COLUMNコラム
事業承継ファンドとは? 仕組み、種類、選び方を紹介!
事業承継ファンドは、「売却益を得られる」「後継者問題を解消できる」「経営支援を受けられる」「会社の理念や文化を継承できる」といったメリットがあることから、近年中小企業の事業承継で注目されている選択肢です。本記事では、事業承継ファンドの仕組み、種類、選び方について解説します。
目次
事業承継ファンドとは?
事業承継ファンドとは、後継者問題や経営悪化などの課題を持つ中小企業を対象に、事業承継のサポートを行う投資ファンドのこと。大まかにいうと、以下のビジネスモデルで利益を得ています。
1.投資家から広くお金を集める
2.後継者不在や経営状況の悪化といった問題を抱える中小企業の株式を買収し、経営権を取得
3.経営再建が完了し、企業価値が高まった時点で株式を売却、その利益を投資家に再分配
事業承継ファンドの目的は、「企業価値を上げて株式を高値売却する」こと。そのために、後継者育成や後継者探しのサポート、あるいはコンサルタントを派遣した経営改善など、対象となる中小企業の株価を上げるためのさまざまな施策を講じます。
これまで事業承継ファンドの投資先は、ベンチャーやスタートアップなどの高い成長性を見込める企業が大半でした。しかし昨今では、後継者不在などの理由で「安定的に成長が見込まれるものの廃業せざるを得ない」といった中小企業でも、事業承継ファンドを活用するケースが増えています。
事業承継ファンドを活用するメリット・デメリット
事業承継ファンドを活用するメリットとデメリットは以下が挙げられます。
【メリット】
1.売却益を得られる
2.後継者問題を解消できる
3.経営支援を受けられる
4.会社の理念や文化を継承できる
【デメリット】
1.ファンド選びを慎重に行う必要がある
2.そもそも支援を受けられない可能性がある
事業承継ファンド活用のメリット・デメリットはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
(「事業承継で「ファンド活用」すべき? メリット・デメリットを徹底考察!」)
M&Aとの違い
事業承継ファンドと聞いて「M&Aと何が違うの?」と思った人もいるかもしれません。事業承継ファンドとM&Aの大きな違いは、その「目的」です。
前述したように、事業承継ファンドの目的は「対象企業の価値向上による株式売却」です。
一方でM&Aの場合、買い手企業の目的は「対象企業の価値向上」だけでなく、事業の多角化・弱点強化、技術力向上、事業規模・商圏の拡大など多岐にわたります。
このように、事業承継ファンドもM&Aも目的が異なるため、「どちらが優れている」と一概にいえません。自社の状況に適したほうを選ぶことが重要です。
事業承継ファンドの種類
事業承継ファンドは現在、さまざまな種類が存在します。事業承継ファンドによって、出資対象とする企業規模や支援内容、審査ハードルなどに違いがありますので注意しましょう。
①中小企業基盤整備機構
経済産業省傘下の独立行政法人である中小機構(中小企業基盤整備機構)は、中小企業の相談先としては最も一般的です。民間企業よりも公的な観点からのアドバイスを受けることができ、事業承継だけでなく、中小企業向けのファンド形成・支援など幅広く支援を行っています。
②日本投資ファンド
日本投資ファンドは、M&A仲介の日本M&Aセンターと日本政策投資銀行が共同設立した事業承継ファンドです。公的要素が合わさったファンドのため、審査の基準は比較的低い傾向があります。豊富な事業承継実績とノウハウを持っていることと、全国の地方銀行と連携し、地域密着型の支援を実現していることが強みです。
③SBI地域事業承継ファンド
SBI地域事業承継ファンドは、2019年に設立されたSBIホールディングスの子会社であるSBI地域事業承継投資株式会社が運営しています。特徴は「小規模な企業にも投資を行う」こと。地域創生と事業承継問題の解決を目指し、「後継者問題」を抱えている中小企業に投資することを目的としています。
事業承継ファンドを選ぶポイント
事業承継ファンドを選ぶ際のポイント・注意点は主に以下の3つです。
①過去の「実績」を確認する
事業承継ファンドにはそれぞれ得意分野や専門領域があります。過去の実績を調べて、自分と似た状況の案件をどれくらい経験したのかを確認することが大切です。
②「専門家」に相談する
自身で調べるといっても、事業承継は簡単に失敗できないことなので「本当にこのファンドでよいのだろうか?」と不安を抱くこともあると思います。
そんなときはM&A仲介会社、税理士や公認会計士、弁護士などの専門家に相談し、そのファンドを選ぶべきか意見を聞くのも有効です。
③「担当者との相性」で判断する
事業承継の手法は、1社として完全に同じではありません。そのためファンドを活用する際も、担当者の知識、経験、人間性などによって結果が大きく変わります。担当者との相性や信頼度もファンド選びの基準にしましょう。
④「提案内容」で判断する
事業承継ファンドが提案する事業計画、支援内容は、ファンドごとに異なります。このとき短期的な視点で利益を求めるファンドだと、承継後の企業価値向上にフォーカスしていない可能性もあるので注意が必要です。長期的な視点で、事業の存続や成長を考えているかを見極めましょう。
まとめ
事業承継ファンドを活用することで、後継者不在であっても事業承継することが可能となります。メリット・デメリットを十分理解したうえで、自社に適したファンドを選ぶようにしましょう。
SHARE
記事一覧ページへ戻る