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事業承継ではどんな「スキーム」があるのか? メリット・注意点を解説!

事業承継を成功させるには、各スキームの種類や特徴を理解したうえで、適切なものを選ぶことが大切です。従来、中小企業の大半では「親族内承継」が大半でしたが、最近では従業員への事業承継、投資ファンドの活用、会社分割・株式移転などスキームの幅が広がっています。本記事では、事業承継スキームの種類、それぞれのメリットと注意点を解説します。

事業承継スキームとは?

かつては、中小企業の事業承継というと、子どもや兄弟などの親族を後継者にするのが一般的でした。

しかし後継者不足問題により、昨今は親族以外の事業承継が増え、事業承継スキームも多種多様になっています(※スキームとは「計画性を伴う枠組み(仕組み)」のこと)。

例としては、以下が挙げられます。

それぞれの特徴やメリットを把握し、目的や要望に最適な事業承継スキームを選択することが重要です。

事業承継スキームの種類とメリット・注意点

事業承継スキームは大きく以下の6つに分かれます。

1.親族内承継
2.親族外(従業員への)承継 
3.M&Aを活用した承継 
4.持ち株会社・資産管理会社への承継 
5.事業承継ファンドを活用した承継 
6.信託を活用した承継

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①親族内承継

日本の中小企業でよく見られる、事業を配偶者、子、孫、甥、姪などに承継させる方法のこと。従業員や取引先、顧客を納得させやすいのは、親族承継の大きなメリットでしょう。

また、親族内に後継者を見つけておけば、従業員や第三者から後継者を選ぶ必要がなく、後継者育成のための期間を十分に確保できます。

他にも、相続や贈与、譲渡の制度を活用し、現経営者が所有している株式や事業用資産を後継者に取得させることが可能であるといったメリットがあります。

一方、「家族や親族に承継してほしい」という思いが先に立ってしまうと、候補者が経営者に適しているのか、冷静にジャッジするのは難くなります。

また、親族内に後継者候補が複数人いる場合、トラブルに発展して社内で派閥が生まれてしまうリスクもあります。

親族内承継のメリット・デメリット、具体的な手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。

②親族外(従業員への)承継

代表的な親族外承継は、自社の役員や従業員に承継させる方法です。

自社の方針や理念、事業内容などを十分理解しており、現経営者との信頼関係が築けている人材に引き継げるため、円滑な承継を実現しやすいのが特徴です。

また、顧客や取引先、従業員の立場に立ってみると、第三者に承継するより、従業員に承継するほうが納得しやすいもの。周囲からの理解を得られると、その後の事業展開も安心です。

一方、一従業員として給与をもらっていた後継者に資金力がないと、株式買取が難しくなる可能性があります。

また、現経営者が従業員を後継者に指名することで、親族から難色を示されることがあります。特にこれまで世襲制だった企業においては、大きな論争が巻き起こることも珍しくありません。

従業員への事業承継におけるメリット・デメリット、具体的な手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「「従業員」への事業承継はこれでOK!メリット・デメリットと手順を紹介」

③M&Aを活用した承継  

親族や従業員に後継者が見当たらない場合でも、M&Aによって株式・事業を第三者に譲渡することで、事業を継続させることができます。

また、後継者候補の幅が広いからこそ、経営者の方針や理念に強く共感する人材に承継してもらえることも、親族外承継のメリットです。

ただし、特に外部の人材を後継者にする場合、後継者の人格や素質、スキルの見極めには時間がかかるでしょう。また、自分の議決権比率が下がることを嫌がる親族内株主の反発が予想されることもデメリットといえます。

M&Aによる事業承継におけるメリット・デメリット、具体的な手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「後継者不在を解決!「親族外承継」のメリット・デメリットと手順」

④持ち株会社・資産管理会社への承継  

事業承継のために持株会社や資産管理会社を活用するケースもあります。

持株会社とは、子会社の支配を目的として、傘下にある会社の株式を保有する会社のこと。「ホールディングスカンパニー」とも呼ばれます。

一方、資産管理会社とは「会社の資産(土地や建物、設備等)を管理する目的で設立する会社」のことです。

持ち株会社・資産管理会社を活用した事業承継スキームでは、「株式交換」または「株式移転」が用いられます。

持株会社・資産管理会社の場合は、贈与税・相続税が課せられる心配がなく節税効果が高いというメリットがありますが、後継者は設立費、維持費の負担が必要で、会社を設立するため手間もかかることがデメリットといえます。

持ち株会社、株式交換、株式移転についてはこちらの記事でメリット・デメリットなどを解説しています。
「節税効果も期待! 持株会社を活用した事業承継のメリットとは?」
「資金を抑えられる! 事業承継時の「株式交換」のメリット」
「コストを抑える! 事業承継における「株式移転」のメリットと手続きとは?」

⑤事業承継ファンドを活用した承継  

事業承継ファンドとは、後継者問題や経営悪化などの課題を持つ中小企業を対象に、事業承継のサポートを行なう投資ファンドのこと。

後継者問題を解消できるだけでなく、「売却益を得られる」「経営支援を受けられる」「会社の理念や文化を継承できる」といったメリットがある一方、ファンド選びを慎重に行なう必要がありますし、そもそも支援を受けられない可能性があるので注意が必要です。

事業承継ファンドのメリット・デメリットについては、こちらの記事でお読みいただけます。
「事業承継で「ファンド活用」すべき?  メリット・デメリットを徹底考察!」

⑥信託を活用した承継

事業承継信託とは、経営者が後継者へ円滑な事業承継を行なうために、信託銀行に財産管理などを信託すること。

事業承継信託には、「遺言代用信託」「他益信託」「受益者連続信託」の3種類があります。

メリットとしては、経営に空白期間ができないこと、信託した財産に税金がかからないこと、事業承継の手続きをスムーズに進められることが挙げられます。

デメリットには、「遺留分減殺請求への対処が必要な場合がある」「受託者が決まらない場合がある」があります。

事業承継信託の種類や使用時の注意点については、こちらの記事をご一読ください。

まとめ

中小企業における事業承継スキームは、実に多種多様です。「後継者がいないから……」といった理由で事業承継を諦める会社も多くありますが、こうした選択肢を知っていたら、もしかしたら結果は変わっていたかもしれません。各スキームの特徴をよく理解し、自社・自身に合った方法を選びましょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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