COLUMNコラム
事業承継のカギ! 「株価評価」の方法をわかりやすく解説
事業承継においては、自社株の引き継ぎが行われます。非上場の企業の場合は、価格の算定からスタート。株価によって税額が変わってくるため、株価評価を下げるために工夫を凝らす企業も多いものです。本記事では、事業承継における株価評価の方法と、株価を下げる方法を解説します。
目次
自社株の評価方法
非上場企業の株式は、4つのステップで評価方法が決まります。
ステップ①株主の判定
まずは株主の判定からです。「同族株主等」なのか、「同族株主等以外」なのかを判定します。「同族株主等」の場合は、ステップ②の「会社規模の判定」へ。「同族株主等以外」の場合は、評価方法は「配当還元方式」に決定します。
ステップ②会社規模の判定
次に会社規模を判定しましょう。会社規模が5つのうちどれに該当するかによって、評価の際の斟酌率が変動します。
・大会社
・中会社の大
・中会社の中
・中会社の小
・小会社
従業員数が70人以上の場合は「大会社」になります。70人未満の場合は「卸売業」「小売・サービス業」「その他」の業種別に、「取引高基準(売上高)」または「従業員数を加味した総資産基準」で判定します。
まずは「取引高基準(売上高)」から、業種別に見ていきましょう。
【卸売業】
30億円以上:大会社
7億円~30億円:中会社の大
7億円~30億円:中会社の中
2億円~3.5億円:中会社の小
2億円未満:小会社
【小売・サービス業】
20億円以上:大会社
5億円~20億円:中会社の大
2.5億円~5億円:中会社の中
0.6億円~2.5億円:中会社の小
0.6億円~2.5億円:小会社
【その他】
15億円以上:大会社
4億円~15億円:中会社の大
2億円~4億円:中会社の中
0.8億円~2億円:中会社の小
0.8億円未満:小会社
次に、従業員数を加味した総資産基準です。
【大会社】
・総資産価額20億円以上、従業員数36~69人の卸売業
・総資産価額15億円以上、従業員数36~69人の小売・サービス業
・総資産価額15億円以上、従業員数36~69人のその他企業
【中会社の大】
・総資産価額4億円~20億円、従業員数36~69人の卸売業
・総資産価額5億円~15億円、従業員数36~69人の小売・サービス業
・総資産価額5億円~15億円、従業員数36~69人のその他企業
【中会社の中】
・総資産価額2億円~4億円、従業員数21~35人の卸売業
・総資産価額2.5億円~5億円、従業員数21~35人の小売・サービス業
・総資産価額2.5億円~5億円、従業員数21~35人のその他企業
【中会社の小】
・総資産価額0.7億円~2億円、従業員数6~20人の卸売業
・総資産価額0.4億円~2.5億円、従業員数6~20人の小売・サービス業
・総資産価額0.5億円~2.5億円、従業員数6~20人のその他企業
【小会社】
・総資産価額0.7億円未満、従業員数5人以下の卸売業
・総資産価額0.4億円未満、従業員数5人以下の小売・サービス業
・総資産価額0.5億円未満、従業員数5人以下のその他企業
ステップ③特定会社等の判定
特定会社等に該当する場合は、原則として純資産価額方式で評価することになります。
・株式等保有特定会社:総資産額に占める株式等の割合50%以上(帳簿価額ではなく、相続税評価額)
・土地保有特定会社:総資産額に占める土地等の割合を会社規模別に判定(帳簿価額ではなく、相続税評価額)。大会社=70%以上、中会社=90%以上、小会社=業種と総資産価額の規模により、90%以上または70%以上
・その他:開業後3年未満の会社、直前期末の3要素(配当・利益・純資産)がゼロの会社、開業前または休業中の会社、清算中の会社
ステップ④評価方法の決定
いよいよ評価方法の決定です。ステップ③で特例会社に該当しなかった場合は「併用方式」または「純資産価額方式」のうち、低いほうを選びます。特例会社に該当した場合は、「純資産価額方式」になります。また先述した通り、ステップ①で「同族株主等以外」に該当した場合は「配当還元方式」です。
自社株の評価を下げる方法
自社株の評価を下げる方法としては、有効な方法はいくつかあります。まず、役員報酬を引き上げたり、退職金を支給したりする方法です。役員報酬と退職金は損金として計上されるため、会社の利益額減につながります。
もう一つは、株式配当金を低く設定する方法です。特にオーナーが自社株をすべて保有している場合、この方法は最も簡単といえるかもしれません。他に、会社の生命保険に加入したり、純資産を少なくしたり、発行株式数を増やしたりする方法が有効なこともあります。
まとめ
株価評価は、事業承継にかかる価格を左右する、重要なファクターです。とはいえ、自社株の評価方法は複雑です。事業承継の負担を無理なく、かつ確実に軽減するため、専門家に相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
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