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事業譲渡に必要な仕訳とは? 税務処理と注意点を解説!

M&Aや株式譲渡など、事業承継の手法は多岐にわたりますが、そのどれもが適切な会計処理と税務処理を必要とします。ここで重要なのは、「売り手」でも「買い手」でも、その手続きを理解し、自社の資産や事業価値を正確に把握することです。本記事では、中小企業経営者が知っておくべき事業譲渡における「仕訳」と税務処理についてわかりやすく解説します。

事業譲渡における仕訳とは?

事業譲渡とは

事業譲渡とは、一部または全ての事業を他の法人や個人へ移転すること。事業譲渡では、売り出したい特定の事業だけを選べるため、残す事業を絞り込むときにも有効です。後継者不在で悩んでいる、企業を存続させつつ再建したい、不採算部門があるといった悩みを持つ中小企業の選択肢の一つが、事業譲渡といえます。

事業承継と事業譲渡の違い、それぞれのメリット・デメリット比較は、こちらの記事で詳しく解説しています。
「間違える人多数! 「事業承継」と「事業譲渡」の違いとは?」

仕訳とは

本記事のテーマである「仕訳」とは、会計処理の一環であり、会社の資産、負債、資本、収益、費用の増減を記録する方法を指します。事業譲渡の場合、売り手は譲渡資産を除去し、売却益または損失を計算します。一方、買い手は譲渡された事業を新たな資産として計上します。このような手続きを通じて、事業譲渡が適切に会計処理され、企業の財務状況が正確に反映されます。

事業譲渡の税務処理

事業譲渡には、税務上の影響が必ず伴います。売り手は譲渡益に対して所得税や法人税を支払う必要があり、買い手は土地や有価証券などの非課税対象資産を除き、事業譲渡の対象となる資産の取得に対して消費税(10%)を支払う必要があります。

具体的な税務処理は、譲渡の形態(株式譲渡や事業譲渡など)、譲渡資産の種類(不動産や有形固定資産など)、譲渡価格、譲渡前の資産の帳簿価格などによって変わります。いずれの場合でも、税務の専門家に相談することで、事業譲渡の税務処理を適切に行い、税負担を最小限に抑えることが可能です。

事業譲渡で気をつけたい税務上の注意点

続いて、事業譲渡において特に注意すべき税務処理について詳しく解説しましょう。

①のれん

事業譲渡を考えるうえで「のれん」は重要な要素です。「のれん」は企業のブランド力や顧客基盤、技術力、組織風土など、有形資産に反映されない価値を表します。具体的には、「のれん」は以下の計算式で求められます。

のれん代 = 買収価格 - (対象会社の時価評価後純資産×持株比率)

売り手にとって「のれん」は譲渡益の一部として課税されます。譲渡益は所得税や法人税の対象となるため、「のれん」の額によっては大きな税金負担が生じる可能性があります。その一方で、「のれん」の発生は事業価値の正確な評価を示すため、企業の持つ真の価値を顕在化する役割も果たします。

買い手にとって「のれん」は新たな資産として計上されます。しかし、「のれん」は経時的に減少する性質(償却)があり、通常5年~20年の間で均等に償却されます。この「のれん」の償却は、経費として計上できるため、買い手の税負担を減らす効果があります。ただし、「のれん」が過大評価されると、適正な償却が行われない可能性があるため、適切な税務処理が求められます。

②消費税

事業譲渡では、譲渡した課税資産に対して消費税が発生します。事業譲渡における消費税の計算は、売却対象の選択、価格の評価、そして税金計算の適正化という視点から考える必要があります。特にM&Aや会社分割といった大規模な事業譲渡では、税金負担が増えることで譲渡のメリットが損なわれる可能性もあるので注意しましょう。

事業譲渡における消費税については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「事業譲渡の消費税はいくらかかる? 計算方法をわかりやすく解説」

③株式譲渡と事業譲渡でかかる税金が異なる

事業譲渡は企業そのものではなく企業が運営する「事業」を売買するのに対し、株式譲渡は経営者が保有する「株式」を売却し、企業全体の「経営権」を移します。そのため、株式譲渡では新たな経営者になることで社風が変わることもあります。

事業譲渡では事業を譲渡する主体は会社であるため、株主ではなく会社に対して課税関係が発生します。その一方で株式譲渡の場合、株主が獲得した譲渡益に対して課税されます(株主が個人であれば所得税、法人であれば法人税)。

まとめ

事業譲渡は多くの税法や会計基準に関連するため、会計士や税理士、弁護士などの専門家の意見を求めることが非常に重要です。専門家はそれぞれの専門領域からアドバイスを提供し、適切な譲渡手続きのサポートを受けましょう。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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