COLUMNコラム
事業承継での相続税が免除になる!事業承継税制の要件とメリット・デメリットについて解説
事業承継を検討されているオーナーの中で、贈与税や相続税など税負担を懸念している方は多いのではないでしょうか。2018年の事業承継税制改正により、優遇措置が拡大した「特例措置」が開始されました。この特例措置は、10年間の時限措置ではありますが、節税対策効果が大きく、事業承継を行う際に利用したい支援です。この記事では、事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説します。
目次
事業承継税制とは
事業承継税制は、後継者である受贈者や相続人などが、経営承継円滑化法の認定を受けた会社や、個人事業の後継者が取得した一定の財産に対して、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。会社の株式などを対象とした「法人版事業承継税制」と個人事業主の事業用資産を対象とした「個人版事業承継税制」があります。今回は、法人版事業承継税制について紹介します。
事業承継税制のメリット
事業承継税制のメリットを3つ解説します。
1)後継者の負担が軽減する
通常、自社株式の相続や贈与には多額の相続税や贈与税がかかり、後継者には資金準備などの負担が生じます。しかし、事業承継税制を活用することで、猶予または免除を受けることが可能です。これにより、納税資金の準備が不要となり、後継者の資金調達の負担が軽減されます。後継者にとっては大きなメリットとなるでしょう。
2)株価対策が不要になる
事業承継の税金対策として、退職金の支給や役員報酬の引き上げなどにより損金を算入して利益圧縮を行い、株価を引き下げる方法があります。しかし、これらの対策は税務署によって租税回避行為と判断される場合があり、結果的に資金繰りの悪化や会社の評価低下のリスクがあります。一方、事業承継税制を活用すれば、リスクを伴わずに節税が可能です。
3)納税資金を事業資金にできる
事業承継税制を活用すれば、納税予定であった納税資金を事業に回せるため、事業拡大に繋げることもできます。
事業承継税制のデメリット
続いて、事業承継税制のデメリットを3つ解説します。
1)申請手続きが複雑
事業承継税制は手続きが複雑な上に、期日を過ぎると猶予が取り消されてしまいます。税理士などの専門家に依頼する方法が一般的です。
2)取り消された場合、猶予されている税金に上乗せして利息を支払う必要がある
仮に取消事由により、猶予がされなくなれば、猶予されていた納税額に上乗せして利子税が加えられた価額を支払う必要があります。
3)要件が細かい
先代経営者、後継者、企業、守るべき事項など、満たす必要がある要件が複数あります。要件の詳細は後述します。
相続税が免除となる仕組み
猶予だけでなく、免除になることもあります。免除になる要件は以下のとおりです。
・後継者(受贈者)又は経営者(贈与者)が死亡した場合
・後継者(相続人)が死亡した場合
・後継者が、次の後継者に対して事業承継税制を利用して贈与をした場合
事業承継税制の4つの要件
事業承継税制を活用し、贈与税や相続税の猶予または免除されるには、細かな要件を満たす必要があります。要件は主に、「先代経営者」「後継者」「企業」「5年間守るべき要件」の4つです。ここでは各要件を解説します。
先代経営者の要件
先代経営者の要件は、以下のとおりです。
・会社の代表権を持っていたこと
・相続または贈与の直前に、経営者親族などで総議決権数の50%以上を所有しており、さらにその中で筆頭株主であったこと
・贈与時に、会社の代表者の職務を退任していること
後継者の要件
後継者の主な要件は、以下のとおりです。会社の後継者は3人までになります。
・相続または贈与時に、後継者親族などで総議決権数の50%以上を所有し、さらにその中で筆頭株主であること
・相続から5ヶ月以内に代表者となっていること
・贈与時に、会社の代表権を持っていること
・贈与時に、18歳以上であること
・贈与の日までに、3年以上会社の役員であること
・贈与時に、後継者が2人または3人の場合は総議決権数の10%以上の議決権を保有すること
企業の要件
対象となる企業の主な要件は、以下のとおりです。
・非上場株式会社であること
・中小企業者であること
・風俗営業会社ではないこと
・不動産を管理する会社、いわゆる資産管理会社ではないこと
・従業員が1名以上いること
・総収入金額がゼロではないこと
5年間守るべき要件
事業承継税制が適用されるには申告してから、以下のように5年間守らなければならない要件があります。
1)後継者が代表であり続けること
2)5年間の平均従業員数が承継時の8割を維持すること
※雇用が5年間の平均で8割を満たせなかった場合は、認定経営革新等支援機関が確認し、指導・助言を受けた場合は適用継続となります
3)後継者が筆頭株主であること
4)上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
5)後継者が猶予対象株式を継続保有していること
6)資産管理会社に該当しないこと
7)毎年、都道府県庁へ「年次報告書」を、税務署へ「届出書」を提出すること
まとめ
この記事では、事業承継税制のメリット・デメリットについて解説しました。事業承継税制を利用するには、早めの対応が重要です。少額の資本金で会社を設立したからといって、自社評価を低く見積もることは避けるべきです。実際には評価額が高くなり、それに応じた税額負担が増えるケースも考えられます。そのため、会社を売却や譲渡、承継を検討している場合は、早めに専門家に相談し、サポートを受けることをおすすめします。
なお過去記事にて、事業承継の詳細を解説しているのでご参照ください。
(「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)
SHARE
記事一覧ページへ戻る