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中小企業の事業承継を成功させるために重要なこと  後継者は親族、それとも従業員?事業承継の現状や種類について解説

会社を長く存続させるためには事業承継が必要とされますが、中小企業の事業承継には、さまざまな問題がつきまといます。

今回は、中小企業経営者のための事業承継対策や、中小企業における事業承継の現状、事業承継の種類、失敗しないためにはどうしたらいいかについて解説します。

◆中小企業における事業承継の現状

中小企業の事業承継は、近年、後継者不足や経営者の大量引退などを理由に、なかなか進行が見られませんでした。

しかし、2023年に中小企業庁が発表した「2023年版 中小企業白書・小規模白書 概要案[知野1] 」では、経営者年齢の多い層が分散してきたことにより、事業承継が進んでいる可能性があることが示唆されています。

また、事業承継時の経営者の年齢が若い企業ほど事業の再構築に取り組んでいる傾向にあり、事業の再構築は売上高の増加に寄与することも分かってきています。

とはいえ、日本が超高齢化社会に突入することで不安視される「2025年問題」の中には、経営者の高齢化や後継者不足も含まれており、引き続き安心できない状況であることには違いありません。

◆中小企業の事業承継対策

中小企業の事業承継を実現するためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。

事業承継の開始前に行うべき3つの対策について解説します。

●会社の現状を把握する

事業承継を円滑に進めるために、自社の状況を把握しておくことは最も重要です。後継者候補の有無や会社の資産だけではなく、経営者自身が所有する個人名義の土地や建物、個人保証などについても把握しておくことで、事業承継時のトラブル回避につながります。

また、把握した会社の現状や今後の方向性などについては、必ず後継者と共有するようにしましょう。

後継者を選出する

後継者の選出方法は、親族の中から選ぶ方法と、従業員や役員の中から選ぶ方法の主に2つあります。

親から子など、親族内から後継者を指名する方法は一般的であるため、周囲から受け入れてもらいやすいという利点がある反面、関係が近いからこそ互いに遠慮がなく、親族間の関係性を壊してしまう可能性があることには注意しましょう。

一方、従業員や役員は、事業の内容や経営方針をある程度理解しているため、事業承継を問題なく進められる可能性が高いと言えます。

しかし、経営者が負債を抱えている場合には、後継者として指名しても断られる恐れがあることは把握しておきましょう。

●事業承継の計画書を作成する

事業承継計画書とは、中長期の経営計画と、事業承継の時期や課題、具体的な対策案をまとめたものを指します。経営と事業承継の双方を包括しているため、自社の経営戦略の策定にも役立つという利点があります。「いつ」「何をするべきか」など、具体的な内容を記載して作成するようにしましょう。

◆中小企業の事業承継の種類

ここからは、中小企業の事業承継方法について、2つ紹介します。

●親族内承継

親族内承継とは、子や孫など経営者の親族へと事業を引き継ぐことを言います。経営者の親族となると、従業員や取引先からも受け入れられやすい一方で、必ずしも親族内に後継者にふさわしい人材がいるとは限りません。

また、親族内のトラブルに発展しやすい点にも注意が必要です。

●社内承継

社内承継では、社内の役員や従業員の中から後継者を選出し、会社を引き継ぎます。仕事ぶりをあらかじめ把握したうえで後継者を選べるので、実務上の引き継ぎが楽であるだけでなく、経営者側も安心して事業承継を行えるというメリットがあります。

しかし、後継者に選ばれなかった従業員のモチベーションを下げてしまう恐れがあり、離職を招いてしまう可能性があることも覚えておきましょう。

◆中小企業の事業承継で失敗しないためのポイント

中小企業の事業承継をスムーズに進めるためには、以下の3つのポイントを押さえるようにしましょう。

●事業承継のための準備は入念に行う

事業承継で失敗しないためには、早い段階から入念な準備を行う必要があります。経営者が健康なうちは、事業承継はまだ早いと思ってしまいがちですが、事業承継に数年の期間を要する場合もあります。いざというときに、廃業するしか手段がないというような事態に陥らないよう、後継者探しや計画の策定を前もって進めておきましょう。

●事業承継について社内や親族に周知する

事業承継の計画が定まれば、社内外の関係者全員に周知しましょう。社員や取引先から理解を得られなければ、離職や離反を招いてしまう恐れがあります。また、親族内承継の場合は、親族間トラブルを回避するためにも、後継者以外の親族に周知する必要があります。

ただし、適切でないタイミングで知られてしまうと、混乱を招いてしまうので、事業承継の計画をある程度策定してから周知することをおすすめします。

●事業承継に伴う資金対策を行う

事業承継では、親族内承継、社内承継のどちらの方法でも、税金が発生します。

後継者に財産がほとんどない場合には、課された税金を支払えず、事業承継を計画どおりに進めることが難しくなるため、対策を練っておく必要があります。

事業承継税制では、一定の要件を満たせば、納税義務が猶予・免除されるので、活用を検討することをおすすめします。

他にも、支援機関、専門家に相談するなどして、資金対策を行うようにしましょう。

◆まとめ

本記事では、中小企業における事業承継の課題や対策について解説しました。

後継者や資金不足などの問題により、倒産に追い込まれている中小企業も多い中で、事業承継を成功させるためには、徹底した準備を早めに行うことが何よりも重要です。専門家の力を借りるなどして、準備や対策を万全に行うようにしましょう。

過去記事では、後継者問題の背景や解決方法についても解説しているので、ぜひご参照ください。

事業承継、後継者不足の背景とその解決方法とは?」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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