COLUMNコラム
後継者不足の現状は?【4つの調査結果まとめ】
今や日本の社会問題となっている、中小企業の後継者不足。そのような状況に危機感を抱いた中小企業庁は、事業承継税制の特例措置を設けるなどして対策しているものの、一朝一夕に事態が改善するようなものではありません。本記事では、日本における後継者不足の現状について解説します。
目次
後継者不足の現状
後継者不足とは、少子高齢化などに伴い、企業を継承する人が不足している状況のこと。
かつて日本の中小企業では、親族内承継(子や孫、子の配偶者をはじめとする親族に会社を引き継ぐこと)が一般的でした。ところが、少子高齢化や地方の過疎、女性の社会進出、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響などにより、後継者を見つけられない企業が増えています。
手を尽くしても後継者が見つからず、廃業せざるをえない中小企業も多くあります。
日本政策金融公庫の調査(2020年)
ここからは、データをもとに後継者不足の現状を確認してみましょう。
日本政策金融公庫の調査(2020年)によると、後継者が決まっていて、後継者本人も同意している「決定企業」はわずか12.5%。後継者が決まっていない「未定企業」は22.0%、「廃業予定企業」は52.6%、「時期尚早企業」が12.9%という結果でした。
「未定企業」は「事業承継の意向はあるが、後継者が決まっていない企業」と定義されています。その内訳は「後継者にしたい人はいるが本人が承諾していない」が5.1%、「後継者にしたい人はいるが本人がまだ若い」が4.6%、「後継者の候補が複数おり誰を選ぶかまだ決めかねている」が2.7%、「現在後継者を探している」が7.6%、その他が2.0%でした。
(「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」)
帝国データバンクの調査(2021年)
次に、株式会社帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査」(2021年)を見ていきます。
この調査では、対象企業およそ26万6000社のうち、後継者が「いない」または「未定」と答えた企業は16万社でした。全国の企業のうち、約60%が後継者不在に陥っていることがわかります。
世代別の調査結果も見てみましょう。70代の経営者の場合は37.0%、80代以上の経営者で29.4%が後継者不在と回答しています。少し体力も衰え、本当ならばすぐにでも事業承継したい経営者の多くが後継者不足に悩んでいるのです。
東京商工リサーチの調査(2022年)
東京商工リサーチのデータ(2022年)によると、2021年の社長の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)でした。調査がスタートした2009年以降、最高齢となっています。
また、社長の高齢化に伴って、業績は悪化傾向にあります。
直近決算で減収企業は、経営者の年齢が60代の企業では57.6%、70代以上の企業では56.8%でした。赤字企業の割合に関しても、経営者の年齢が70代以上の企業で24.0%と最も高く、60代の企業で23.2%となっています。
東京商工リサーチでは、その要因を次のように分析しています。
高齢の社長は、一般的に進取の取り組みが弱く、成功体験に捉われやすい。また、長期ビジョンを描きにくく、設備投資や経営改善に消極的になる傾向がある。この結果、事業承継や後継者育成も遅れ、事業発展の芽を自ら失うケースも少なくない。
なお、2021年に「休廃業・解散」した企業の経営者の平均年齢は71.00歳(前年70.23歳)。2年連続で70代となっています。
「生存企業」の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)で、「生存企業」と「休廃業・解散企業」との年齢差は8.23歳(前年7.74歳)へと、拡大した結果となりました。
続いて、都道府県別のデータも見てみましょう。
経営者の平均年齢が最も高かったのは秋田県(64.91歳)でした。前年の64.13歳より0.78歳上昇し、調査を開始した2009年以降、初のトップとなっています。
2位以降は次のようになっています。
・高知県64.88歳(前年64.25歳)
・長崎県64.19歳(同63.33歳)
・山形県64.13歳(同63.67歳)
・岩手県64.10歳(同63.70歳)
最年少は広島県(前年61.23歳)で、3年連続の最年少となっています。総務省の「65歳以上人口比率」(2021年)によると、秋田県は38.1%(全国1位)、高知県は35.9%(同2位)。いずれも高齢化が顕著な県であることがわかります。
(「2021年「全国社長の年齢」調査」)
東京商工リサーチの調査(2023年)
もう一つ、東京商工リサーチの調査結果を見てみましょう。
2023年の調査では、2022年(1-12月)の全国の倒産件数(負債総額1,000万円以上)は、6428件と、前年比6.6%増となりました。2019年(8383件)以来、3年ぶりに前年を上回っています。
そのうち新型コロナウイルスに関連した倒産は2290件(前年比36.7%増)で、前年(1674件)の1.3倍に増加しました。
人手不足に関連した倒産のうち、「後継者難」を原因としたものは422件(前年381件)発生しています。
(「全国企業倒産状況」)
まとめ
後継者不足が加速し、廃業が増加する中小企業。廃業してしまえば、従業員が職を失うだけでなく、それまで蓄積してきた知識やスキル、技術なども失われてしまいます。
そうした事態に陥らないよう、早期に取り組みをスタートさせましょう。まずは専門家に相談しながら今後の計画を検討しつつ、後継者を探し始めるのがおすすめです。
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