COLUMNコラム
3つのステップで簡単にわかる! 事業承継税制の「計算方法」
平成30年度の税制改正により、法人版事業承継税制の特例が創設されました。具体的な改正点は、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限の撤廃と納税猶予割合の引き上げの2つ。本記事では、事業承継税制における、相続税の納税猶予額の計算方法を解説します。
目次
法人版事業承継税制とは
法人版事業承継税制とは、一定の要件を満たした場合、納税の猶予・免除が受けられる制度です。後継者である受贈者・相続人等が非上場会社の株式等を贈与や相続などによって取得した場合、その非上場株式等の贈与税・相続税の納付が一定の要件のもとで猶予されます。
また後継者の死亡等が発生した場合、猶予されている贈与税・相続税の納付は免除されます。しかし、いずれの場合も非上場会社は円滑化法の認定を受けている必要があります。
平成30年度の税制改正における変更点
法人版事業承継税制に関しては、平成30年度税制改正でこれまでの措置に加え、特例措置が創設されました。具体的には、次の2つです。いずれも10年間の措置となります。
1.納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃
2.納税猶予割合の引上げ(80%から100%)
適用期間は、平成30年1月1日から令和9年12月31日まで。対象株数は全株式で、納税猶予割合は100%となります。
事業承継税制の特例措置を受けるために必要なこと
法人版事業承継税制の適用を受けるにあたっては、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に基づいた認定が必要です。認定を受けるには、「特例承継計画」を作成し、令和6年3月31日までに提出する必要があります。
まずは中小企業庁のWebサイトなどを参考に、フォーマットを取得して記載しましょう。記載する項目は、次のとおりです。
1.特例承継計画の内容
主たる事業内容、資本金額または出資の総額、常時使用する従業員の数
2.特例代表者
特例代表者の氏名、代表権の有無
3.特例後継者
特例後継者の氏名(最大3名)
4.後継者が株式を取得するまでの経営計画
株式を承継する年月日(予定)、当該時期までの経営上の課題、当該課題への対応
5.株式等承継後5年間の経営計画
1〜5年目それぞれの経営計画
経営計画の項目については、売上や利益の目標など、詳細な数値を示す必要はありません。箇条書きなどの形式をとり、シンプルに記載しましょう。また、Webサイトには記載例も掲載されていますので、参考にしてみてください。
事業承継税制における相続税の計算方法
特例事業承継税制においては、対象となる株式にかかる相続税が全額猶予されます。納税が猶予される相続税などの計算方法(特例措置)は、次の3ステップで考えられます。
ステップ① 後継者の課税価格に基づいて、相続税を計算する
課税価格の合計額に基づいて計算した相続税の総額のうち、後継者の課税価格に対応する相続税を計算します。課税価格の合計額とは、後継者以外の相続人等が取得した財産の価額の合計額と後継者が取得した全ての財産の価額の合計額を合算した数値のこと。
後継者が取得した全ての財産の価額の合計額には、不動産や預貯金、非上場株式等が含まれます。
ステップ② 特例措置の適用を受ける非上場株式等の額に基づいて、後継者の相続税を計算する
後継者が取得した財産が、特例措置の適用を受ける非上場株式等のみであると仮定した相続税の総額のうち、特例措置の適用を受ける非上場株式等に対応する、後継者の相続税を計算します。
債務や葬式費用がある場合は、非上場株式等以外の財産から先に控除します。また、この制度の適用を受ける非上場株式等に係る会社等が一定の外国会社等の株式等を有する場合、その外国会社等の株式等は有していなかったものとして算出されます。
ステップ③ ステップ②で算出した金額を確認する
ステップ②で算出した金額が、納税が猶予される相続税となります。なお、①で算出した金額から②で算出した金額を控除した③の金額(納付税額)は、相続税の申告期限までに納付する必要があります。
相続税計算のポイント
相続税を計算するときは、他の相続人が相続する財産も含め、すべての相続財産を合計して計算します。ステップ①で後継者以外の相続人等が取得した財産の価額の合計額と後継者が取得した全ての財産の価額の合計額を合算するのはそのためです。
まとめ
特例承継計画を作成するとき、相続額の納税猶予額を計算してみましょう。実際の数字を把握ことで、節税対策を考えたり、まとまった資金を用意するといった打ち手を考えるきっかけになります。
まずは現状を見つめることが、事業承継を成功させるための第一歩となるでしょう。
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