COLUMNコラム
事業承継後の「青色申告」はどうなる? 基礎知識と合わせて解説!
法人・個人事業主問わず、さまざまな税制優遇を受けることができる青色申告。事業承継をする場合、後継者はいつまでに青色申告の申請をすべきかご存じでしょうか。本記事では、青色申告の基礎知識とともに、事業承継後の青色申告の注意点を解説します。申請が遅れて後悔しないためにも、ぜひご一読ください。
目次
そもそも青色申告とは?
青色申告とは、確定申告の方法の一つで、所得税を正しく納税するために行う申告納税制度です。よく対比される「白い申告」は簡易帳簿でよいとされ、確定申告の際も、確定申告書(B)と収支内訳書、控除を証明する書類の提出で済みます。また、事前の申請手続きも不要です。一方、青色申告は後述するような白色申告にはない優遇措置を受けることができる反面、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と「開業届」を所管の税務署に提出しなければならず、原則として複式簿記で帳簿をつけることが義務付けられています。
提出書類、保存義務のある帳簿・書類も白色申告よりも多くなります。
つまり簡単にいえば、
・青色申告=税制優遇を受けられるが、帳簿作成や書類準備が面倒
・白色申告=税制優遇を受けられないが、確定申告の準備・申請がラク
といえます。
青色申告における個人と法人の違いとは?
青色申告は「個人事業主がするもの」というイメージがあるかもしれませんが、法人でも青色申告は可能です。むしろ、法人税に関する青色申告普及率は90%を超えている(国税庁の公表による)ことから、法人においても青色申告は非常にメジャーな納税制度だといえます。では、具体的にどんな違いがあるのかを見ていきましょう。
①「最大65万円の特別控除」が法人にはない
個人事業主における青色申告の場合、以下の3つの条件を満たすことで、最高65万円の青色申告特別控除が受けられます。
・複式簿記により記帳した帳簿の提出
・記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書の提出
・e-Taxを利用した確定申告書の提出または電子帳簿保存(必要書類を揃えていても、郵送または窓口で提出した場合は55万円控除になる)
※なお、上記の条件を満たさない場合でも、青色申告なら「10万円の控除」を受けることができます。
しかし、法人にはこのような特別控除はありません。
②「青色事業専従者給与」が法人では使えない
青色事業専従者給与とは、一定の条件のもとで家族に対する報酬を経費にできる制度です。白色申告は控除額が定められているのに対し、青色申告は妥当性のある範囲内での報酬を設定できるため、節税の面で大きなメリットを受けられます。
しかし、この「青色事業専従者給与」に関しても、法人では使うことができません。
③「欠損金の繰越しができる期間」が違う
個人の青色申告では、事業で損失が出たら赤字の控除を繰越したり、繰戻しで前年の所得税の還付を受けたりすることが可能です。この繰越期間は「翌年以降3年間」です。一方で法人の場合、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金(赤字)は、翌事業年度以降10年間、課税対象となる所得金額から控除できます。
過去の赤字を無駄なく使って課税所得額を抑えられるため、法人税などの納税額を減額できるのがメリットです。さらにいうと、中小企業(資本金または出資金が1億円以下の法人)の場合、繰越決算金控除前の所得金額を100 %控除できる点も魅力的といえるでしょう。
④「帳簿書類の保存期間」が違う
③に伴い、帳簿書類の保存期間が個人と法人では異なります。個人の場合、「確定申告書の提出期限の翌日から5年間または7年間」であるのに対し、法は「欠損が生じた事業年度の帳簿書類を10年間」保存する義務があります。
⑤中小企業は「30万円未満の少額資産の取得価額を100%損金参入できる」
これは中小企業ならではのメリットです。従業員数が1,000人以下の中小企業が30万円未満の減価償却資産を事業に使用する目的で購入した場合、その価格を全額損金として算入できます。
事業承継後の青色申告はどうなる?
先代経営者のときに青色申告をしていれば、承継後に改めて申告をする必要はありません。引き続き複式帳簿を提出し、帳簿書類の保存義務を満たすことで、青色申告の税制優遇を受けることができます。
個人事業主が事業承継をする場合、まず「先代経営者の廃業手続き」を行う必要があります。賃貸経営をしていて不動産所得がある場合などを除き、青色申告を継続する必要はないため、「所得税の青色申告のとりやめ届出書」を税務署に提出しましょう。
先代経営者が廃業手続きを行った後、後継者は事業開始から1カ月以内に「開業手続き」を行う必要があります。このとき青色申告を希望する場合、「青色申告承認申請書」を提出しましょう(この申請書は、事業開始2カ月以内に提出すればよいのですが、開業届と一緒に税務署に提出したほうが効率的です)。
まとめ
青色申告はいくつかの要件を満たす必要があるものの、さまざまな優遇制度が利用できます。ただし、個人・法人でメリットが異なるため、事前に特徴を把握しておき、必要な申請を期日内に行うことが求められます。
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