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創業家から追放され2年、星野リゾート代表の「ギリギリ」の復帰/「中小企業の事業承継は、日本経済のカギを握っている」~星野佳路代表インタビュー【後編】

創業家一族の公私混同をきちんと正さないといけない。30年以上前、リゾートホテルを全国展開する星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野代表は、身内の創業家一族に提言したところ、会社から追放された。しかし、その後に父子の対立を越えて会社を承継し、成功をおさめた。「中小企業の事業承継には、低迷する日本経済の成長を左右するポテンシャルがある」と語る星野氏に、当時の経緯や舞台裏、そして事業承継の新しいあり方を聞いた。

父と対立、勝敗はギリギリだった

「辞めさせられた当初は『もう戻ってこない』と思っていました。僕が辞めた後、21人いた株主たちも様々なことを考えたようです。結果的には、社外の同族株主たちの後押しによって復帰することになりました」

星野氏が辞めさせられたことで、同族間に社内の問題が広く知れ渡った。社外の同族株主たちの注目が集まり、星野氏を復帰させようという機運が作られた。追放から2年の月日が流れていた。

復帰も、すんなり進んだわけではない。

「社長職への就任と役員の交代を要求しましたが、賛成してくれたのは50数%と、ギリギリの勝利でした。しかも3代目である父はあちら側(反対)ですからね。採決されたとき、父は立ち上がって『お世話になりました』と言って出ていきました」

本来なら同じ方向性に向かって歩んでいくはずの、父と子のすさまじい対立。ただ、その後、星野氏は「実権は新しい経営陣が握っているとはいえ、長く経営してきた父を離反させても仕方ない」と、1年かけて先代を説得して会長職に就任させ、雪解けにこぎ着けた。

同族企業の事業承継、大切なのは親子間の合意

幼いころから「うちの4代目です」と紹介されてきた星野氏。彼は、これからファミリービジネスを承継する人に向けて、親子間の「合意」が重要だと語る。

「日本のファミリービジネスでは『継いでほしいと思っている』や『継ぎたいと思っている』という話をしないまま、親が歳を重ねていくケースが多すぎるのではないでしょうか。意思を伝え合わなかったために、『親父はもう80歳、子どもの自分は50歳になったけれど、まだ継がせてもらっていない。将来的に僕が継ぐことになるのか、それとも廃業するのか……』と、継ぐ側が不安になってしまうケースがたくさんあります」

親子とはいえ、あうんの呼吸で会社の将来を決めることは難しい。幼いころから「ゆくゆくは継いでもらいたい」と伝え、先代の背中を見せながら、会社の理念やビジョンを折に触れて伝えることが望ましいという。

日本経済成長のカギを握る「中小企業の事業承継」

日本の中小企業の成長は、日本経済の成長に直結する。中小企業の事業承継を支援して、日本経済を盛り立てていきたい――。星野氏はそう考えている。

「日本企業の90%以上はファミリービジネスで、日本企業の利益の大半はファミリービジネスの企業が作っています。これが2倍になるだけでも、日本経済は大きく成長するでしょう。日本にはまだまだ、事業承継に失敗し、廃業を選択せざるを得ない企業も多いのです。そんな企業の事業承継が成功すれば、その地域の経済、ひいては日本経済を支える企業へと成長していく可能性も大いにあります」

日本経済を下支えする中小企業。その多くが倒れてしまうと、日本経済は低迷から脱することは難しいだろう。中小企業経営者が、星野氏の事業承継から学ぶことは多いはずだ。

星野リゾート

1914年、軽井沢に「星野温泉旅館」を創業。1951年、株式会社星野温泉を設立し、1995年に星野リゾートに名称を変更した。5つのサブブランドを中心に国内外でリゾートホテルやスキー場などを手がける。

【この記事の前篇】創業家一族の公私混同、メスを入れたら追放された星野リゾート代表/「ファミリー企業あるある」を乗り越えた事業承継の舞台裏~星野佳路代表インタビュー

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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