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事業譲渡の消費税はいくらかかる? 計算方法をわかりやすく解説

「事業を継続したい」と考えている中小企業経営者にとって、事業譲渡は欠かすことができない選択肢の一つです。特にM&A(合併および買収)は経営資源の有効活用をはかるための一助となります。しかし、M&Aに伴う課税資産の取り扱い、のれん代の計算、棚卸資産の評価など、税金に関わる複雑な問題が絡みます。本記事では、事業譲渡に関連する消費税の計算方法、対策についてわかりやすく解説します。

事業譲渡における消費税の基本

事業譲渡において消費税が課税されるかどうかは、取引の形態や譲渡される資産の種類によって異なります。具体的には、譲渡対象が課税資産であるか、非課税資産であるかによって計算方法が変わります。課税資産とは、消費税法上、課税の対象となる資産(土地、有形固定資産、不動産など)を指します(詳細は次項で解説)。

特に、M&Aの中でも一般的な会社分割においては、譲渡資産の一部に課税資産が含まれる場合、その部分に対しては消費税が発生します。また、のれん代や棚卸資産などの無形資産も消費税の課税対象となります。このため、譲渡対象の資産の種類や価格を正確に把握し、適切な税金の計算を行うことが大切です。

また、課税資産に含まれるのれん代の計算は、事業譲渡における消費税の課税対象を判断する上で重要な要素となります。のれん代は、ブランド価値や顧客基盤など、有形資産では評価できない無形の価値のこと。のれん代の評価は事業譲渡全体の価格評価に大きな影響を与え、消費税の計算にも直結します。

こうした理由から、事業譲渡における消費税の計算は、売却対象の選択、価格の評価、そして税金計算の適正化という視点から考える必要があります。特にM&Aや会社分割といった大規模な事業譲渡では、税金負担が増えることで譲渡のメリットが損なわれる可能性もあるので注意しましょう。

事業譲渡における消費税の計算方法

事業譲渡でかかる消費税の計算方法は以下のとおりです。

消費税額=課税資産×消費税率(10%)

計算の手順としては、まず譲渡する事業資産を「課税資産」と「非課税資産」に分けます。そして課税資産も消費税率をかけて、消費税額を算出します。

以下は、課税資産と非課税資産の分類です。

【課税資産】
・土地を除く有形固定資産(建物や機械装置など)
・無形固定資産(特許権やソフトウェアなど)
・棚卸資産(原材料や商品在庫など)
・のれん(ブランド力などの利益を生み出す源泉)

【非課税資産】
・土地
・有価証券(株式や小切手など)
・債権(売掛金や貸付金など)

それでは一例として、以下のような事業譲渡を考えてみましょう。

・売却金額 …… 3億円
・棚卸資産 …… 4,000万円
・建物 …… 5,000万円
・土地 …… 4,000万円
・車両運搬具 …… 2,500万円
・機械 …… 1,500万円
・有価証券 …… 2,000万円
・特許権 …… 3,000万円
・債権 …… 2,500万円
・のれん代 …… 4,000万円

この場合、消費税が課税される資産は以下のとおりです。

棚卸資産、建物、車両運搬具、機械、特許権、のれん代

これら6つを合計すると、課税資産は2億円となります。そして課税資産に対して消費税を乗じます。消費税率が10%の場合、2億円の10%である2,000万円がこの事業譲渡にかかる消費税額となります。

なお、土地、有価証券、債権は非課税資産となるため、これらの譲渡には消費税は発生しません。

事業譲渡における消費税対策

続いて、事業譲渡における消費税の具体的な対策例を解説しましょう。

①「消費税の還付申請」を行う

事業譲渡により消費税が発生した場合でも、一定の条件下で消費税の還付を受けることが可能です。具体的には、譲渡対象の資産が全て課税対象でない場合や、課税事業者が消費税を計算した結果、還付額が発生する場合などが挙げられるでしょう。還付申請を行うことで、消費税の負担を大幅に軽減できるというメリットがあります。

ただし、還付申請には一定の条件が必要であり、また申請の手続きには複雑な作業が伴うため、専門家の協力が必要となる場合もあります。

②会社分割や合併を行う

この戦略は、事業の継続性を保つためにも有効で、経営者や後継者が事業承継をスムーズに進めるための一つの選択肢となります。

・会社分割
会社分割は、ある会社の一部の事業や資産を分離し、新たな会社を設立する方法で、M&Aを含む組織再編行為の1つです。会社分割は不課税取引とされるため、消費税はかかりません。事業承継を進めつつ、消費税の負担を抑えることが可能になります。

・合併
合併は、2つ以上の会社が1つになることで、これによって新たな事業体が生まれます。合併の場合も消費税の課税が免除されます。また、合併は、会社分割と比較して資本関係の変動が少なく、事業承継のスムーズさも実現しやすいこともメリットです。

まとめ

事業譲渡は、企業の成長と継続にとって重要なプロセスであり、その中で消費税の適切な対策は必要不可欠です。ただし、単純に消費税対策として利益を下げるなどすると、事業譲渡がしにくくなったり、売却対価が低くなったりする恐れがあります。適切な専門家の協力を得て、より確実な対策を講じることが大切です。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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