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三菱鉛筆、実はアジアや欧米でも大人気 「鉛筆屋さんって大変じゃないの?」6 代目が語る「北極星」

三菱鉛筆は、6代目社長の数原滋彦氏が就任3 年目の2022 年、過去最高の売上高を達成し、2023 年は2年連続で更新しました。就任当初から「サーバント型リーダーシップ」を意識して、主に欧州、北米の販売を伸ばし、さらに筆記具以外の新規事業開拓にも尽力しています。デジタル化で筆記具離れが懸念される中、独高級筆記具「LAMY」を連結子会社化するなど、グローバル企業に変貌を遂げる三菱鉛筆の経営理念に迫りました。

支え、奉仕するリーダーシップとは

三菱鉛筆の売上高は、数原滋彦氏が就任して3 年目の2022 年に過去最高の680 億を超えた。さらに、2023 年12 月期の連結業績では、売上高で前年比8.4%増の748 億100 万円と2期連続で過去最高を更新した。

「社員が頑張ってくれたことに尽きる」と語る数原氏は、就任当社からサーバント型リーダーシップを取り入れています。サーバント型リーダーシップとは、部下に指示や命令をするのではなく、奉仕して目標達成のための行動を促すリーダーシップです。支援型リーダーシップとも呼ばれます。

数原氏は「前社長の就任期間は33 年。社長に成り立ての私には経験も知識も何もなかった」と語り、「社員と一緒に作っていくだけ」という姿勢で、社員とともに戦略や方針を描き、業績向上に結びつけました。

鉛筆よりボールペン、国内よりも海外で売上げ

デジタル化、IT化が進む中、周囲から「鉛筆屋さんって大変じゃないの?」と言われることも多いそうです。実は、鉛筆は三菱鉛筆の全売上げにおいて約5%にしか過ぎません。売上げの約半分を占めるのは、人気商品「JETSTREAM」をはじめとしたボールペンです。

「ただ、やはり全体の売上げの90%を筆記用具が占めている中、それ以外の事業の柱となるものを作って行かなければならない」と数原氏は語ります。その一つが、コロナ禍で誕生したキット付きのオンラインレッスン配信サービス「Lakit(ラキット)」です。

また、海外への輸出も伸ばしています。三菱鉛筆の売上げの半分は海外で、グローバル企業へと変貌を遂げつつあります。海外シェア最大はアジアで、単一国ではアメリカがトップ、伸び率ではヨーロッパが非常に高いといいます。

数原氏は、「去年、はじめて海外の売上げが国内を越えました。もちろん、為替の影響も大きいが、これは今後の戦略としても大きな意味をもつ」と期待を込めます。

すべての人の「ユニーク」をサポートする

三菱鉛筆は、2022 年2 月17 日、創業150 年にあたる2036 年を目標とした「ありたい姿2036(長期ビジョン)」を発表し、それに向けたコーポレートブランドコンセプト(企業理念)を「違いが、美しい」を掲げました。

理念策定にあたり、「書く・描く」という筆記用具のドメイン(※領域)から外に出なければならないという前提で、筆記具の存在意義を社内で議論しました。「同じ文字を100 回書けば100 通りの表現ができる」。書くということは個性の表現であり、自社製品が「表現することに貢献してきた」ことに、数原氏は気付かされたといいます。

また、「生まれながらにすべての人はユニークだ」という考えに基づき、企業価値を「書く・描く」を通じて多くの人の「ユニーク」な表現を応援することだと再定義しました。

今、三菱鉛筆は、筆記具メーカーの枠を超え、一人ひとりの「違い」を美しく表現することをサポートする「世界一の表現革新カンパニー」を目指しています。それは、数原氏の「支える」サーバンド型リーダーシップにも通じています。

全員で北極星を目指して

長期ビジョンで目指す売上げは、現在の約2倍の1500 億円。数原氏は、強気な目標の背景に前社長が残した経営基盤を挙げます。「父が素晴らしい社員と商品、バランスシートを残してくれた。ありがたく受け取り、変えていくところは変えていく」。そして、数原氏は、「北極星」という言葉を使い、会社の将来像を語ります。

「会社の未来は私がつくるのではなく、社員と一緒につくっていくもの。北極星という目標を設定し、それを目指して社員みんながいろいろな道を考えてくれる。コロナ禍でも、苦しい山を社員みんなが苦労して登ってくれたと思う」。

そして、父でもある前社長について「山の登り方まで示してくれた。戦略を非常に精緻にプランニングをする」と振り返ります。ただ、山の登り方はひとつではありません。この変化の激しい環境において、山登りの難易度は高まっており、トップダウンでいけば、山登りのスピードは、トップの能力や指示の範囲に収まってしまいます。

数原氏は「サーバント型リーダーシップでは、社員一人ひとりの力を信頼する。それぞれが何をしているか把握しなくとも、社員みんなが力をだし、すごい勢いで走っている。それが遠心力となり、売上げに結びついている」とし、全社員が北極星という目標に向かって行動できていると手応えを語ります。

数原氏が目指すのは、これから100 年、150 年、300 年と三菱鉛筆を永続的に続けていくこと。「自分は300 年生きられるわけではない。その間のバトンゾーンとして、『未来のために、今、何ができるか』を考えていかなければならない」と見据えています。

三菱鉛筆株式会社

1887年(明治20年)、東京市四谷区内藤新宿1番地にて創業。1901年、逓信省(現 総務省)へ初めての国産鉛筆(局用1号・2号・3号)を納入。1958年、高級鉛筆「ユニ」(当初4H~4B)発売。2020年に数原滋彦氏が6代目代表取締役社長に就任。第32回日本文具大賞2023にて「uni 詰替用」がグランプリを、ほか3商品で2023年度グッドデザイン賞を受賞するなど、受賞歴多数。

【この記事の前段】デジタル化が進んでも「三菱鉛筆」が過去最高売上高を達成した理由 「自分は弱いって知ってますから」老舗の6代目

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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