COLUMNコラム
約款とどう違う? 事業承継における「定款」のチェックポイント
会社のルールであり、会社設立には欠かせない「定款」。うまく使えば、事業承継や会社運営がスムーズになることをご存じでしょうか。本記事では、約款と定款の違いに加え、事業承継にあたって整えるべきポイントを紹介します。
目次
「約款」と「定款」の違い
「約款」も「定款」も「守らなければならない決まりごと・ルール」という、似た意味の言葉です。ここではまず、約款と定款の違いを解説します。
約款とは
「約款(やっかん)」とは、守らなければならない決まりごと・ルールのうち、契約・条約などで定められている個別の条項のこと。保険や携帯電話の契約の際、この言葉を聞いた人も多いのではないでしょうか。
ひと言でいえば「契約条項」、契約におけるルールだと言えるでしょう。
定款とは
「定款(ていかん)」とは、守らなければならない決まりごと・ルールのうち、会社の最も重要な規則・決まりごとのこと。法人を設立する際に定める必要があります。会社設立時には、公証人役場にて定款の認証を受けなければなりません。会社法で求められている事項が記載されているかをチェックされ、問題なければ認証となります。設立後の運営も定款にのっとって行われ、設立後は適宜変更できます。
つまり、組織を運営するためのルールだと言えるでしょう。その組織の憲法のようなものだと理解するといいかもしれません。
定款をうまく活用すれば、会社法ではカバーできない部分を定め、トラブルを防止することも可能です。
定款の記載事項
定款の記載事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類があります。
・定款の「絶対的記載事項」
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のこと。具体的には以下の6つの項目があり、一つでも欠けていると無効となってしまいます。
①商号
②目的
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
⑤発起人の氏名または名称及び住所
⑥発行可能株式総数
・定款の「相対的記載事項」
相対的記載事項は、必須ではないものの、効力を生じさせるため記載する項目のことです。
具体的には、役員の任期の伸長についての規定や公告の方法などが挙げられます。
・任意的記載事項
任意的記載事項とは、会社が任意で決めた記載事項のこと。株主総会の議長の定めなどがその例です。
事業承継にあたってチェックしたい「定款」のポイント
事業承継をする際、定款に関しては何をチェックしておけばいいのでしょうか。ここではチェックしたいポイントを3つ紹介します。
①相続人等に対する売渡し請求
1つ目の定款のチェックポイントは、相続人等に対する売渡し請求です。
相続人等に対する売渡し請求とは、会社から相続人に対して、株式を売り渡すように請求すること。これによって、会社にとって望ましくない人物が株主になるのを防ぐことができます。特に、相続が「争続」になりそうな場合や、相続人と経営陣が敵対することが予想されるような場合には、ぜひチェックしておきたいポイントです。
なお、売渡請求には株主総会の特別決議が必要です。
②株式譲渡制限
2つ目のチェックポイントは、株式譲渡制限です。
株式譲渡制限は、株式の譲渡を制限すること。これにより、株式が分散したり会社にとって望ましくない人物が株主になったりして、会社の意思決定がスムーズでなくなることを制限できます。会社が非上場であれば、定款に定めれば、株式の譲渡を制限可能です。
株式譲渡制限を行うと、株式譲渡には株主総会や取締役会等の承認が必要になります。
③種類株式の有無
3つ目のチェックポイントは、種類株式の有無です。
種類株式とは、さまざまな制限をつけた株式のこと。定款で定めておけば、制限つきの株式を発行できます。
事業承継でよく活用される種類株式は「議決権制限株式」「拒否権付株式」「全部取得条項付種類株式」の3つ。
議決権制限株式、株主総会での議決権が制限された株式。拒否権付株式は、黄金株とも呼ばれ、重要議案を否決できる権利を持つ株式。全部取得条項付種類株式は、株主総会の特別決議によって、株主の所有する株式すべてを、会社が取得できる株式のことです。
後継者の意思決定や会社運営を妨げる株主をブロックしたり、逆に、後継者の暴走を防いだりすることを目的として、種類株式は用いられます。
まとめ
「定款」は、その会社の憲法のようなものです。会社を設立するにあたっては定款の作成が必須で、うまく使えば会社運営をサポートし、トラブルを防いでくれます。
3つのチェックポイントを活用し、円滑な事業承継を行いましょう。
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