COLUMNコラム
会社法をチェック! 事業承継を円滑に進めるために知っておきたいポイント
事業承継においては、財産や権利などを引き継ぐことになる分、さまざまな法律が関わってきます。法律の知識がなければ、思いもよらぬ事態へと発展してしまうことも。本記事では、事業承継をするうえで知っておくべき会社法の知識を解説します。
目次
自社株式の承継方法
事業承継に関わる法律には、大きく「会社法」「民法」「税法」の3種類があります。会社法は主に、株式承継に関する法律です。株式承継とは、読んで字のごとく、株式を承継すること。自社株を承継することで、事業を他者に承継します。自社株式の代表的な承継方法は3種類あります。
1つ目は「贈与」。
生前贈与とも言われ、経営者(相続人)が存命のうちに、株式を贈与する形で後継者に承継される行為をいいます。相続税を節約できる反面、贈与税が課税されます。ただし、贈与額が1年あたり110万円以内であれば、贈与税は発生しません。これを「暦年贈与」と呼びます。注意点は、暦年贈与の途中で経営者が亡くなってしまうと、過去3年前までの贈与が相続扱いになってしまうこと。このような事態を避けるために、できるだけ早くから贈与を始めることがポイントとなります。
2つ目は「譲渡」。
後継者が資金を用意し、自社株を取得して経営権を獲得する方法です。譲渡のボトルネックになるのは、やはり資金でしょう。自社株の取得にはまとまった資金が必要となるため、この手法をとれる後継者は限られます。
3つ目は「相続」。
多くの人が「事業承継」と言ってイメージする、遺言による相続です。経営者が亡くなったとき、遺言で指名された後継者が自社株を承継します。注意すべきは「遺留分」。一定の相続人に対して、最低限の留保分が定められています。また、相続税が発生する点にも注意が必要です。後継者の負担を軽減すべく、経営者は早期から計画的に動く必要があるといえるでしょう。
会社法を活用した事業承継①「株式の分散防止」
株式が分散していると、重要な意思決定などの際に何かと面倒なもの。会社法を活用すると、株式の分散を防ぎ、後継者に自社株を集中させることができます。主な手段としては、以下の3種類が挙げられます。
1.分散した株式の買取(会社法第174条)
買取に賛同する人たち3分の2以上の議決権をもつ場合は、相手の同意がなくても、分散した株式を強制的に買い取ることができます。
2.株式譲渡制限条項の設置(会社法第2条)
株式は原則として、自由に譲渡することができます。このルールを利用して、会社にとって好ましくない人に株式が譲渡・売却されてしまうことも。そうなると、所有関係が複雑になったり、望ましくない人が経営に関与したりするリスクがあります。
そういった事態を防ぐのが「株式譲渡制限条項」です。譲渡制限株式とは、譲渡による株式の取得について、株式会社の承認を要することを定めた株式を指します。譲渡制限株式を設置しておけば、株式の譲渡・売却を制限できるのです。
3.相続人に対する売渡請求条項の設置(会社法第174条)
相続におけるトラブルを防止する仕組みです。相続人が会社にとって好ましくない場合、会社が株式の売渡請求を行うことができます。
会社法を活用した事業承継②「種類株式の活用」
「種類株式」とは、株主の権利について特典や制限のある株式のこと。種類株式によって議決権をコントロールできます。
1.議決権制限株式の発行(会社法第115条)
株主は、株主総会で持株数に応じた議決権を行使することができます。議決権制限株式は、株主総会において特定の議決権が制限された株式のこと。つまり、会社の経営に対して意見する権利が制限されているのです。
経営者が生前に準備していない場合、オーナーの持っている株式は相続人全員の共有財産となり、後継者以外の相続人の持ち物になる可能性があります。こうなると、自社株が分散してしまい、会社としての意思決定が困難になることも。こうしたリスクを防ぐために使われるのが議決権制限株式です。
後継者には議決権のある株式を、それ以外の相続人には議決権制限株式を相続させることで、会社としての意思決定をスムーズにするのです。なお、株式の内容を変更する場合には、株主全員の同意が必要です。
2.拒否権付種類株式の発行(会社法第108条)
拒否権付種類株式は、取締役の選任や解任、会社組織の変更など、株主総会の特定の決議事項について拒否権のある株式のこと。事業承継をした後、先代が拒否権付種類株式を持っておくことで、後継者による経営をコントロールするといった使い方が考えられます。
なお、種類株式についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(「スムーズな事業承継を実現する「種類株式」の基礎知識」)
まとめ
事業承継を円滑に完了させるには、専門知識が欠かせません。特に会社法を活用して事業承継を進める場合は、税務や法務の専門家に必ず相談しましょう。さまざまな手続きが必要になるため、できる限り早いタイミングから動き出すことをおすすめします。
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