COLUMNコラム
深刻化する中小企業の後継者不足、解決策は?
現在、中小・零細企業では経営者の高齢化が深刻化し、事業承継のタイミングを迎えています。しかし後継者不足により、事業承継を円滑に行えない中小・零細企業が急増していることもまた、大きな社会問題となっています。なぜ、中小・零細企業がかくも後継者不足に陥っているのか、本記事ではその背景を解析し、解決策について解説しましょう。
目次
「後継者不足」が増加した背景と最新動向
日本では長らく「家督制度」が主流であり、「長男が家および事業を継ぐもの」という意識が常識でした。
しかし戦後、財閥解体によって新たな民法が制定され、「家督制度」が廃止されると、少子高齢化もあいまって「子ども世代が事業を引き継がない」という考え方が主流となっていきます。
実際に、帝国データバンクによる「全国・後継者不在企業動向調査(2021)」によれば、約26万6000社のうち約16万社が「後継者がいない」「未定」の状態にあるという結果となり、実に61.5%が後継者不足の状態にあるといえます。
後継者不在率は、2018年以降はやや減少傾向にあり、2021年度の不在率は2011年の調査開始以降の10年間では最も低い数値ではありますが、大半の中小企業が後継者不足である事実は問題視しなければなりません。
経営者の高齢化が深刻化
ここで、経営者の年代に焦点を当ててみましょう。
先の調査によれば、経営者が70代の企業のうち37%が、経営者が80代以上の企業のうち29.4%が後継者不足となっていることが明らかになりました。
経営者が70〜80代と高齢であれば、健康上の問題も懸念され、一刻も早く事業承継の準備を進めるべき局面だといえます。
しかし、後継者を選定することが事業承継の第一歩であり、後継者がいない以上、具体的な準備を進めることができず、足踏みしている企業が多いという実情があります。
さらに、経営者が50代の企業の場合、70.2%が後継者不在と回答していることも、大いに注目すべきでしょう。
経営状態の悪化から、「引き継がない」を選択する企業が急増
業種別でいえば、特に建設業では後継者不在率が高く、67.4%は後継者がいない状態となっています。
注いで高いのがサービス業の66.5%、その次に小売業の63.7%となりますが、最も低い製造業でも53.7%と、高い割合で後継者不在の状態が明らかになりました。
この傾向には、コロナショックも影響しているとみられます。
コロナショックによる経営不振が影響し、さらに先の見通しが立てにくい状況のなかで、次世代に経営状況の厳しい事業を継承させるよりも、自分の代で廃業を決め、後継者をあえて指定しないというケースも散見されます。
その意味では、建設業やサービス業、小売業などは、コロナショックが業績に直撃した業種ともいえます。くわえて、後継者としても経営状態の悪い事業を引き継ごうという気持ちは起こりにくく、廃業を選択する企業も増えています。
後継者不在の解決策は?
このような後継者不在問題に、解決の糸口はあるのでしょうか。
後継者不在の企業には、次の4つの選択肢が残されています。
・事業承継(親族や従業員への承継)
・M&A
・IPO
・廃業
このなかでも、親族や従業員に事業を承継できれば、最もスムーズに自社を存続することができますが、そのためには自社の魅力や価値を高めると同時に、経営状態を改善しておくことが不可欠です。
また、事業承継を成功させるには、後継者が先代経営者の意をしっかりと汲みつつ、自社をさらに発展するだけのビジョンがあるかという点も重要です。
事業承継においては、経済産業省が定めた「事業承継ガイドライン」はひとつのモデルとなるものの、個々の企業によって状況は大きく異なるため、「こうすれば成功できる」という「絶対解」がないというのが実情です。
自社にとって最適な事業承継の道を見極めるためには、事業承継の知識や情報、事業承継を成功させた企業の実例をできるかぎり吸収し、それらを判断材料として自社が進むべき道を見極めることが不可欠です。
その意味では、事業承継に悩む経営者どうしで意見を交換する場も重要といえるでしょう。経営者として、経営上の課題や事業承継の問題など、事業に関する悩みを共有する機会はなかなかないものですが、自分と同じ立ち位置の経営者がどんな課題をどのように考えているか、リアルな声を知ることで、自社の行先が見えてくるかもしれません。
まとめ
後継者不足の要因はさまざま挙げられますが、事業や経営の悩みを経営者がひとりで抱え込んでいるということも、要因のひとつといえます。事業をどんなかたちで引き継いでいくか、「最適解」に至るためには、積極的に承継の情報や知識を、さまざまな「実例」に学ぶことも重要となるのです。
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