COLUMNコラム
「事業承継」と「相続」の3つの違いを解説! 経営者は知っておかなければ危険!
事業承継と相続はどちらも「引き継ぐ」という意味を持つため混同されやすいのですが、それぞれには違いがあります。
そこで本記事では、事業承継や相続について説明し、事業承継と相続の違い、事業承継を円滑に⾏う⽅法について解説します。
目次
事業承継とは?
事業承継とは、経営者が自身の会社や事業を後継者に引き継ぐことです。
「承継」と似ている言葉に「継承」がありますが、承継は地位・事業・精神などを引き継ぐこと、継承は身分・権利・義務・財産などを引き継ぐことです。
事業承継は、承継先の属性の観点から、親族内承継、親族外承継、第三者承継の3つに分類されます。経営者の子や孫に承継する親族内承継は、早期に後継者を選定して十分に事業承継の準備ができるというメリットがある一方で、親族間で経営権をめぐる争いに発展してしまう恐れもあります。
また、親族外の従業員などに承継する親族外承継は、事業をよく理解している内部の人に承継できますが、その後継者が自社株式を買い取るだけの資金力を有している必要があります。
親族や従業員に適任者がいない場合は、株式譲渡や事業譲渡などにより第三者に会社を売却する第三者承継を検討することがおすすめです。現在、中小企業は後継者問題に悩まされており、最終的には廃業に至ってしまうケースも少なくありません。
しかし第三者承継を行うことで、候補者の母数が多くなり、事業を存続できる可能性が高まります。
相続とは?
相続とは、ある人が死亡したときにその人の財産を配偶者や子どもなどの一定の身分関係にある相続人が引き継ぐことです。
相続の方法は以下の3つがあります。
法定相続:民法で決められた人が決められた分だけもらう相続
遺言による相続:亡くなった人が遺言により相続の内容を決める相続
分割協議による相続:相続人全員で協議して遺産の分割方法を決める相続
相続には、被相続人の死亡後7日以内に必要な手続きから、10カ月以内に必要な手続きまで細かく定められており、手続きのなかには時効があるものも含まれているので注意が必要です。
事業承継と相続の違いとは?
「相続人」と「後継者」の違い
相続において、「相続人」になれる人は以下に該当する人のみであり、相続順位によって相続割合が異なります。
・法定相続人:民法で定められた被相続人の一定の身分関係にある者
<常に相続人>配偶者(妻や夫)
<第1順位>直系卑属(子や孫)およびその代襲相続人
<第2順位>直系卑属(父母や祖父母)
<第3順位>兄弟姉妹およびその代襲相続人
・受遺者:遺言書によって指定された遺産の受取人
一方、事業承継は経営者の親族でなくても、誰でも後継者になることができます。
②起こるタイミングの違い
民法882条には「相続は死亡によって開始する」と定められています。
なお、この死亡には自然的な死亡だけでなく、行方不明になってから7年経過した場合などの「失踪宣告」や、事故や災害などで亡くなった可能性が高い場合の「認定死亡」などの法律上の死亡も含まれています。
一方、事業承継は経営者が存命中でも事業承継を行うことができますが、その場合は後継者に対して贈与税、現経営者に対して所得税が課税対象となる可能性があります。
③「対象」の違い
相続の対象となるのは、以下の財産になります。
・動産(現預金、有価証券、自動車、家財など)
・不動産(宅地、農地、建物、店舗など)
・負債(現預金、有価証券、自動車、家財など)
・未払税金等(所得税や住民税、固定資産税や延滞税などの未納分)
・未払費用(水道光熱費や電話代、医療費、家賃などで被相続人が使用していた期間の未納分)
一方、事業承継の対象となるのは、以下のような会社の経営上必要な財産です。
・経営権(経営者が所有する自社株式)
・会社の経営に必要な不動産、設備、運転資金などの資産(負債も含む)
・知的財産(経営者の人脈や信用、経営理念など)
事業承継を円滑に行う方法
事業承継を円滑に行うためには、なんといっても早めに準備することがポイントです。
特に候補者となる人材がいない場合、後継者の選定と育成に時間がかかってしまい、計画開始から事業承継までに数年単位の期間を要する可能性もあります。
適切な後継者を選定して育成するためには、経営陣が中心になって、後継者育成計画を策定しましょう。
ただし、事業承継のプロセスは専門的な知識が必要になるので、国や自治体、公的機関で行っているさまざまな事業承継支援を活用することもおすすめです。
また、事業承継において後継者が取得した自社株式には贈与税や相続税がかかりますが、事業承継税制という制度を利用することで納税が猶予または免除されます。
まとめ
事業承継と相続は意味が似ていますが、今回解説したようにそれぞれまったく別物です。
特に会社を経営している人は、自分の相続と会社の事業承継を分けて考えなければ、有効な対策が取れずに失敗してしまう可能性があるので注意しましょう。
過去記事では、中小企業の事業承継をサポートしてくれる経営承継円滑化法についても解説しているので参考にしてみてください。
「事業承継の「円滑化法」で負担を減らす?中小企業の困りごとを解決!」はこちら
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