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事業承継における不動産保有の節税効果

事業承継で引き継ぐ経営資源は、「ヒト」「モノ」「カネ」の3つといわれています。「ヒト」とは従業員や取引先など、「モノ」とは事務所といった不動産や設備など、「カネ」とは財産権や株式などです。このなかでも金額の大きさや相続税対策などの観点から特に重要とされるのが、不動産です。

会社で保有する不動産は自社株評価につながる

自社株の評価額は、安定経営を続けているほど高くなるものです。ですから、適切に対策を打っておかないと事業承継の際に後継者へ贈与税や相続税の負担が重くのしかかります。代表的な対策として不動産の保有があります。なぜ不動産を保有することが自社株評価を下げることにつながるのか、その仕組みを解説しましょう。

純資産の評価を下げることができる

一般的に自社株は株式市場で売買することができないため、市場が価格を決めてくれません。そのため、株価の算出は「純資産価額方式」「類似業種比準価額方式」またはその「併用方式」によって行われます。純資産価額方式とは、会社の保有資産から負債を差し引いた純資産を基準に株価を算出する方法です。

類似業種比準価額方式では、事業内容が似ている上場会社の株価を基準にして株価を算出します。そして両方を使用するのが併用方式になります。純資産価額方式が適用される場合、不動産を現金で購入すればそれだけ純資産の評価を下げることがきます。また、融資を受けて資金を調達した場合も借金は負債のことなので下げる効果があります。どちらにしても株価を引き下げることにつながります。

現金を保有しているよりも評価額が減少する

土地の評価額は一般的に路線価を基準とします。そして路線価は、実勢価格の70~80%程度になります。つまり、現金をそのまま保有しているより、土地として持っていたほうが純資産は少ないと見なされ、株価も下げることができます。

相続税対策にも貢献する不動産保有

株価の引き下げとは関係ありませんが、会社で不動産を保有することは相続税対策にも役立ちます。その理由は、「小規模宅地の特例」を利用できるからです。おもに事業承継に関係する小規模宅地の特例の対象となる土地は以下になります。

被相続人等の事業用の土地

被相続人(亡くなった人)が工場や店舗などの事業で使用していた土地は、400㎡部分まで相続税評価額が8割減額されます。

被相続人等の貸付事業用の土地

本業とは別に月極駐車場や賃貸アパートなどを保有している会社も少なくないでしょう。これら貸付事業を行っていた土地は、200㎡まで相続税評価額が5割減額されます。

事業承継に役立つ不動産の活用方法

では、事業承継も見越して不動産を購入する場合、どのような活用方法が有効でしょうか。事務所、工場、店舗、社宅、収益物件など様々な活用方法が考えられますが、いずれの方法でも前述の純資産の評価を下げる効果が期待できます。その中でも特に期待できるのが、収益物件です。たとえば賃貸アパートやマンションを購入すれば、本業を下支えする安定した収益も見込めます。

また、このような賃貸住宅の土地は貸家建付地、建物は貸家とされ、それぞれ住む人(借主)に権利があり、所有者が土地を自由に使えないことから、相続時の評価額がより減額されます。ただし不動産は、購入後3年間は取得時の価格として評価されます。そのため、事業承継を見越した不動産購入の検討は、早めに開始する必要があります。

まとめ

以上のように事業継承において不動産を保有することは、非常に効果的です。ただし、不動産には様々な用途があり、適切に利用しなければ宝の持ち腐れになってしまいます。また、用途によって適用できる特例等も異なります。そのため、不動産の購入を検討する際は、事業継承と不動産に精通した税理士などの専門家とよく相談しながら進めるのが得策でしょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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