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事業承継にも活用可!「株式併合」が行われるケースとその手続き

「スクイーズアウト」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。スクイーズアウトは、少数株主から強制的に株式を買い取ることで、会社としての意思決定を円滑にする手法を意味します。本記事では、株式併合を利用したスクイーズアウトについて紹介します。

株式併合とは

「株式併合」とは、複数の株式を1つの株式にまとめて、株式の数を絞ることをいいます。具体的には、3株を1株に併合するなどといったものです。

株式併合によって発行済株式の総数を減らせるため、資本金額などを変えることなく、1株あたりの経済的価値を引き上げたり、株券発行費用や株主管理費用などといったコストを削減したりすることができます。

株式併合を利用したスクイーズアウトとは

スクイーズアウトは「締め出し」と訳され、少数株主を排除することをいいます。少数株主から、相手の同意なしにその地位を奪い取り、意思決定に口出しができないようにするのです。

具体的には、株式併合を行うことで、少数株主を1株未満の株主にし、その株を会社や株主が強制的に買い取ってしまうのです。

なぜスクイーズアウトが必要なのでしょうか。

株主総会の決議では、出席株主の過半数または3分の2以上の合意が必要となります。しかし、少数株主から反対意見が出されると、迅速な意思決定が阻害されたり、会社の目指すべき方向から逸れてしまったりするリスクがあります。そこで、少数株主の株式を取得して締め出してしまえば、反対意見を排除し、迅速かつスムーズに目指すべき方向へと進んでいけるのです。

スクイーズアウトがなされるケース

次に、スクイーズアウトがなされるケースについて簡単に紹介しましょう。

①会社の方針に反対する少数株主がいるとき

1つ目のケースは、先述した通り、会社の方針に反対する少数株主がいるときです。

会社の重要な決定は株主総会で行われますが、決定に反対する少数株主がいると、会社の望む方向に進めないことがままあります。

事業運営に支障が生じたり、スピード感を損なったりしないよう、スムーズな意思決定のためにスクイーズアウトをし、少数株主を締め出します。

②新規事業を始めるとき

①と似ていますが、新規事業を始めるときや、大きな投資を行うときにも、スクイーズアウトを選ぶことがあります。会社が損害を被った場合、株主には、訴訟を起こし、責任を追及する権利があるからです。

新規事業を始めたり大きな投資を行ったりするときには、どうしても失敗のリスクがつきまとうもの。一方、思いきったチャレンジをしなければ、会社を伸ばしていくこともできません。

そこで、訴訟を起こされるリスクを回避し、大きな挑戦をするため、少数株主をスクイーズアウトするのです。

③事業承継をするとき

事業承継をするときも、スクイーズアウトという手段が選ばれることがあります。

大株主が亡くなり、株式が複数の相続人に分散して相続されたため、会社の意思決定がうまくいかない……といったケースを回避するため、スクイーズアウトによって事業承継する人の持ち株比率を100%にしておくのです。

ただし、相続人と話し合い、株式を譲渡してもらうことができれば、あえてスクイーズアウトという手段を採る必要はありません。

④M&Aをするとき

M&Aのために持ち株比率を100%にすることを目的として、スクイーズアウトが行われるケースも。中小企業がM&Aをする際には、売り手側は、買い手側に全株式を譲渡し、完全子会社になります。

ただし、M&Aに反対する株主がいると、その手続きが進みません。M&Aが成立せず、良い話が流れてしまうリスクもあります。そうした事態が起こらないよう、スクイーズアウトによって株式を集めておくのです。

なお、親会社にとって、完全子会社化には税制上のメリットがあります。連結納税制度を選択すると、親会社と子会社の利益を損益通算することができ、子会社が赤字の場合、その分を親会社の黒字から差し引けるためです。

法人税を節税することを目的として、スクイーズアウトによってすべての株式を取得しようとする企業もあります。

⑤上場廃止(株式非公開化)をするとき

上場廃止をするときも、スクイーズアウトという手段が選ばれるケースがあります。

上場には、資金調達がしやすくなる、社会的信用が得られて取引が増えるなどといったメリットがある反面、自由に経営できなくなるというデメリットも。そこで、あえて上場廃止をし、経営上の制約をなくして、自由に経営することを目指す企業も存在します。

上場廃止前にTOBが行われるものの、スクイーズアウトによって強制的に株式を集めることもあります。

株式併合の手続き

株式併合を行う際には、株主総会の特別決議により、次の4つの事項を定める必要があります。

①併合の割合
②効力発生日
③種類株式発行会社である場合は、併合する株式の種類
④効力発生日における発行可能株式総数

また、株主総会において、株式併合を行う理由を説明することが求められます。

まとめ

意思決定を円滑にする効果のある「スクイーズアウト」。事業承継で株主が増えてしまった場合にも、しばしば採られる手法です。

とはいえ、株主総会の特別決議で4つの事項を定める必要があるなど、決まった手続きがあるのも事実。メリットとデメリットを勘案し、実行するかどうかを決めましょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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