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「雑なM&Aは、ただの数減らし。日本経済に意味が無い」 近江商人のふるさとから、元銀行員3人が「三方良し」の精神で事業承継に挑む

【第11回放送】SoFun 「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」を是とする近江商人ゆかりの地・滋賀県近江八幡市に2021年、地方銀行を飛び出した元銀マン3人が立ち上げたベンチャー企業がある。「日本を面白くする」という願いを込めた「SoFun」という社名で、後継者難に悩む経営者の思いに応える会社だ。日本の事業承継に新しい流れを作り出す若き起業家たちの挑戦について聞いた。

SoFunのバックグラウンドは地方銀行

──簡単に自己紹介をお願いします。

吉川 代表の吉川友です。

手操 取締役CSOの手操圭介です。

平井 取締役の平井裕章です。

──SoFunは、事業承継をサポートする会社なのでしょうか?

吉川 いいえ、サポートする会社ではありません。一緒に主体的に事業承継を自身が引き受けるという形です。

──お三方は銀行員という同じバックグラウンドをお持ちなんですよね。

平井 私は銀行員時代にファンド運営に携った際、ベンチャーへの出資や、6次産業化の事業体を作って出資・育成などにも携わっていました。規模は小さいですが、ベンチャーキャピタルファンドもしていました。

手操 私はコンサルティング部隊の立ち上げをする中で、事業承継にも400〜500件ぐらい関わっていました。どっぷりです。その後、中小企業支援の人材紹介事業やデジタル化の支援の企画・運営などをしていました。

吉川 私は15年間銀行に務め、現場で支店の渉外係として滋賀・京都・大阪の中小企業の融資業務や事業承継のコンサルティング、M&Aの仲介などを現場でやっていました。

世間にあふれる雑なM&A、感じた違和感

──事業承継の手段の1つとしてM&Aがあります。銀行の現場で実際に見たときにどうでしたか。

吉川 SoFunの起業の原点に関わる部分です。経営者の高齢化が進む中、事業承継の流れが非常に顕著になり、M&Aがポピュラーになってきました。でも、お金が非常に生まれる市場なので、M&Aコンサル会社をはじめ、いろんな会社がどんどんこの市場に参入してきている状況です。

ただ、地方の小さい企業はなかなか相手にされない。お金にならないから後回しにされる現実があります。

小さい企業のポテンシャルや事業価値がないがしろにされている部分を非常に感じています。かつ雑なM&Aが非常に多い。

──どのように雑なのでしょうか。

吉川 M&Aした会社を買ってくれる同業者をリストアップして、とりあえず投げるような、戦略とはほど遠いM&Aが現実に起こっています。M&Aは、終わったあとが一番重要ですが、そこでのびのびと再成長する会社をまったく見たことがないです。

これはただの「数減らし」になっている。日本経済に何か意味あるのかな、というのをずっと疑問に感じていました。

閉塞感ばかりの事業承継で、日本がよくなるわけがない

──日本経済のためには、中小企業のポテンシャルを生かす必要があるということですね。

吉川 事業承継をきっかけにして良い経営者を生み出していければ、企業って絶対良くなるという感覚があります。そうした事業をやるべきだと思っていました。

手操 私は事業承継ばかり関わっていました。親族承継や従業員承継が多かったのですが、発展のためというより、負債や辞められない事業をどう引き継いでいくかといった閉塞感のある事業承継がすごく多かったです。

家業を継いでいくっていうのと、ほぼイコールの話なので、そこでチャレンジしてイノベーションだとか、さらなる発展というようなことが起こるような現場にはあまり思えませんでした。

そうなると経営者が代わらないといけない。人材紹介なども始めてみたのですが、それだけでは難しい。経営権とか所有権も含め、誰か新しい人が継いでいくことをやらないといけないとすごく感じていたところですね。

──事業承継がうまくいかない会社は多くあります。コンサルなどは第三者で、当事者意識を持ちきれない部分もあるのでしょうか。

手操 そこをやり切ろうと思うと、やっぱり「サポートだけ」の立場からでは難しいのではと思いました。

平井 当事者となって、エクイティ(資本)をしっかりと活用しなければ何も物事は変わらないないというのが、すごい強い原体験としてありました。経営者だけでもだめだし、資本だけでもだめなので、そこをセットでやるからこそ初めて意味のあるものになるのだと思います。

──株を持つことで当事者意識も持つことができると考えたわけですね。

平井 そうですね。融資だと銀行とお客さんだったのが、ファンドになったときには、何かパートナーになるっていう表現が近いと思います。

500人の後継者候補から選抜

──SoFunの事業内容について教えてください。

吉川 まず我々は後継者候補を全国から集めてきます。いろんなイベントで募ったり、あと直接応募いただく後継者候補の方も最近がすごく増えています。僕らがメディアに出る機会が増えるにつれて「経営者目指しています」みたいな方とかも出てきています。

もう延べ500名以上はエントリーしてもらいました。その500人の中から選抜をして今10数名と一緒に活動をしています。

──手を挙げる方はどのような方が多いのでしょうか。

平井 30代から40代のUターンを希望される方がボリュームゾーンですね。今、東京・大阪の会社で部長や課長の職にある方が、もっと身近なところで自分の力を生かし、社会的なポジティブなインパクトを与えたいという方が、一番ボリュームゾーンで集まっていただいています

吉川 あとは、承継に困っている企業から相談が来るパターンです。一緒に投資検討をして、あとは我々と後継者候補で一緒に事業プランを描いたりします。

通常のM&Aだと、急に相手がどんって決まって後継者が誰なのかも分からない状態ですが、我々は入口から後継者候補を据えていくので、M&Aじゃなくて顔が見える事業承継です。そういう感じのことを望むオーナーさんも結構いらっしゃいます。それは、数多く生まれているM&Aコンサルとは全然違うわけです。

【SoFun株式会社 会社紹介】

3人の地方銀行出身者が、「中小企業が再び輝く会社を作り、日本をおもしろくする」というビジョンを掲げて創業した、中小・零細企業を対象に第三者事業承継を支援する企業。後継者候補を発掘・育成するだけではなく、事業承継型投資を行ってチーム型経営を通して承継先企業の成長をサポートする。新しく承継した経営者によって事業成長が加速させ、事業変革によって経営再生を実現している。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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