COLUMNコラム

TOP 人事戦略 家業承継で後悔しないためのポイントと注意点
H人事戦略

家業承継で後悔しないためのポイントと注意点

「長く続けてきた家業を子どもに継ぎたい」と思っている経営者は多くいます。しかし、いざ準備を始めようと思っても、何から手をつけたらいいかわからないと悩むケースは珍しくありません。本記事では、家業を承継するうえで必ず押さえておくべき成功ポイントと注意点を解説します。

事業承継計画書を作成する

事業承継計画書とは、現経営者の情報、会社の現状(財政状態)、誰に引き継がせるのか、何を準備するかなど事業承継の内容をまとめた書類のこと。

似たものとして、事業承継計画表がありますが、こちらは会社や現経営者、後継者が事業承継までにどういった変化をしていくのかを(基本的には1年単位で)まとめた表です。

どちらも事業承継を行なうと決めた場合は、早い段階で作成するのが理想的ですが、事業承継計画表に関しては、適時変更しながら進捗を管理するのが一般的です。

事業承継を成功させるためには、まず計画を立てることが重要です。事業承継計画書では、承継時期や後継者の選定基準、事業承継にかかる費用や手続きの概要を明確にしましょう。

「事業承継計画書」を作成することで、以下のようなメリットを得られます。

① 現状を把握でき、中長期的な目標も明確になる
② 現経営者と後継者で、認識をすり合わせられる
③ 従業員や外部からの理解・信頼を得やすくなる

事業承継計画書作成の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「事業承継を成功に導くロードマップ!「事業承継計画書」の作成のコツとは?」

相続対策を講じる

親族内承継では、単に社長交代の手続きだけでなく、株式の移転も行われます。株式承継の方法には、大きく分けて「贈与」「譲渡」「相続」の3つがあり、いずれも税金が発生します。

・贈与……後継者(子ども)に対して「贈与税」がかかる
・譲渡……先代経営者(親)に対して「譲渡所得税」がかかる
・相続……後継者(子ども)に対して「相続税」がかかる

「贈与税」「相続税」「譲渡所得税」のいずれもが、承継する自社株評価に応じて税金が計算されます。自社株式の評価額は、優良な企業であるほど高くなります。

自社株式に対しては「うちの会社は少額だから大丈夫」と思っている経営者も少なくありません。

しかし、油断は禁物です。今、事業承継を検討している世代には、数十年前に少額の資本金で会社を立ち上げた人も多くいます。

ところが、「現在の自社株式の価値が投資額よりもはるかに上回っていること」を知らない経営者が大多数なのです。たとえば、300万円程度の価値だと思っていたのに、承継時に蓋を開けてみたら3億、4億円だったというケースもあります。

自社株対策については以下のような方法があります。

・法人契約の生命保険を利用し、生前に役員退職金を支給する
・不動産などを取得し、時価と相続税評価額の乖離を利用する
・後継者へ生前に贈与する

ちなみに、相続トラブルは他にもあります。例えば、株式以外の相続財産が少なかったことから相続時に株が分散してしまい、株主の不適切な発言が増えた結果、後継者が精神的に追い詰められて、事業を手放すケースです。この場合、以下のような手段を講じ、株式を分散させないことが重要です。

・先代経営者が元気なうちに生前贈与する
・遺言書を作成し、株式を受け継ぐ後継者を明示する
・遺留分減殺請求への対応を講じる
・信託を活用して株式を集中管理する
・種類株式を発行する
・持株会社を設立する

新たな経営体制の構築・整備

後継者という別の人間が経営の中心となる以上、これまでとまったく同じ経営体制でいられるわけではありません。以下のようなポイントを意識し、経営体制の構築・整備を行ないましょう。

①ガバナンス体制の整備

家業承継に伴い、企業のガバナンス体制を整備することが重要です。経営陣の再編成や役員の選任、組織風土の改革などを通じて、効率的かつ透明性の高い経営を目指しましょう。

②経営の透明化

関係者に対して経営状況や承継計画を適切に報告し、信頼を築くことが重要です。また、透明性の高い経営は、投資家や取引先からの評価も向上させる効果があります。

③家族間のコンフリクトの回避

事業承継を機に家族同士の関係性が悪くなるケースは少なくありません。家族間の意思疎通を大切にし、適切な役割分担や責任の明確化を図ることで、コンフリクトを回避しましょう。

④社内外の協力体制の構築

家業承継には、社内外の協力が欠かせません。先代経営者だけでなく、従業員や取引先、関係者との連携を強化し、協力体制を構築しましょう。これにより、家業承継が円滑に進むことが期待できます。

⑤情報漏洩対策

承継の過程で、企業情報や個人情報が漏洩するリスクがあります。情報漏洩によって、これまで築かれてきた自社への信頼が一気に崩れ去ることになるかもしれません。機密情報の管理方法や従業員の教育に力を入れるなど情報漏洩対策を適切に行い、企業の信頼を守ることが重要です。

まとめ

家業承継といっても事業承継であることには変わりなく、さまざまなリスクが存在します。「親族内だから気を遣わなくて大丈夫」などと思わず、本記事で紹介したようなポイントを押さえて適切な準備を進めてください。

FacebookTwitterLine

賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

記事一覧ページへ戻る