COLUMNコラム
事業承継する前に! 「経営者保証」を解除する際の3つのポイント
経営者保証とは、経営者が企業の借入金に対して個人的に保証責任を負うこと。事業承継時に後継者に負担を与えないようにするために解除する必要があります。本記事では、経営者保証の解除に着手するタイミングや解除方法、注意点について解説します。
目次
「経営者保証」のデメリットとは?
経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者が個人的に企業の借入金に対する返済責任を負うこと。経営者保証があることで金融機関は企業の信用リスクを軽減できますが、以下のようなデメリットもあります。
経営者には個人資産を失うリスクがある
企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合、経営者自身が所有する不動産や自動車などの財産を現金化したうえで、企業に代わって返済することを求められます。倒産後の生活が苦しくなるため、経営者にとっては非常に大きなリスクだといえるでしょう。
後継者候補から事業承継を拒否されやすくなる
経営者保証があるため、後継者候補が事業承継を拒否するケースは珍しくありません。中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策について」によると、「後継者候補はいるが、承継を拒否」と回答した企業のうち、なんと59.8%が「個人保証を理由に承継を拒否」しています。
経営者保証によって将来的に多額の債務を負う可能性があることが、後継者確保のボトルネックの1つになっているといえるでしょう。
こうした理由から、事業承継の際には経営者保証を解除することが求められます。
「経営者保証」の解除方法
経営者保証の解除方法については、「経営者保証に関するガイドライン」が示す3つの対応が参考になります。
このガイドラインには、「主たる債務者、保証人(経営者のこと)」が実施するべき対応策として、以下の3つが示されています。それぞれの対応をベースに、具体的な方法を解説します。
1.法人と経営者との関係の明確な区分・分離
2.財務基盤の強化
3.財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
1. 法人と経営者との関係の明確な区分・分離
経営者保証を解除するためには、まず法人と経営者との関係を明確に区分・分離する必要があります。これには大きく2つの手法が挙げられます。
1つ目は、「法人格の利用」です。個人事業主から株式会社や合同会社などの法人格を持つ企業に組織変更することで、経営者と法人の責任を区分・分離できます。これにより、個人資産が法人の負債に巻き込まれるリスクを軽減できます。
2つ目は、「経営者保証の範囲・金額を明確化」です。経営者保証の範囲や金額を明確化し、契約書に盛り込むことで、経営者と法人の関係を明確に区分・分離することができます。
2.財務基盤の強化
財務基盤を強化することで、経営者保証の必要性を減らすことができます。例えば、営業利益や自己資本率の向上、負債の返済計画の策定などが考えられます。
なお、これらは決して簡単に満たせるものではないと思います。具体的な取り組みなどについては、「商工会・商工会議所」「中小企業基盤整備機構の地域本部」「政府系金融機関」などが相談に乗ってくれるので適宜活用するのがよいでしょう。
また、「経営者保証に関するガイドライン」以外にも有効な個人保証対策は「事業承継税制」の利用です。この制度を利用することで、後継者が相続もしくは生前贈与で引き継いだ場合に発生する相続税・贈与税の負担がゼロになるため、事業承継を考えている人は検討すべきといえます。
事業承継税制の詳しい記事はこちらで解説していますので、ぜひご一読ください。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
3.財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
金融機関は、経営の透明性が確保されている企業に対して、経営者保証の解除に前向きになる可能性があります。これには「定期的な財務報告」「内部統制の整備」「監査法人による監査」の3つの手法が挙げられます。
これらの経営者保証に関するガイドラインをベースに、具体的な経営者保証の解除方法に取り組むことで、事業承継をスムーズに進めることができます。金融機関との良好な関係を築き、適切なタイミングで経営者保証の解除を検討しましょう。
まとめ
経営者保証の解除は、事業承継において重要なポイントです。適切なタイミングで解除を検討し、方法や注意点を押さえておくことで、スムーズな事業承継が実現できるでしょう。
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