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あわや「争続」に発展⁉ 兄弟の間で事業承継の後継者争いが起こったらどうする?

日本の中小企業においては、親族への承継が一般的です。とはいえ親族内承継は、トラブルが多く、会社の存続問題に発展する例も珍しくありません。そのひとつが、現経営者の子が2人以上いるケースです。本記事では、事業承継で兄弟のいずれもが後継者として立候補したケースなどの解決策を提示します。

「子に株式を平等に分けたい」はNG⁉

現経営者が中小企業を経営しており、経営者には3人の子がいるとします。配偶者は常に亡くなっています。事業承継のタイミングは3年ほど後にて検討中。長男を後継者に指名するつもりでおり、家族会議でそのような話をしたところ、長男・次男・三男ともに後継者に立候補してきました。自分が亡くなった後も、子どもたちには仲良く暮らしてほしいもの。現経営者は、現金や不動産などといった財産はもちろん、株式も平等に分けるつもりでいました。さて、現経営者はどのように対応すればいいのでしょうか。

株式は後継者に集中させるべき!

このケースで最も重要なのは、株式を分割させることなく、後継者に株式を集中させることです。株式を分割させてしまうと、権利行使が難しくなるのです。現経営者が亡くなり、相続が発生した場合のことを考えてみましょう。この場合、遺産分割協議が決着するまでは、各株式を相続人が準共有することになります。

たとえば、現経営者の先に紹介したような、配偶者が既に亡くなっており、子が3人いるケース。この場合は、株式を3分の1ずつ共有することとなります(株式準共有状態)。株式準共有状態では、権利を行使したいときには、権利行使者を定めて会社に通知しなければなりません。なお、権利行使者を決めるのは、持分の過半数によります。子が3人おり、それぞれが対立している場合は、代表者を決めることすら不可能なのです。そうなると、権利行使はできません。なお、法定相続分の通り、3分の1ずつ株式を分割したとしましょう。この場合も困った事態が生じかねません。

株主総会の特別決議(会社の重要事項を決める会)には、議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。つまり、株式が分散しており、もしそれぞれの意見が分かれていると、重要事項を決議することができません。その結果、会社経営に問題が出てくる可能性があるのです。

後継者への株式移転

ひとりの親として「子どもたちを区別したくない、それぞれに平等に財産を分けたい」と思う経営者は多いもの。ですが、会社の未来を考えるなら、先ほども述べた通り、株式は後継者に集中させることをおすすめします。事業承継において、後継者に株式を移転する方法は、大きく分けて3つあります。

1.生前贈与
現経営者が後継者に対し、無償で自社株式を譲り渡す方法を「生前贈与」といい、親族内事業承継でしばしば活用されます。一般的には、贈与契約書を作成し、贈与者が自社株式を無償で与えるという意思表示を行います。生前贈与を受けた後継者には贈与税が課税されます。ただし、1年間の贈与額が110万円以内の場合は贈与税がかかりません。

贈与税の負担を軽減するために、早い時期から少しずつ贈与を進めるといいでしょう。
生前贈与の3つのメリットについては、こちらの記事でも解説しています。
「相続税対策だけじゃない! 「生前贈与」で事業承継を行なう3つのメリット」

2.相続
「相続」は、現経営者が亡くなった後、後継者に対して株式譲渡する方法です。こちらも親族内事業承継でしばしば行われています。亡くなった人が遺言書を作成しておけば、指名した後継者に自社株式を譲ることができます。

遺言が準備されていない場合は、法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。遺産分割協議によって、自社株式の承継者と承継割合が決まります。相続によって自社株式を譲り受けた人には相続税が課されます。遺言がなければ、亡くなった人の遺志に沿わない形での事業承継がなされる可能性も。「まだまだ元気だから大丈夫」などと思わず、早い段階から遺言書の作成を始めることをおすすめします。

3.売買
現経営者が、金銭等と引き換えに自社株式を譲り渡す方法を「売買」といいます。M&Aや従業員承継など、第三者が後継者となる場合、売買の形になるのが一般的です。このケースでは、後継者の資金が課題となります。現経営者が「この人にぜひ継いでほしい」と思っていても、その人が株式購入資金を用意できるとは限らないのです。

自社株式を譲渡した株主が個人の場合は、売却益に対して譲渡所得税が課税されます。一方、株主が法人の場合には、法人税が課せられることとなります。

複数人が後継者になりたがったら?

先述した通り、自社株式は後継者ひとりにまとめるのがセオリーです。では、現経営者の子が複数いたとして、2人以上が後継者に立候補した場合はどうすればいいでしょうか?一番いいのは、現経営者が存命のうちに決着をつけておくことでしょう。

現経営者の死後、相続が発生したタイミングで兄弟の熾烈な争いに発展し、会社が立ち行かなくなってしまうリスクがあるからです。最もいいのは、兄弟たちを自社で修行させ、より見込みのあるほうに会社を託すというもの。場合によっては、現経営者があらかじめ会社を分割しておき、兄弟それぞれに1社ずつ任せるという方法も考えられます。

まとめ

後継者不足が問題になっている日本の中小企業において、兄弟が後継者争いをするというのは稀で、うれしい悲鳴というところかもしれません。とはいえ、現経営者の死後、兄弟の「争続」が発生し、会社が分裂してしまったり、潰れてしまったりしては元も子もありません。経営者が存命のうちに、次の後継者を確定させておきましょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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