が「後継者に株式買取資金がない」と回答しています。事業承継にかかる費用は、一般的に数百万円〜数千万円ほど。自社株の取得費用に加えて、主に以下の5種類が挙げられます。
①相続税
誰かが亡くなり、亡くなった人の資産が親族などに相続される際、対象となる資産に課されるのが「相続税」です。オーナー経営者が亡くなり、親族が会社の後継者となる場合は、相続人である後継者が相続税を納めます。相続税は累進課税となっており、相続時の取得金額が大きければ大きいほど税率が上がります。
1,000万円以下なら税率は10%、6億円超ならば55%となります。ただし、相続税には基礎控除額があり、取得金額が基礎控除額に満たない場合は相続税の支払いは不要です。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となります。
②贈与税
贈与税とは、贈与人が資産を譲渡したとき、被贈与人が支払う税金のこと。事業承継の場合、後継者が贈与税を支払うこととなります。こちらも累進課税制度が適用され、贈与される額が高ければ高いほど贈与税の額も上がります。
③不動産取得税登録免許税・不動産取得税
不動産の所有権移転にも課税されます。登録免許税は、土地や会社の登記に対して発生する税金のこと。不動産を承継する場合には、登録免許税が課税されます。不動産取得税は、土地・建物を購入したり、土地に建物を建築したりした際に発生する税金のことです。生前贈与を受けると課税されます。
④法人税・消費税
一般的な事業承継では、法人税・消費税ともにかかりません。ただし、以下のようなケースは例外となります。・法人税:事業譲渡において、譲渡価額と譲渡対象となる負債との差額に対して課される・消費税:事業譲渡においては、個々の資産に対して課される
⑤専門家へ支払う費用
専門家に相談する際は、その報酬が必要です。事業承継においては、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、会計士などに相談するケースが多いでしょう。
日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」
事業承継ローンは、大きく分けて「政府系の事業承継ローン」と「一般金融機関の事業承継ローン」の2種類があります。最もよく知られているのは、「政府系の事業承継ローン」の日本政策金融公庫の融資「事業承継・集約・活性化支援資金」でしょう。
この融資の対象と資金の利用方法は以下のとおりです。
1.中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者(候補者を含む)と共に事業承継計画を策定している方
⇨事業承継計画を実施するために必要な設備資金および長期運転資金
2.安定的な経営権の確保等により、事業の承継・集約を行う方
⇨事業承継を行うために必要な設備資金および長期運転資金(事業を承継・集約される方に対する転貸資金を含む)
3.事業の承継・集約を契機に、新たに第二創業(経営多角化、事業転換)または新たな取り組みを図る方
(第二創業または新たな取り組み後、おおむね5年以内の方を含む)
⇨当該事業を行うために必要な設備資金および長期運転資金
4.中小企業経営承継円滑化法に基づき認定を受けた中小企業者の代表者、
認定を受けた個人である中小企業者または認定を受けた事業を営んでいない個人
⇨事業承継を行うために必要な設備資金および長期運転資金であって、中小企業経営承継円滑化法施行規則に定める資金
5.事業承継に際して経営者個人保証の免除等を取引金融機関に申し入れたことを契機に取引金融機関からの資金調達が困難となっている方であって、公庫が貸付けに際して経営者個人保証を免除する方
⇨金融機関との取引状況の変化に伴い必要な長期運転資金
また、審査においては、書類をそろえたり、担当職員の視察を受けたりする必要があります。手間はかかるものの、良い条件で融資が受けられるので、専門家に相談しつつ確実に進めるといいでしょう。
なお、日本政策金融公庫の運営しているサービス「事業承継マッチング支援」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(事業承継で使える「日本政策金融公庫」の支援制度とは?)
一般金融機関の事業承継ローン
先述した通り、政府系ローンに加えて、一般金融機関の事業承継ローンも利用できます。付き合いのある銀行や信用金庫に相談し、融資金額の限度、金利、返済期間を確認してみるといいでしょう。
まとめ
相続税に贈与税、不動産取得税登録免許税、不動産取得税、法人税、消費税、専門家に支払う費用……。事業承継にかかる費用は、数百万円から数千万円と、多額になりえます。前もって承継費用を準備しておくのが理想的ですが、難しい場合もあきらめず、融資制度を活用しましょう。
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