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「賃上げ」に悩む中小企業、その原資となる価格交渉の実態とは 中小企業庁が4万社を調査

物価上昇、人手不足を背景に賃上げの機運が高まっているが、中小企業ではなかなか目標の前年比5%増に達しないのが実情だ。その原因と言われているのが、納品時に価格転嫁が十分にできていないことだとみられている。中小企業庁は今年6月、2024年3月の「価格交渉月間」における中小企業の取引状況アンケート調査の結果を公表した。

アンケートでは、①発注企業との価格交渉・価格転嫁の実施状況、②労務費についての価格交渉の状況、③正当な理由のない原価低減要請による代金減額の状況などについて、4万6461社が回答した。

結果を中小企業庁は以下のようにまとめている。

1,価格交渉が行われた割合は59.4%。発注企業から交渉の申し入れがあって価格交渉が行われた割合が増加するなど、価格交渉できる雰囲気がさらに醸成されつつある。

2,価格転嫁が実行された率は46.1%。コスト増額分を全額価格転嫁できた企業の割合が増加。しかし、「転嫁できた企業」と「転嫁できない企業」に二極化する兆しもある。

3,価格交渉が行われた企業のうち、約70%が労務費についても価格交渉が実施されたと回答。

4,正当な理由がない原価低減要請などによって価格転嫁できず、逆に減額されたケースが、全体の約1%存在した。このうち下請法違反が疑われる事例もあった。

価格転嫁と価格交渉は、賃上げの原資を確保するだけでなく、企業の収益を改善するポイントのひとつだ。9月は「価格交渉月間」となる。事業承継を進める中小企業も、承継を機に積極的な価格交渉にのぞみ、賃上げを実施していくことが求められる。

取材・文/ジャーナリスト 三浦 彰

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賢者の選択サクセッション編集部

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