COLUMNコラム
減価償却できる? 事業承継における事業用固定資産の扱いを解説
個人事業を承継したとき、事業用固定資産を減価償却できるのかが気になる方も多いでしょう。本記事では、事業承継における減価償却について、取得価額・耐用年数・償却方法の観点から紹介します。
目次
減価償却とは
まずは、減価償却とはどのようなものか、簡単にまとめます。減価償却とは、固定資産の購入にかかった費用を数回に分割して費用計上すること。購入費用の全額を購入した年の費用とするのではなく、固定資産の耐用年数に応じて少しずつ配分します。
減価償却の対象となる固定資産は「減価償却資産」と呼ばれます。減価償却資産の例としては、機械や建物、土地、車などが挙げられます。たとえば、工場で使う機械を300万円で購入したとしましょう。減価償却では、購入した資産は、時間が経つにつれてその価値が減っていくと考えます。
ですので、購入した年に300万円かかったとするのではなく、1年目に50万円、その翌年に50万円、さらにその翌年に50万円……といったように、購入にかかった300万円を数年に分けて計上するのです。固定資産の使用期間を「耐用年数」といい、耐用年数は資産ごとに税法で定められています。
事業承継における減価償却
次に、事業承継における減価償却について見ていきましょう。個人事業を事業承継するときは、事業用固定資産を引き継ぐことになるでしょう。そのときに注意したいのが減価償却です。引き継いだ固定資産を減価償却資産として計上できれば、税額を抑えることができ、会社運営がより円滑になる可能性があるからです。
個人事業主が事業承継する際、事業用固定資産を引き継ぐにあたっては、2つのパターンがあります。
1.生前贈与(先代が生きているうちに引き継ぐ)
2.相続(先代が亡くなってから引き継ぐ)
生前贈与を選ぶにせよ相続の形をとるにせよ、あらかじめ計画を立てて準備しておくことが何より重要です。
生前贈与における減価償却
事業承継において、事業用固定資産を引き継ぐ方法は「生前贈与」と「相続」。まずは生前贈与における減価償却について解説します。
事業承継で生前贈与を活用するメリット・デメリット
よりスムーズに事業承継を完了できる可能性が高いのは、生前贈与です。先代が事前に段取りを組んでおいたほうが、手続きが円滑に進みます。生前贈与によって、事業用固定資産の所有権を後継者に引き継いでおきましょう。ただし、生前贈与による事業承継には注意点もあります。
それは、事業用固定資産の資産価値が高くなる可能性があること。高額な贈与税がかかってしまうリスクがあります。専門家に相談の上、事業承継税制や、贈与税の年間非課税枠などを活用するのが望ましいでしょう。
事業承継で生前贈与を活用する際の注意点
ここでは、生前贈与によって事業承継する際の注意点を説明しましょう。事業用固定資産を引き継ぐ際、減価償却に関して、次のようなルールが定められています。
1.先代の事業用固定資産の取得時期や取得価額はそのまま引き継がれる
2.減価償却費を計算する償却方法は引き継がれず、相続人が選択する
3.未償却残価を基準に算出された贈与税がかかる
事業用固定資産を引き継ぐと、その取得時期や取得価額はそのまま引き継がれます。未償却残高や減価償却類型額も同様です。一方、償却方法は引き継がれません。事業用固定資産を引き継いだら、減価償却をどのように行うか、税務署に届け出る必要があります。
償却方法は、定額法と定率法の2パターン。
1.定額法:毎年一定額の償却費を計上する方法
2.定率法:未償却残高を一定割合で償却する方法
届け出をしなかった場合は定額法が適用されますので、定率法を選択したい場合は忘れずに届け出ましょう。
相続における減価償却
次に、事業用固定資産を引き継ぐ方法として、相続を選んだ場合の減価償却について解説します。相続で事業承継した場合、減価償却資産の取得価額・耐用年数・償却方法は次のように扱われます。基本的には、生前贈与の場合と同様です。
【取得価額】
先代の取得価額を引き継ぎます。
【耐用年数】
先代の耐用年数を引き継いで減価償却することとなります。ただし、耐用年数を過ぎてしまっている場合は、減価償却は不可となります。
【償却方法】
償却方法は引き継がれないため、後継者が選択します。償却方法は、定額法と定率法の2パターンあり、届け出をしなかった場合は定額法となります。定率法を選択したい場合は届け出が必要です。
まとめ
事業承継によって事業用固定資産を引き継ぐ方法は、生前贈与と相続の2種類があります。取得価額・耐用年数・償却方法の考え方は基本的に同じです。いずれの手段をとるにせよ、それぞれの手続きをしっかり確認して準備しましょう。
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