COLUMNコラム
中小企業の困りごとを解決! 事業承継の負担を減らす「円滑化法」とは?
特に中小企業においては、事業承継にはさまざまな悩みがつきまといます。特に大きな悩みとなるのは、相続税や贈与税、自社株式取得のための資金でしょう。そんな企業のためにつくられたのが「経営承継円滑化法」です。本記事では、その概要を解説します。
目次
経営承継円滑化法とは
経営承継円滑化法は、正式名称を「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といい、その名のとおり、日本の中小企業の事業承継を円滑なものにするためにつくられた法律です。2008年10月に施行され、その後、複数回にわたって改正されています。中小企業の事業承継には、さまざまな困難が伴います。
そもそも後継者が見つからず、廃業に追い込まれる企業も多いほか、経営者が突然亡くなり、事業承継の準備や対策ができていないケースでは大変な事態に発展することも。相続の発生に伴い、遺留分によって自社株式が分散してしまったり、心づもりもなく準備もしていない人が急遽後継者として会社を経営しなければならなくなったり、後継者が多額の税金を負担しなければならなかったりするのです。
そうした事態を防ぐために、経営承継円滑化法では3つの特例が設けられました。
1.遺留分に関する民法の特例:遺留分減殺請求によって自社株式を後継者に集中させることができます。
2.金融支援制度:税金の支払いや、分散してしまった自社株式の買い取りなどのための資金調達を支援する制度です。
3.事業承継税制:相続税・贈与税の納税猶予が受けられます。
それぞれについて見ていきましょう。
遺留分に関する民法の特例
遺留分に関する民法の特例とは、遺留分で「揉める」リスクを軽減する特例のこと。相続において、民法では「遺留分」という権利があることをご存じでしょうか。一定範囲の相続人であれば、遺言にかかわらず、遺産をもらえる権利のことです。遺留分を侵害された相続人は、侵害された分の金銭を請求する権利があります(遺留分侵害額請求権)。
ただし遺留分によって、承継後の経営が立ち行かなくなることがあります。たとえば中小企業において、経営者が株主となっているケース。この場合、自社株式や土地が後継者に渡らなければ、経営はうまく継続できないでしょう。とはいえ、遺留分がある以上、後継者だけに財産が相続させることもできない――。そんなときに使えるのが「除外合意」です。除外合意とは、後継者に贈与された自社株式などの価額を、遺留分を算定する際の価額から外すことをいいます。これは先代の生前に、後継者と推定相続人全員で同意することによって成されます。
「固定合意」についても知っておきましょう。固定合意とは、遺留分算定時、自社株式の価額を合意時の時価に固定することです。「除外合意」と「固定合意」は組み合わせることも可能で、経済産業大臣の確認の上、家庭裁判所の許可を受けることで有効となります。
金融支援制度
中小企業が事業承継するにあたっては、分散した自社株式の買い取りや、相続税の支払い、引き継いだ企業の運転資金など、多額のコストがかかることがあります。
そこで、中小企業の負担を軽減すべく、経営承継円滑法では、都道府県知事の認定を受けた会社または個人に対して以下の特例措置をとっています。
1.中小企業信用保険法の特例:金融機関から資金調達しやすくするために、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が設けられる特例。
2.日本政策金融公庫法等の特例:会社の代表者または事業を営んでいない個人でも、日本政策金融公庫などからの制度融資が利用できる制度。
金融支援を希望する場合は、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定と、金融機関や信用保証協会による審査を受ける必要があります。
事業承継税制
事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、先代経営者から自社株式や事業用資産を引き継ぐときに発生する相続税や贈与税の負担が猶予、あるいは免除される制度のこと。
事業承継税制の適用を希望する企業は、次の4つの要件を満たす必要があります。それぞれ確認してみましょう。
・会社の要件(承継法上の中小企業であること、非上場企業であることなど)
・先代経営者の要件(会社の代表権を有していたこと、承継の直前に一族で50%超の議決権を有していたことなど)
・後継者の要件(会社の代表者であること、後継者一族において50%を超える議決権を保有していることなど)
・その他の要件(納税猶予を受ける税額および利子税額に見合う担保を税務署に提供することなど)
以上の要件を満たした上で、2024年(令和6年)3月31日までに特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出して認定書を受領する必要があります。認定を受けたら、2027年までに承継を行わなければなりません。
まとめ
悩める企業を救う「経営承継円滑化法」。事業承継における負担を減らしたいなら、チェックしておいて損はありません。いずれにせよ、適用を受けるには手続きが必要になります。プロに相談し、適用条件を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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