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「有限会社」の事業承継を成功させるための基礎知識

事業承継の情報はウェブや書籍など数多くありますが、その大半は「株式会社」を前提に書かれたものです。そのため、「有限会社が事業承継をする場合、どういったポイントがあるのか」と疑問に思う経営者や後継者候補の方も多いのではないでしょうか。本記事では、有限会社の事業承継について、メリットや手続きの方法などを解説します。

特例有限会社とは

有限会社=株式会社の一種!?

有限会社の事業承継でまず知っておきたいのが、「現在の日本に有限会社は存在しない」ということです。2006年5月1日に有限会社法が廃止されたことにより、現在は有限会社の新規設立はできません。

では、有限会社法が廃止される以前に設立された有限会社はどうなっているのかというと、「特例有限会社」と呼ばれる株式会社の一種として存続することが認められています。つまり今、「有限会社」と名乗っている会社は、かつての有限会社とは異なり、法的にいうと「株式会社の一種」なのです。本記事では、有限会社でない(通常の意味での)株式会社のことを、単に「株式会社」と表記します。

「有限会社」の特徴

有限会社(厳密に言うと「特例有限会社」ですが、以降は「有限会社」)が株式会社と異なる点は、主に4つあります。
1.任期がない(株式会社の場合、取締役等の役員の任期は「最長10年」)
2.決算公告の義務がない(株式会社の場合、毎年一定の時期に決算公告をしなければならない)
3.会計参与、会計監査人、取締役会、監査役会、委員会を置けない(株式会社は置ける)
4.上場、株式公開ができない(株式会社はできる)
5.株式会社よりも信用力が低い

また、「株式会社の一種」ということもあり、以下のような株式会社の性質も持っています。・持分の代わりに株式(厳密には譲渡制限株式)を発行できる・社員総会が株主総会として扱われる

有限会社の事業承継スキームは?

有限会社の事業承継の場合、「株式を発行していないか(出資持分がまだある状態か)」「株式を発行しているか」によって方法は異なります。

株式を発行していないケース

「株式を発行していない」ということは、有限会社の出資持分がまだある状態を意味します。出資持分とは、有限会社に出資した金額に応じて得られる財産権のこと。株式会社でいうなら「株式」と同じです。出資持分の評価方法は会社の規模によって異なりますので、専門家に持分の価値を評価してもらうようにしましょう。

株式を発行していない有限会社の場合、事業承継を行うには、以下の2ステップで進めます。

STEP1:先代経営者の出資持分を後継者の名義を書き換える
STEP2:社員総会を開催し、後継者を取締役に選任する

なお、先代経営者がすでに亡くなっている場合、上記2ステップに加え、株価のように出資持分の価値を評価しなければなりません。

株式を発行しているケース

株式を発行している有限会社が事業承継する場合、株式会社と同様、株式を後継者に譲渡し、経営権を移転する手続きが必要です。 有限会社が発行する株式は「譲渡制限株式」であり、主総会を開催して譲渡承認請求と承認手続きを行って初めて譲渡できます。

ただ、株式を発行している有限会社でも、その大半は規模が大きくないため、株主総会といっても大勢の株主を招集するケースは少ないといえます。

有限会社は「事業承継税制」が適用できる!?

中小企業の事業承継を円滑に進めるため、平成30年に改正された事業承継税制。この特例措置により、適用除運を満たせば非上場株式にかかる相続税や贈与税が100%猶予(または免除)されます。この事業承継税制は、有限会社でも活用できます。

これまで多くの中小企業が、事業承継によって発生する多額の相続税や贈与税を理由に廃業や解散などをしてきたことを考えると、事業承継税制による恩恵は大きいといえるでしょう。

ただし、事業所計税制の特例措置には次のようなデメリットや注意点があります。
・「納税猶予の取消事由」に該当した場合、猶予税額の一括納税になる恐れがある
・納税猶予申請の手続きが煩雑
・後継者は3年以上役員を務めなければならない
・先代経営者が亡くなった後、株式は相続税の対象になる
・M&Aで第三者に株式譲渡した場合、相続税の猶予は打ち切りになる
・遺留分や他の相続人の相続税に配慮が必要

また、事業承継税制の適用は、2024年(令和6年)3月31日まで」に特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出たうえで認定書を受領しなければなりません。加えて認定を受けた後は、2027年までに承継を行わなければ特例の恩恵を受けられなくなるので注意しましょう。そして何より、事業承継税制の審査をパスするためにはさまざまな申請をせねばならず、専門家のサポートなしでは困難といえます。事業承継をスムーズに行うためにも、豊富な知識と経験を持つプロフェッショナルに相談するのがおすすめです。

まとめ

事業承継という観点で見ると、有限会社法が廃止されて以降、有限会社と株式会社の事業承継の差異は小さくなっています。とはいえ、有限会社は株式会社と異なる特徴もあるため、きちんと理解したうえで事業承継税制の活用などの対策を考えることが必要です。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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