COLUMNコラム
事業承継で「生命保険」を活用するメリット・注意点を解説!
「もし自分が突然亡くなってしまったら、会社はどうなってしまうんだろう……」こうした不安を抱く中小企業の経営者は多いと思います。生命保険に加入していれば、万が一そうした事態が起こっても、金銭面での負担を緩和できる可能性があります。本記事では、事業承継で生命保険を活用するメリットと注意点を解説します。
目次
事業承継で生命保険を活用するメリットとは?
事業承継において生命保険を活用することで得られるメリットは、大きく以下の2つが挙げられます。
①納税資金・事業資金に充てられる
親族内承継の場合、後継者に株式譲渡することになりますが、その際に課される相続税や贈与税は数百万円、場合によっては数千万円になるケースもあります。日本商工会議所の「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」(2021年)によると、事業承継の障害・課題として最も多かった回答は「後継者への株式譲渡」(約3割)です。後継者へ株式譲渡を行う際の障害としては、「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」が約7割、「後継者に株式買取資金がない」が約6割と、資金面がネックになっていることがわかります。
相続税や贈与税を納税するために、株式を売却することは不可能です。そのため、不動産やその他の資産を売却して現金化して納税資金を用意する人もいるのですが、なかには売却できる資産がなく、借金をして相続税を支払うケースもあります。しかし、先代経営者が生命保険に加入して受取人を後継者にしておけば、その保険金を納税資金や事業資金(従業員の給与や取引先への債務など)に充てることができます。
②「争続」を回避できる
事業承継では自社株を後継者に集中させ、経営権を確保する必要があります。しかし、先代経営者の資産のほとんどが自社株式の場合、他の相続人が得られる資産が少なくなるため、遺留分(一定の相続人に保証された最低限の遺産取得分)を主張されて親族同士が争う「争続」が起こる可能性があります。とはいえ、後継者に渡す自社株式を他の相続人に渡してしまうと、株主が分散して経営が不安定になる恐れがあります。そこで生命保険を加入しておくことで、他の相続人に渡す資産を準備することができます。
事業承継で生命保険を活用する際の注意点
メリットが大きいようにも感じる生命保険活用ですが、以下のようなリスクがあります。
①保険料でキャッシュフローが圧迫される
高い効果を期待して高額な保険に加入すると、会社のキャッシュフローが圧迫されてしまいます。結果として、急な資金が必要になったときも対応することができず、加入していた保険を加入せざるを得なくなるかもしれません。
②解約タイミングによっては損失が出る
解約返戻金のある保険に加入し、ピーク前の解約せざるを得なくなった場合(もしくはピーク時の解約を忘れてしまった場合)、受け取る解約返戻金が低くなり、損失を被る可能性もあります。
事業承継に活用できる生命保険の種類
事業承継で活用できる生命保険は、以下の4種類があります。
①生命保険
一般的な生命保険はいわゆる「掛け捨て型」なので、支払い期間中に被保険者が亡くなれば保険金が支払われますが、期間が満了した場合は保障が終了となるため、満期保険金は基本的に支払われません。ただし、その分コストが低いのが特徴といえます。
②終身保険
終身保険は掛け捨て型ではなく「被保険者が亡くなるまで」保障期間が続くため、解約をしない限り基本的に保険金を得られるのが特徴です。後継者を保険金の受取人にすることで、後継者は前述ししたように納税資金や事業賞金に充てることができます。途中解約した場合でも解約返戻金は受け取れますが、商品や解約するタイミングによって金額は異なります。
③長期平準定期保険
長期平準定期保険は主に経営者向けの生命保険で、加入期間が長くなるほどもらえる保険金が増えていくのが特徴です
・保険期間は100歳まで
・解約返戻率のピークが20〜30年程度
・保険料が変動しない
といった理由から資金計画が立てやすく、事業承継でも活用しやすいといえます。
ただし、加入期間が短い時期に解約すると、解約返戻金が支払った保険金を下回るリスクもあります。
④逓増定期保険
逓増定期保険(ていぞうていきほけん)は長期平準定期保険と同様、経営者向けの生命保険です。毎年支払う保険料は変動しませんが、被保険者が亡くなったときの保険金は段階的に増えていき、最大5倍まで上がるのが特徴です。ピークの解約返戻率の数字によって、保険料の一定割合が損金扱いとなります。ただし、保険料が高額なため、前述したように会社のキャッシュフローは悪化する可能性もあるため、活用する場合は慎重に検討することをおすすめします。
まとめ
事業承継において生命保険は「納税資金・事業資金に充てられる」というメリットがあり、活用する価値は十分にあるといえます。しかし生命保険の中でも種類はいくつかありますし、デメリットやリスクもあります。また、恩恵を最大限に享受するためには中長期的な活用が求められますので、早めに事業承継の計画と合わせて活用を検討するのがよいでしょう。
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