COLUMNコラム
一般的な歯ブラシを使えない「化学物質過敏症」の人たちのために 竹の歯ブラシを作り続けるメーカー、「脱プラ」でも人気
一般的なプラスチックの歯ブラシが使えない人たちがいる。プラスチックなどに反応してしまう、化学物質過敏症の人たちだ。歯ブラシメーカー「ファイン」は、こうした人たちのために、化学物質を使わない歯ブラシ「MEGURU(メグル) 竹の歯ブラシ」を作り続けている。当事者にとって無くてはならない品だが、近年はプラスチック削減の一環として多くの消費者に受け入れられており、売上も急増しているという。
目次
化学物質過敏症の当事者から強い要望、開発スタート
「MEGURU 竹の歯ブラシ」の開発は、1998年に遡る。
ごみ問題への関心が高まっていたことや、当時社長だった清水和恵氏の孫がアトピーを患っていたことをきっかけに、化学物質を排除した環境に優しい製品の開発をスタートした。
開発当初は耐熱温度や割れやすさなどのさまざまな問題が発生し、一度は廃盤となった。それでも、化学物質過敏症の当事者たちからの強い要望を受け、再開発が決定。もともと使っていた生分解性樹脂から、より環境に優しい竹とPLA樹脂への変更が行われた。
再開発の結果、現在の「MEGURU 竹の歯ブラシ」が誕生した。
「ブラシ」の素材はライフスタイルに合わせて選べる
「MEGURU 竹の歯ブラシ」の最大の特徴は、化学物質過敏症の当事者が安心して使える点だ。プラスチックを手で触れたりできないほど症状が強い人にとって、必要不可欠な商品となっている。
さらに、ブラシ部分の毛が4種類用意されている。これは、「毛の硬さ」ではなく、ライフスタイル(ヴィーガン、ムスリムなど)によって、素材を選べるのも特徴的だ。
同時に地球環境にも優しく、エコやSDGsに貢献する。
使い心地も高い評価を得ている。一般的に水に弱いとされている竹素材を使用しているが、石油樹脂製品と同様の耐久性を発揮するという。
事業承継後、SDGsの浸透で売上が飛躍
「MEGURU 竹の歯ブラシ」を開発・販売しているファインは、設立者の清水益男氏から妻の和恵氏へ、そして2010年に娘・直子氏に事業承継される形で続いてきた会社だ。
直子氏の社長就任後、2018年頃からSDGsへの意識が高まり、「脱プラ」が広く社会に浸透してきた。それに伴い、「MEGURU 竹の歯ブラシ」は、2019年頃から一気に売上を伸ばした。体にも環境にも優しい「エコ歯ブラシ」の先駆けと言える商品だ。
取材・文/川島愛里
SHARE
記事一覧ページへ戻る