COLUMNコラム
失敗を回避! 事業承継で「よくあるトラブル」と「原因・対策」
事業承継はヒト・モノ・カネ・情報・法律・税制など、さまざまな要素が関連する一大イベント。知識を身につけて準備期間を十分とっても、トラブルが起こるケースは珍しくありません。本記事では、事業承継でよく起こる代表的なトラブルと、その原因と対策を解説します。
目次
数字で見る「事業承継で起こりそうな問題」
まずは、「中小企業経営者が事業承継の際、どんなトラブルが起こりそうと考えているのか」をデータで見ていきましょう。日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」によると、「事業承継の際に起こりそうな問題」では以下の回答が出ました(複数回答)。
1位:後継者の経営能力……32%
2位:相続税・贈与税の問題……23.7%
3位:取引先との関係維持……22.8%
4位:技術・ノウハウの承継……21.6%
5位:後継者による株式・事業用資産の買い取り……20.6%
「特にない」が32.6%あるものの、上記のように何かしら不安を感じている中小企業経営者は約7割と、非常に高いといえるでしょう。
よくあるトラブル例①「先代経営者が経営に関わり続ける」
前述の調査結果の1位が「後継者の経営能力」ということからもわかるとおり、「後継者に会社を任せて大丈夫だろうか?」という不安を抱く先代経営者は多くいます。実際、体力面では衰えたとしても、まったく経営ができない状況になってから承継するケースは少数派。そのため、先代経営者としては「自分がなんとかしなくちゃ」と思い、後継者のやり方に口を出したり、権限委譲をしなかったりしてしまうことがあります。
その結果、不満が高まった後継者と対立構造になったり、現場社員が愛想を尽かして退職したり……と、承継前よりも明らかにひどい状況に陥ることもあります。
原因と対策
後継者の育成期間が短かったり、「親族だから」「承諾してくれたから」といった安直な理由があったりすると、承継後に「やっぱり子どもには任せられない!」「大事な取引先は、引き続き自分が関わるべきだ!」と思って、先代経営者が前に出るシーンが増えてしまいます。特に、オーナー経営者の中には「自分=会社」と考えている人も多く、会社への強い愛情があるため、「いざ事業承継してもなかなか影響力の行使をやめられない」という例もあります。
対策としては、先代経営者は本当に「会社のため、後継者のため」と思うのなら、思い切って「任せる勇気」を持たなければなりません。そうでないと後継者は成長できないどころか、愛想を尽かして辞めてしまう可能性もあります。また、「事業承継計画書」と「事業承継計画表」を作成し、後継者と認識をすり合わせるのもいいでしょう。少しずつ考えを共有していくことで、事業承継後も「こんなはずでは……」といった行き違いが起こるリスクを回避できます。
事業承継計画書の作成の流れ・メリットは、こちらの記事からお読みいただけます。
(「事業承継を成功に導くロードマップ!「事業承継計画書」の作成のコツとは?」)
よくあるトラブル例②「相続税・贈与税の支払いが大きい」
前述の調査における第2位は「相続税・贈与税の問題」です。
事業承継では贈与税や相続税といった税金がかかり、その支払いは現金一括が原則です。対策を怠ると、納税で資金が底をついて承継後の経営が不安定になったり、借金をして納税金資金を用意することになったり、そもそも事業承継ができなかったりするケースもあります。
原因と対策
よくある原因としては、経営者自身が「現在の自社株式の価値を正しく把握していないこと」が挙げられます。たとえば、300万円程度の価値だと思っていたのに、承継時に蓋を開けてみたら3億円、4億円だったというケースも珍しくありません。この場合、想定以上の納税資金が必要となります。対策としては、大きく「資金調達」と「自社株対策」に分かれます。
事業承継で利用可能な資金調達方法は、主に以下の4つです。
【事業承継における資金調達の一例】
・日本政策金融公庫の融資による資金調達(詳しい解説はこちら)
・信用保証協会から特別保証を受けることによる資金調達(詳しい解説はこちら)
・民間金融機関からの融資による資金調達
・事業承継補助金(事業承継・引継ぎ補助金)による資金調達(詳しい解説はこちら)
また、自社株対策については以下のような方法があります。
【自社株対策の一例】
・法人契約の生命保険を利用し、生前に役員退職金を支給する(詳しい解説はこちら)
・不動産などを取得し、時価と相続税評価額の乖離を利用する(詳しい解説はこちら)
・後継者に生前贈与する(詳しい解説はこちら)
・従業員持ち株会に無議決権株式をもたせる(詳しい解説はこちら)
・収益部門を分社化する
・会社が自己株式を取得し(=金庫株)、有効議決権を減少させる
・種類株式を発行する(詳しい解説はこちら)
加えて、事業承継税制を利用することで相続税・贈与税の支払いを猶予(もしくは免除)することも可能です。
この制度の適用要件などはこちらの記事で解説しています。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
まとめ
事業承継ではさまざまなトラブルが起こり得ますが、いずれも事前に対策を講じることで、トラブル発生確率を下げられます。
事業承継における「よくある悩み」と「解決法」はこちらの記事で解説していますので、本記事とあわせてぜひご一読ください。
(「スッキリ解決! 事業承継でよくある「悩み6選」と「解決法」」)
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