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カギは相続税と贈与税! 事業承継でかかる税金とその対策

多くの中小企業経営者にとって、「事業承継=多額の費用がかかる」というイメージが強いのではないでしょうか。本記事では、事業承継で発生する税金と、特例内容を解説します。まずは必要な知識を持つことで、事業承継成功への第一歩を踏み出しましょう。

事業承継で発生する4つの税金

事業承継において発生する税金は、主に以下の4種類です。

①相続税
②贈与税
③登録免許税・不動産取得税
④法人税・消費税

それぞれについて解説します。

相続税

相続税は、誰かが亡くなったとき、その人の資産に課される税金のこと。資産が親族などに相続される際に発生します。オーナー経営者が亡くなり、親族が会社の後継者となった場合には、後継者に納税義務が課されます。

相続税のポイントは「累進課税制度」が適用されていること。財産額が大きければ大きいほど、相続税率が上がる仕組みです。具体的な税率は、1,000万円以下なら10%、6億円超になると55%にのぼります。

ただし、相続税には基礎控除額があり、取得金額が基礎控除額に満たない場合は相続税が発生しません。相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されます。

贈与税

贈与税は、贈与人が資産を譲渡したとき、被贈与人(贈与を受けた人)に課せられる税金です。事業承継においては、後継者が贈与税を支払うこととなります。
相続税と同様に累進課税制度が適用され、贈与される額が高ければ高いほど贈与税の額も上がります。

登録免許税・不動産取得税

事業承継に際して不動産を承継する場合には、不動産の所有権移転登記が必要となり、登録免許税がかかります。
不動産取得税は、土地・建物を購入したり、土地に建物を建築したりした際に発生する税金のこと。相続では課税されませんが、生前贈与を受けると課税されます。

法人税・消費税

一般的な事業承継では、法人税・消費税ともに課税されませんが、以下のようなケースは例外となります。

【法人税】
事業譲渡において、譲渡価額と譲渡対象となる負債との差額に対して課される

【消費税】
事業譲渡においては、個々の資産に対して課される

相続税・贈与税が猶予になる「事業承継税制」

事業承継でかかる主な税金は、先述の通り「相続税」「贈与税」「登録免許税・不動産取得税」「法人税・消費税」の4種類です。

そのうち、特に多くの後継者にのしかかってくる負担と言えば「相続税」と「贈与税」でしょう。実はこの2つの税金は、特定の要件を満たしさえすれば、猶予、あるいは免除されるのです。

ここでは、相続税と贈与税が猶予・免除される「事業承継税制」について解説します。

事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業承継において、先代経営者から資産を引き継いだときに発生する「相続税」と「贈与税」の負担が猶予、あるいは免除される制度のこと。

相続税と贈与税は多額になることも多く、後継者にとって大きな負担になりかねません。支払いのめどがたたず、やむを得ず廃業を選ぶ経営者も多いものです。そうした事情から日本の中小企業の事業承継が進まないことを危惧した政府によって、事業承継税制が創設されました。

ただし、この制度の適用期間は2018年(平成30年)1月1日から、2027年(令和9年)12月31日の「10年間限定」となっています。適用を受けるには、2024年(令和6年)3月31日までに特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出したうえで認定書を受領し、さらに2027年までに承継を行う必要があります。

事業承継税制適用の流れ

事業承継税制の適用を受けるには、以下のような手続きが求められます。

①特例承継計画を作成する
②特例承継計画を都道府県知事に提出する(2024年3月31日まで)
③事業承継を行う(2027年まで)
④5年間、都道府県に報告書を、税務署に届出書を提出する
⑤6年目以降は、3年に1回、税務署に届出書を提出する

特例承継計画とは

特例承継計画とは、事業内容、従業員数、代表者、後継者、承継までの経営計画、承継後5年間の経営計画などを記したもの。認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた旨を記載する必要があります。
中小企業庁のWebサイトに記載例が掲載されているので、参考にするとよいでしょう。
中小企業庁サイト

税金が免除になる条件

税金が全額免除になるのは、次のようなケースです。

・後継者または経営者が死亡した
・後継者が死亡した
・破産手続開始決定、もしくは特別清算開始の命令等を受けた
・後継者が、次の後継者に対して事業承継税制の適用を受ける贈与をした

まとめ

事業承継において、大きなボトルネックとなる税金。特に対策すべきは「相続税」と「贈与税」でしょう。事業承継税制を活用すれば、相続税と贈与税の猶予が受けられます。2027年までに事業承継の予定がある方は、ぜひチェックしてみてください。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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